デュカス バカラ、ミディ‐ミニュイでグラスの美とカクテルに酔う。
Paris 2024.12.14
この秋、フランスのアールドゥヴィーヴルを巡る大きな話題のひとつは、"歓びに捧げる場所"を謳い文句に掲げるデュカス バカラの誕生である。2003年に16区のこの場に生まれたメゾン バカラがリニューアルにより大きく変身。アラン・デュカスとのパートナーシップによる新たな冒険が始まったのだ。
「クリエイティブな天才で、先見の名を持ち、誰もが認めるフランス美食の大使であるアラン・デュカスとともに、パリ16区のメゾン バカラを再び蘇らせることは、大きな歓びです。私たちはともに未来に目を向け、お客様を驚かせ、芸術と芸術性にまつわるユニークな体験を提供するために、新たなインスピレーションとイノベーションを追求していきます」とこの画期的なパートナーシップについてバカラCEOのマギー・エンリケスが語っている。
1階の階段のふもと、かつて巨大な椅子が置かれていたところには、マルセル・ワンダースによる、これまた巨大なクリスタルの花器が! その先に配置されているのは、フランス最優秀職人賞を受賞したステンドグラスのアーティストであるピエール・タタンによる「光の礼拝堂」。カラフルなガラスが輝きを放っている。1階のブティックはマニュファクチュールにオマージュを捧げる空間演出により新装された。この空間で、バカラのアイコニックな品や新作をショッピング!
2階にはガストロノミーレストランのアラン・デュカス バカラが生まれた。バカラのクリスタルのうつわでサービスされる料理もあり、ほかではできない美食体験が味わえる。このフロアでより気軽に活用できるのは、バーの「ミディ‐ミニュイ」だろう。その名前が示すように、12時から24時までノンストップ営業。その間にパティスリーとともにティータイムが楽しめるだけではなく、ミクソロジストのマルゴー・ルカルパンティエによる6種のカクテルと2種のモクテルで素晴らしい時間が過ごせる場所なのだ。バカラカラーの赤を生かしたスペースで、天井から下がるシャンデリアの眺めもうれしいけれど、このミディ・ミニュイではカクテルそれぞれがバカラの異なるグラスで登場することに興奮させられる。アルクールをはじめ、バカラのグラスにマルゴーはカクテルのクリエイションのインスピレーションを得たそうだ。「JMF ネグローニ」には日本の酒、「ロレーヌ」には日本のウイスキーがミックスされていて、興味深い味の発見もできそう。アラン・デュカスは料理人である。彼のアイスクリームやビスキュイに"調理された"素材が加えられているように、ミディ‐ミニュイでもローストされた素材やウマミをマルゴーはカクテルにミックス。彼女はフランスの新世代ミクソロジストのひとりだ。
なおバー後方の一段上にある八角形のスペースにはテイスティングセラーが隠されている。ここはデュカス・グループのソムリエであるベルナール・ヌヴーが厳選したワインのための場所。画家ジェラール・ガルーストによるクリスタル製造に不可欠な4つのエレメント、水、土、空気、火を描いた絵画『錬金術』がパワフルに迫ってくる空間である。
このデュカス バカラの建物は、1892年に裕福なベルギーの銀行家ビショフスハイムが建築家のポール=エルネスト・サンソンに建てさせたものである。1932年、その孫娘マリー=ロールのシャルル・ドゥ・ノワイユ子爵との結婚に際し、新婚夫妻に結婚祝いとして祖母からこの個人邸宅が贈られたのだ。前衛芸術のコレクターとして有名なふたりがメセナ人生を送ったのは、この家が舞台である。ルイス・ブニュエルとダリが共同制作した『アンダルシアの犬』に夫妻は制作費を出し、その試写会をこの邸宅で開催。またさまざまなテーマの舞踏会をボールルームで催した。バカラのシャンデリアが壁のボワズリーを美しく照らすボールルームはこれまでは一般公開されていなかったのだが、バカラとアラン・デュカスはここで毎月一度アーティストを招待して、コンサートやカンファレンス、演劇など文化的プログラムを開催し、またスペースのレンタルも行う。たくさんの新しい体験が待つデュカス バカラ。次のパリ旅行、行くべきアドレスリストのひとつに加えておこう。
Ducasse Baccarat
11, place des Etats-Unis 75116 Paris
ブティック
営)11:00〜19:00
休)日
https://www.baccarat.com/ja
editing: Mariko Omura