2025年、パリのメトロの乗り方が変わった。観光客にも優しい新方式をチェック!
Paris 2025.04.24
パリから郊外線でヴェルサイユの駅に着くと、以前はメトロのチケットを手に自動改札機を抜けられなくなっている観光客の姿を見かけることが多かった。パリ首都圏の地下鉄と郊外線の路線図は1から6までのゾーンに分かれており、従来のメトロのチケットTicket t+(2.15ユーロ)で行き来できるのはメトロ圏内とゾーン1内の郊外線だけ。メトロのチケットで遠くまで乗り越してしまうと自動改札機を出られない。乗り継ぎ精算の機械も窓口もない駅で観光客が困り果てる姿は日常茶飯事だった。郊外の乗車料金の仕組みは複雑で値段も割高、観光客の多い乗換駅の自動券売機は長蛇の列で、批判の対象となっていた。
そんな首都圏の公共交通機関の料金体系が、今年1月1日から一変した。イル=ド=フランス地域圏知事のヴァレリー・ペクレスが掲げたのは、ゾーン制を廃止して均一料金にすること。メトロ、郊外線RER、国鉄の郊外線トランシリアン(TER)は首都圏内なら2.50ユーロ均一、バスとトラムは2ユーロ。これまで流通していた紙の切符は姿を消しつつあり、メトロの駅で購入するのはほぼ不可能になった。初めて切符を購入する場合にはNavigo Easyカード(2ユーロ)を購入してチャージするシステムで、首都圏の住民以外には親切とはいえない。旅行者には、スマートフォンのアプリでチャージするのがおすすめかもしれない。
アプリを奨励するポスターが駅構内に登場。
左:チャージ用カードも自動券売機で購入できる。右:チャージ専用のNavigo Easyカード2ユーロ。
アプリを活用することでスマホ本体にも、Navigoカードにもチャージが可能。オルリーとシャルル・ド・ゴールの両空港への運賃だけは片道13ユーロの特別料金。Île-de-France Mobilités またはBonjour RATPで。
たとえばディズニーランドのあるマルヌ=ラ=ヴァレに行くには、片道7.60ユーロだった運賃が3分の1になる計算。運賃が大幅に安くなる郊外組にはグッドニュースだ。一方でパリジャンにとっては一気に0.35ユーロの大きな引き上げ。もともと定期券も割安感がないうえに、10枚のカルネ(回数券)の割引もなくなった。度重なるストライキ、故障による遅れ、そして路線延長が引き起こすさらなる混雑で、パリのシンボルともいえるメトロの人気は下り坂。コロナ禍以来、パリジャンの間では自転車組が増えているが、この値上げでメトロ離れにはさらに拍車がかかりそうだ。
ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ駅。フィガロジャポン25年5月号の116ページで紹介している郊外の旅もパリから2.50ユーロの均一料金に。
郊外住民に優しくパリジャンに厳しい、「郊外住民の運賃をパリジャンに払わせている」という声さえ聞こえてくる運賃改定。車でパリに来る郊外の住民を電車利用に誘うことができるだろうか。
●1ユーロ=約156円(2025年3月現在)
*「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)