40周年を祝うカルティエ現代美術財団。来年、ルーヴル美術館の向かいにお引越し。
Paris 2024.11.08
現代アートのためのカルティエ現代美術財団が40周年記念を祝い、来年末までにパレ・ロワイヤル広場2番地に展示スペースを移転することを発表した。場所はルーヴル美術館のお向かいで、1855年にグラントテル・デュ・ルーヴルがオープンする際に建築された建物だ。1852年にボン・マルシェの誕生以降、次々とパリ市内にデパートが生まれていき、このホテルもグラン・マガザン・デュ・ルーヴルというデパートに。その後アンティケール・デュ・ルーヴルに変身し、2018年まで複数のアンティーク商がこの中に軒を連ねて商売をしていたのだ。歴史的建造物に指定されている建物で、ここも現在の財団と同様に建築家ジャン・ヌーヴェルが設計を担当し、展示スペースは6500平米と現在の5倍近くとなる。財団の新しい章の始まりである。
カルティエ財団というとラスパイユ大通りの緑の中に建つガラスの建物を思うけれど、ここに引っ越してきたのは1994年のことで、1984年の誕生の地はジュイ・アン・ジョザスというパリの郊外だった。そのきっかけとなったのは、当時のカルティエ インターナショナルのプレジデントで芸術愛好家のアラン=ドミニク・ペランと友人で彫刻家のセザールとのディナーにおける会話だった。アーティストを援助する方法を尋ねられ、セザールが"制作資金と展示場所"と答え、その翌年にカルティエ財団が設立されたのだ。現代アートに捧げる初の企業所有の財団の誕生である。その後、フランスに限らずリュクスなメゾンがカルティエに続くことになるのだが、それは現存芸術家の作品を購入した企業に対する税制面での優遇措置を設けたメセナに関する法律が1987年に制定されたことも大きいだろう。この制定はドミニク=ペランの努力があってのことだ。
財団の移転を発表した40周年を祝う会場で、ペランはカルティエ現代美術財団の設立に際して打ち立てた3大原則がいまもしっかりと守られていると誇らしげに語った。ひとつは主役がアーティストであることで、それは有名無名を問わない。2つ目は絵画、写真、建築など分野を問わず、あらゆるジャンルのクリエイションに捧げる場であること。3つ目はカルティエの商業発展と財団の活動を切り離すというものだ。この3原則に則った40年間、開催した展覧会は300を数える。アーティストのクリエイションに資金を提供し、展覧会の展示作品の一部や全てを購入している財団の所蔵作品は現在4500点近い。
この冒険が続けられる新しいスペースで行われた発表会場は工事の真っ最中だが、建物の周囲では40周年を祝う一環として、創作の喜びをこの間に分かち合ってきたアーティストたちを紹介するインスタレーションを行っている。アニエス・ヴァルダ、ロン・ミュエク、ルー・リード、横尾忠則 、クラウディア・アンデュジャールなど30名のポートレートによって、道ゆく人々は財団の歴史に触れることができるのだ。またアニバーサリーブックとして『Voir venir, Venir voir』も出版された。アーティストの紹介があり、また160以上の展覧会が写真で紹介されていて財団の活動を懐かしく見たり、発見をしたり......1984〜1993年のジュイ・アン・ジョザス時代の展示を知ることも楽しい。財団の過去40年間にさまざまな現代アートに触れることができたように、規模がさらに大きくなることで次に来る40年のアートの旅への期待にかき立てられることになる。
editing: Mariko Omura