ブルス・ドゥ・コメルス、見所ばかりの『ありのままの世界』展。

Paris 2024.07.31

世界のアーティスト350人による1万点以上の作品を所蔵するピノー財団。現代アートとしての評価が定まった作品、新進アーティストの作品が含まれ、作品のジャンルは絵画、彫刻、写真、インスタレーション、ビデオ、音声作品、パフォーマンスなど幅広い。2021年春に財団がブルス・ドゥ・コメルスを開館して以来、新しい展覧会が開催されるたびにアートファンはもちろん好奇心で訪問する人も含め、毎回大勢を集めている。

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ブルス・ドゥ・コメルスのロトンドが鏡張りに! 韓国人アーチストのキム・スージャによるインスタレーション「To Breathe - Constellation」。

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キムスージャ。展覧会のプレス発表にて。photography: Mariko Omura

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展覧会のプレリュードとして地上階に展示されているMohammed Sami(モハメド・サミ)の『One Thousand and One Nights』(2022年)。麻のキャンバスに激動の世界のアンビバランスを描いたという286,1×556,9㎝と大きな作品だ。photography: Mariko Omura

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9月2日まで開催中の『The World As It Goes』展は、フランソワ・ピノーが50年をかけて収集した所蔵品の中の1980年代からいまにいたる作品からのセレクションで、展示作品の半分は初公開だという。キュレーションを担当したのはピノー財団の学芸員を務めるジャン=マリ・ガレ。展覧会のタイトルはフランスの哲学者の著書『The World As It Goes』(1748年)から。"ありのままの世の中"というように、世界の混乱と大変動へと目を向けた芸術家たちの現代に対する鋭い認識が読み取れる作品を集めている。所蔵品に精通しているガレが選んだだけあって、『開幕展』同様にフランソワ・ピノーが現代アートに傾ける情熱とそれを人々と分かち合いたいという気持ちが感じられる内容の濃い展覧会である。ダミアン・ハースト、シンディー・シャーマン、マウリツィオ・カテラン、ジェフ・クーンズといった著名作家の作品とこれから名を成すだろう若い世代の作品が混在する展示だ。

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『ありのままの世界』展より。地上階のギャラリー2のテーマは「ヒューマン・コメディ」。Sigmar Polke(シグマー・ポルケ)の『サーカスの人々』(2005年)を背景に、移動を続ける電動車椅子に座った等身大の13名はSUN YUAN & PENG YUの『Old Persons Home』(2007年)。

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ギャラリー3はテーマ「突然このありさま」。Peter Fischli & David Weissの粘土彫刻を76点展示している。

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ギャラリー4はカオスが展開する「破滅を作る」。手前のフェラーリはBertrand Lavier(ベルトラン・ラヴィエ)『Dino』(1993年)。壁はAnne Imhofの油彩『Intitled』(2022年)。

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ギャラリー5『芸術、愛、そして政治』より。有名な『Balloon Dog(Magenta)』(1994−2000年)を始めジェフ・クーンズのほかの作品も展示。photography: Mariko Omura

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ギャラリー5では1990年代のアイロニーにあふれる作品としてGeneral Idea(写真), Pobert Gober, Damien Hirstの作品も展示。photography: Mariko Omura

地上階の中央吹き抜けのロトンドと地下のオーディトリアムは、韓国人アーチストのキムスージャに白紙委任された。「To Breathe-Constellation」と題したロトンドのインスタレーションは床を鏡張りにしたものだ。足元に見えるのは頭上のガラス天井! 空間の把握が乱され、感覚の旅へと誘われる。

展覧会は下から上のフロアへと「ヒューマン・コメディ」、「突然このありさま」、「破滅を作る」、「芸術、愛、そして政治」、「幻想と頓挫」、「世界の沈黙」、「主題のぐらつき」、「過去の亡霊」といったテーマで展開してゆく。テーマごとに複数のアーティストの作品が展示されている。じっくり鑑賞できるよう、たっぷり時間を取って行くのがいいだろう。

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ギャラリー6の「幻想と頓挫」。Wolfgang Tillmansの写真『Concorde L449-19,21,22,23,25,27,28』(199年)の7点のインスタレーション。

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ギャラリー7の『世界の沈黙』より。手前はFranz Westの『Lemurenköpfe(Lemure Heads)』(1992年)、後ろはLuc Tuymans『Eternity』(2021年)。

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ギャラリー7のふたつ目のテーマ『主題のぐらつき』より、展覧会のポスターに用いられているPeter Doig『Pellican(stag)』(2003−04年)。水の世界に漂うような男性の姿が描かれているが、この作品はペリカン殺しという残虐なシーンを目撃した作者がその思い出を描いたものだ。 photography: Mark Woods. ©Peter Doig / ADAGP, Paris, 2024.

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ギャラリー7の3つ目のテーマ「過去の亡霊』より、Sturtevant の『Duchamps 1200 Coal Bags 』(1973ー1992年)。マルセル・デュシャンが1938年にシュールレアリズム展で行なったインスタレーションを、Sturtevantが1973年に再現した。これは作品へのオマージュか横取りか。photography: Mariko Omura

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テーマ「過去の亡霊」より、Cindy Sherman『Untitled #571』(2016年)。1930年代のブルジョワ女性に作者が扮して。Courtesy the artist and Hauser & Wirth.

『Le monde comme il va(The World As It Goes)』展
会期:開催中~2024年9月2日
Bourse de Commerce - Pinault Collection
40, rue du Louvre 75001 Paris
営)11:00~19:00
無休
料)14ユーロ
https://www.pinaultcollection.com/en
@boursedecommerce

editing: Mariko Omura

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