大阪にもオープンしたラビス。素晴らしい立地の2ツ星パリ店に行ってみよう。

Paris 2024.11.22

フォーシーズンズホテル大阪の最上階に「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」が10月下旬にオープンした。これはパリ生まれの「L'Abysse(ラビス)」がモンテカルロのオテル・エルミタージュ内店に次いで開いた3軒目である。漢字で"深海"と書くラビスは、ヤニック・アレノが3ツ星レストランのある「Pavillon Ledoyen(パヴィヨン・ルドワイヤン)」の建物の1階に2018年6月に開いた和食レストラン。高級和食ブームに湧くいまのパリで、その先鞭をつけたのがラビスといっていいだろう。日本の食材の美しさとアレノ・シェフのソースや味付けというフランスのサヴォワールフェール、ふたつの食文化の出合いに舌鼓を打つ美食空間。ラビス パリはオープンするやすぐにミシュラン1ツ星を獲得し、開店2年目からいまにいたるまで2ツ星を維持している。

241111labysseparis01.jpg
ヤニック・アレノと富沢克哉。ふたりのシェフ、2国の食文化がラビスで融合。photography: Simon Detraz

海外の2軒はホテルの中の店だけれど、パリの店はプティ・パレの裏手、シャンゼリゼ大通りの緑の木立の中に立つパヴィヨン・ルドワイヤンの中。18世紀の貴族の館を思わせる瀟洒な建築物で、パリ市の歴史的建造物に指定されている。館内のレストラン「Alléno Paris」は3ツ星、ラビスは2ツ星、そしてガストロノミー・カウンターの「Pavyllon」は1ツ星。合計6つの星が輝くパヴィヨン・ルドワイヤンが、"美食の館"と呼ばれるのも当然だろう。パリならではの特別の立地と建物! ラビスはラビスでも、パリでは大阪ともモンテカルロとも異なる体験が待っているのだ。

241111labysseparis02.jpg
シャンゼリゼ大通りから眺めたパヴィヨン・ルドワイヤン。ラビスはこの建物の地上階にある。photography: Mariko Omurra

ラビスは建物の地上階の右手に位置し、窓からの眺めは周囲を囲む緑である。内装のキュレーションを手がけたのは、アレノ・シェフの妻で彫刻家のローレンス・ボネル。アーティスト川俣正による割り箸のインスタレーションが入り口を飾り、カウンターの向かい側の17メートルの白い壁をウィリアム・コギンの彫刻が覆っている。どこか別世界にいるような不思議な気分になる空間で、壁のデコボコした彫刻が深海で珍しい生物が遊んでいるように徐々に見えてくるのは、おいしい料理とお酒に酔ったせいか......。

241111labysseparis03.jpg
アビス パリの魅惑の店内。テーブル席もあるけれど、シェフの手仕事を堪能できるカウンター席がおすすめだ。photography: Simon Detraz
241111labysseparis04.jpg
川俣正の割り箸のインスタレーションとウィリアム・コギンによるウォールアート。photography: Simon Detraz

---fadeinpager---

ラビスのオープンは、アレノシェフが開店から遡ること3年前に日本で鮨職人の岡崎泰也の握ったお鮨を食べたことがきっかけ。岡崎シェフがパリに移ってきてふたりのコラボレーションがラビスで始まったのである。現在、岡崎シェフは2軒目のモンテカルロ店を任され、パリ店は岡崎シェフと鮨の師匠を同じくする富沢克哉を新たにシェフに迎えた。シャリについてお米はササニシキ、3種の酢を混ぜた赤酢の江戸前鮨という開店当時からの基本はそのままに、新しいメニューでパリの和食ファンを喜ばせている。

ラビスならではのフランス料理のサヴォワールフェールと和の食材の出合いのシナジー。たとえば「ハマチのシャルキュトリー」と命名されているのは、魚を塩漬けして、3種の胡椒を調味して......と、ハムやソーセージ作りの製法を適用したひと皿だ。「植物の散策」は季節の野菜、出汁のジュレ、シトロン・キャビアが優しいハーモニーを口中で奏でる。鮨刺身でフランス人に最もおなじみの魚であるマグロはその3つの異なる部分について、3つの異なる味付けをする。脂の少ない赤身には醤油のジェルをのせて味にまろやかさを生み出し、中トロは備長炭でスモークし、蕎麦茶のプラリネで調味する。脂が乗った大トロには、酢をしたエシャロットの軽い酸味で釣り合いをとって......というように。和仏のシナジーはデザートまで続く。シェフパティシエのトマ・ムーランがクリエイトする驚き。「梅と梅酒のかき氷」は凍った状態のものをサービスの際におろし金で削ってお皿に、というミニパフォーマンスが楽しい。見た目もインパクトのある黒ごまがたっぷりと中に詰められた焼き菓子ブリスレが食事を締めくくる。

241111labysseparis05.jpg
驚きと感動の旅はひと皿目から始まる。魚のシャルキュトリーとアンチョビバター。photography: Simon Detraz
241111labysseparis06.jpg
江戸の庭にインスパイアされたという美しい「植物の散策」。出汁のジュレが優しく野菜の味を引き立てる。photography: Simon Detraz
241111labysseparis07_08.png
鮨職人の技がカットに生きたマグロの異なる3部位に3種の調味。アレノシェフの感性がグラフィックなビジュアルにも光るひと皿。添えられた酢飯とともに。photography: Simon Detraz
241111labysseparis09.jpg
アラカルトから「オシエトラ・キャビア20g、ほうれん草のスモーク」photography: Simon Detraz
241111labysseparis10.png
デザートには梅やゴマなど日本の味が。右はチョコレート・ブリスレ、黒ゴマのペースト。photography: Simon Detraz

ランチタイムは西方寺(115ユーロ)と小石川後楽園おまかせ(270ユーロ)、ディナーは縁(210ユーロ)とおまかせ(340ユーロ)と、どちらも2種のセレクション。アラカルトで大トロの握り(30ユーロ)や握り(1貫12ユーロ~)を追加できる。パリならではの高級和食の感動をパヴィヨン・ルドワイヤンで味わって。

L'Abysse Paris
Pavillon Ledoyen Carrée des Champs -Elysées
8, avenue Dutuit 75008 Paris
営)12:00~14:00 19:00~21:30
休)土、日
http://www.yannick-alleno.com/

editing: Mariko Omura

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

Business with Attitude
airB
言葉の宝石箱
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories