宿泊、食事、ドリンク。3つの愉しみを蘇ったル・グランド・ホテル・ケエレで。

Paris 2025.02.13

ラスパイユ大通りとサンジェルマン大通りが交差する近くで、バック通りやグルネル通りなどなじみの名前の通りもすぐそば。地下鉄駅Rue de Bacから徒歩1分の場所ながら、とても控えめな存在だし、左岸といったらプチホテルがほとんどのせいだろうか。なぜか見過ごしがちとなるのが123室ある4ツ星の「Le Grand Hôtel Cayré (ル・グランド・ホテル・ケエレ)」である。パリの新しいホテルとして覚えておいて損のないアドレスだ。

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ラスパイユ大通りで左右の建物にしっくりと溶け込んでいる外観なので、ホテルと気がつきにくいLe Grand Hôtel de Cayré(正しい発音だとル・グラントテル・ドゥ・ケエレ)。©DEPASQUALEMAFFINI
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海外からの宿泊者が多いホテルらしく、英語が堪能なスタッフが待つレセプション。©DEPASQUALEMAFFINI

ホテル・ケエレが生まれたのは1920年。昨年秋、創業者の名前を残しつつ、新しくオーナーとなったホテルグループの手によってリニューアルオープンした。まずはホテル内に新たに設けられたレストラン「Annette(アネット)」から紹介しよう。レストランはオープン時にあったもののホテルの持ち主が変わった時に消えてしまったのだが、今回、2年がかりの工事によって1階に広々と快適でおしゃれなレストランが誕生したのだ。

レストラン「アネット」。左岸の厳選スイーツのティータイムも。

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90席あるアネット。どこかノスタルジックな雰囲気が漂うインテリアに誘われる。©DEPASQUALEMAFFINI
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レストランとレセプションを繋ぐ場所にバーカウンター席がある。©DEPASQUALEMAFFINI

宿泊客以外にも朝から開かれているアネット。この名前は大戦を逃れてパリにやってきたドイツ人の作家アネット・コルブから。彼女は17年このホテルに暮らし、ここで多数の著作を残したのだ。文学者が多く集ったサンジェルマン地区のホテルらしく、レストランに彼女の名をつけてオマージュを捧げている。シェフは以前はアラン・デュカスのレストランでエグゼクティブ・シェフを務めていたというブルーノ・ブランジェア。おもしろいことに彼は2020年度の"ウフ・アン・ムーレット"のチャンピオンなのだという。もちろんレストランで味わってみることができる。赤ワインソースのポーチドエッグで前菜としてはボリュームがあるので、試す時はお腹を空かせて行くように。

これも含め、ランチとディナーのメニューは少し違いがあるものの、アネットが提案するのはパリのブラッスリーの典型的な料理。ディナーではフランスの日曜のランチの代表的メニューであるプーレ・ロティ(2人用)もメニューに見つかる。レストランのインスタグラムを見れば、シンプルなクロックムッシュと赤ワインの昼食へと誘われて......。カジュアルに愛用したいレストランである。なお、小ぶりのキッチンの前にはちょっとしたスペースがあり、その場を占めるのは10名のシェフズ・ターブルの特別席だ。

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アラカルトあるいはセットで朝食を。©LEOKHAHARFAN
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ランチタイムのブラックトリュフ・クロックムッシュ(18ユーロ)。©LEOKHAHARFAN
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左:ランチでもディナーでも、フランスでもっともおいしいと評判のGillardeau(ジラルド―)の牡蠣(no.3)6個を(26ユーロ)。右:子どもが大好きなフランスの家庭料理のコキエットが、ブラックトリュフ、コンテチーズ、ジャンボン・ドゥ・パリで洒落た大人用のひと皿に(24ユーロ)。©LEOKHAHARFAN
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キッチン前のスペースに設けられたシェフズ・ターブルで特別なディナータイムを!©DEPASQUALEMAFFINI

チーズはご近所の有名フロマジェであるメゾン・バルテレミーからのセレクション。そしてデザート5種中3つはパリの逸品が揃えられている。ユーゴ&ヴィクトールで人気のチョコレートエクレア、Le Bac à Glacesのアイスクリームとシャーベット、そして元ル・ショコラ・アラン・デュカスのニコラ・ベルジェによるチョコレートムースだ。アネットはブラッスリーなのでノンストップ営業。したがって半端な時間でも何かしら食事ができ、またティータイムにも利用できるのでデザートを目指して行くのもいいだろう。アイロンのきいた白いクロスがかかったテーブルが並び、気持ちよく迎えてくれるレストランだ。

