風味と食感のシンフォニーをフォンテーヌブローのラクセルで。

Paris 2024.07.08

1981年にユネスコ世界遺産に登録されたフォンテーヌブロー城の近く、ミシュラン1ツ星のL'Axel(ラクセル)がある。食べる喜びと感動を評価するゴー&ミヨーのガイドではコック帽が3つ。Kunihisa Goto (後藤邦之)シェフがアソシエのヴァネッサ・ブロンドーとともに2012年に開いた、洗練と味わいが待つ美食レストランだ。

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ミシュラン1ツ星のレストランL'Axelはフォンテーヌブロー城の近く。パリのリヨン駅からR線でFontainebleau-Avon駅下車。そこからタクシーを利用するか、バスAérial1に乗り、Saint-Honoréで下車。レストランの左隣にはシェフのイニシャルをつけたパティスリーのL'A Pâtisserie KG、さらにその左には和食レストランFUMIが並ぶ。©️Simon Detraz

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シェフのスペシャリティの1つは見事な火加減の"ウフ・オンセン"。卵は地元の農家Ferme des Galaches からで、季節ごとに異なる味をシェフは提案している。写真はトリュフバージョン。©️Simon Detraz

最近パリではシェフたちが日本の食材をクリエーションに用いるのが流行りを超えて、当たり前のようになっている。フランスで入手しやすくなったこともあるし、フランス人たちの日本文化への憧れの大きさゆえだろうか。もっともメニューに書いてあるSiso、Misoは紫蘇と味噌のことだけど、これらはシゾ、ミゾと発音されがち。日本人には味のイメージが湧きにくくてちょっと残念だけれど、母音に挟まれたアルファベットのSはザジズゼゾと発音するフランス語では仕方ないのだろう。

ラクセルの後藤シェフはかつては日本の食材を使わなかったそうだ。いま、フレンチ・ガストロノミーにこれらを取り入れるのに、25歳の時からフランス料理に取り組んできた日本人シェフの彼ほどの適任者はいないだろう。ブーシェ・アペリティフ、前菜、魚のメイン、肉のメイン、デザートとどのジャンルでも、彼は縦横無尽に和素材と地元の素材を組み合わせて料理をクリエートしている。たとえば、メゾン・モナルクのキャヴィアと豆腐、きゅうりのせん切りにワカメと黒ごまソース、ジラルドの牡蠣NO.3の赤紫蘇のジュレ、ハチドリの折り紙の上に海苔を立体の器にしたフォアグラ、白味噌とからしのソースのリ・ド・ヴォー、リュバーブのデザートに赤シソのグラニテ添え......複数の素材が用いられた1皿ごとの香り、舌触り、味わい、色彩に食べ手の感覚は食事中にどんどんと研ぎ澄まされてゆくよう。もちろんシェフの腕の見せ所は日本の素材の巧みな使い方にとどまらない。素材の選び方、味覚の組み合わせ、パーフェクトな火加減......。それぞれの料理にふさわしい器が選ばれていて、これもまた料理が厨房から食卓に運ばれるのが待ち遠しくなる由縁である。

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キャビア。生のラングスティーヌをブリックで包んで葉巻のように。味と食感を楽しむ。©️Simon Detraz

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低温調理でパーフェクトな火加減の魚料理(写真はリウ・ジョーヌ)。パーリーな輝きに綺麗なグリーンのソースが添えられる。©️Simon Detraz

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ブリー・ドゥ・モーが柔らかなクリーム状で、これがチーズ!!と驚かされる。ブラックオリーブオイル、カダイフなど意外な組み合わせが口の中でとろけあう1皿だ。©️Simon Detraz

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5年前にインテリアをやり直したという店内はコンテポラリーなアート作品が壁を飾るシンプルな空間で、落ち着いた気分で食事ができる。アラカルトでもオーダーできるし、また滅多に行かれない場所なのでシェフの創作料理を存分に味わおう!というのであれば7皿のコースInspiration au Voyage(185ユーロ)を。コースには6種のグラスワインのペアリング(110ユーロ)がセットできる。このコースのラストオーダーはランチタイムは13時まで、ディナーは21時までなので早めの到着を。なお、最近はワインの代わりに料理に合わせるノンアルコール飲料を希望する声に答え、ラクセルではよく冷やしたほうじ茶のKagoshima やラオスのお茶のMeugなどを提案している。ルバーブのスパークリング飲料もおすすめだ。ワインと同じようなボトルからワイングラスに注がれるので、ノンアルコールといってもフレンチ・ガストロノミーの食事時間の雰囲気をこわすこともない。便利な場所にあるとはいえないけれど、足を運んだ甲斐あり!と食後に大満足できるレストランである。

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落ち着いた雰囲気の内装はCID Interior DesignとOdr7 En'ryllが担当した。©️Simon Detraz

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デザートの後の飲み物とともに登場する焼き菓子のミニャルディーズ。photography: Mariko mura

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鳥かご入りの鳥型シュガーも愛らしい。食後の時間がゆったりと流れる。photography: Mariko mura

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シェフの後藤邦之(右)と共同経営者でワインに精通しているヴァネッサ・ブロンドー。©️Simon Detraz

L'Axel
43, rue de France 77300 Fontainebleau
営)12:15~13:30L.O. 19:15~21:00L.O.
休)月、火、水曜ランチ
http://www.laxel-restaurant.com/fr/
@laxel_restaurant

editing: Mariko Omura

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