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左:レストランの壁にはポスターや額が飾られ、文化の薫りを漂わせている。 右:デザートから。ご近所のアイスクリーム専門店Le Bac à Glacesのアイスクリーム。photography: Mariko Omura

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サンジェルマンの宵、秘密のバーでカクテルに酔う

アネットにもバーカウンターがあるけれど、ホテルにはもうひとつ「L'Officine  Bac(ロフィシンヌ・バック)」というスピークイージー風の秘密めいたバーが。レセプション裏手の厚手のカーテンの後ろで、ゴールド箔があしらわれた深緑の壁紙、真鍮のランプの内装。ここはカウンターのハイスツールで一杯!というのとは違って、ゆったりとした時間を過ごせるこぢんまりとしたスペースだ。Silencioやレ・バンといったパリの夜遊び族が愛する伝説的バーでシェーカーを振るっていたオスカー・ブラックストーンが、植物とホテルの歴史が始まった1920年代にインスパイアされたカクテルをこのバーのためにクリエイト。軽食メニューは、レストラン同様にバーでも地元の美味が集められている。

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こぢんまりしたスピークイージー風のL'Officine Bar。カクテルは18ユーロ〜、モクテルは12ユーロ〜。©CaroleCheung

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左岸らしい洗練が漂う客室に眠る

ここはホテルである。バーあるいはレストランでクロード・ルルーシュ監督の『男と女』の主人公たちの有名なシーンを真似てみるのもおもしろいのでは? サービスの人に追加注文をするのだ。「部屋を1つ!」と。

6フロアに2つのスイートを含む123室の客室があり、エッフェル塔の見える部屋やテラスを備えた部屋などタイプさまざま。第一次世界大戦前、いまホテルがある場所には作家アンドレ・ジッドが暮らし、ジェイムズ・ジョイスが話題作となる『ユリシーズ』を書き上げたのはその向かい側だそうだ。近くに出版社がいくつかあることから、彼らのほかにも多くの作家が集まった界隈である。そんなことから、客室やホテル内のあちこちに書籍が置かれている。パブリックスペースも含めホテルの内装を託されたのは英国の室内建築家事務所ミカエリス・ボイドで、ホテルが誕生した1920年代にオマージュを捧げるインテリアを作り上げた。

クオリティの高い素材を用いて全体的に控えめな色彩でまとめた客室には寛ぎが感じられ、心地よい睡眠時間をもたらしてくれそうだ。バスルームはクラシックかつ機能的。アメニティがルラボというのも素敵なセレクションでは?

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落ち着いた色彩でまとめられた客室。250ユーロ〜。©DEPASQUALEMAFFINI
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インテリアを任されたミカエリス・ボイド建築事務所は、客室のいたるところに木の素材を軽やかに多用。©DEPASQUALEMAFFINI

最上階には"コレクターのアパート"と呼ばれる部屋がある。これはアート&デザインのアドバイザーであるカンが収集家のアパルトマンをイメージしてキュレーションした部屋で、室内のオブジェ、家具などのどれもが購入可能だという。何かが売れたら、また彼が別の品をもとにインテリアを考え直して、という仕組みというのがおもしろい。

ホテルの営業開始は1920年だけれど、建物はアールヌーヴォー、アールデコの建築家アシール・シャンピィによる設計で1915年に建てられた。地上階から7エム・エタージュまで続く見事な螺旋階段は当時の名残である。その壁はデザイナー・アーティストのマチアス・キスが施した淡いブルーのグラデーションのペイントがとてもきれい。エレベーターに乗らず階段を上りたくなる。地下にはアメリカ人客が多いホテルらしく、最新の機械を備えたフィットネスルームが設けられている。そしてパリのホテルには珍しいことに、リフッレッシュルームがあるのだ。シャワーが装備され、チェックイン時間前に到着した客はここで長旅の疲れをとることができる。サンジェルマン・デ・プレらしい芸術、文学、文化の薫りの中に現代的コンフォートを取り入れた素敵な左岸のグランドホテルである。

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1920年代のグランドホテルらしい見事な階段が7エム・エタージュまで続く。photography: (左)©DEPASSQUALE MAFFINI、(右)©JamesMcDonald
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地下1階のフィットネスルーム(左)とリフレッシュルーム(右)。photography: (左)Mariko Omura

Le Grand Hôtel Cayré
4, boulevard Raspail
75007 Paris
www.legrandhotelcayre.com
@legrandhotelcayre
@annetterestaurant

editing: Mariko Omura

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