パリ近郊、ジャン・アルプと妻ゾフィー・トイバーのメゾン・アトリエを訪問してみよう。

Paris 2025.09.04

3月1日から6月1日まで東京のアーティゾン美術館で「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展が開催された。これはテキスタイルデザイナーのゾフィー・トイバー=アルプ(1889-1943)と彫刻家ジャン・アルプ(1886-1966)という、互いに影響を与えあった20世紀の芸術家カップルの創作の軌跡にフォーカスを置いた展覧会だった。

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左:Jean Arp(ジャン・アルプ)。1930年、クラマールの自宅にてゾフィーが撮影。Photo Sophie Taeuber-Arp. Droits fondation arp 右:Sophie Taeuber-Arp(ゾフィー・トイバー=アルプ)。1938年。D.R.

この展覧会によって彼らの仕事に興味を持った人々が次のパリ滞在で訪れるべき場所がある。1922年に結婚した二人が仕事をし、そして生活していた建物だ。パリ郊外のクラマールにゾフィーが建築をしたもので、二人は1929年からこのメゾン・アトリエを活動本拠地としたのだ。1978年に、ジャンの二人目の妻だったMarguerite Hagenbachがフォンダシオン・ジャン・アルプを設立し、この建物は2004年から一般公開されるようになった。

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左:11月23日まで開催の展覧会『arp mythique arp antique』のポスター。 右:パリ郊外、クラマールに立つジャン・アルプとゾフィー・トイバー=アルプが暮らし、クリエイションに勤しんだ建物。photography: Mariko Omura


ゾフィーとジャンの暮らしと制作の場を見学。それに加えて、11月23日までは『arp mythique arp antique(神話のアルプ、古代のアルプ)』展を鑑賞できる。1952年に出した『内なる言語』の中で、「神話に根ざさず、宇宙の深淵にも本質にも関与しない作品は亡霊に過ぎない」と語ったアルプ。この展覧会は神話と古代文明が彼に与えた影響にフォーカスを置いていて、建物の2階と3階で彫刻、絵画、写真など約50点の作品を展示している。

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2階、''神話のアルプ''会場。photography: Mariko Omura

神話の中でもとりわけギリシャ神話の影響が見られる彼の作品。"アルプの神殿"と呼ばれる最初の会場は、ギリシャの女神や偶像、ミューズたちが古代ギリシャの偉大な哲学者たちと交わる神殿をイメージしている。これら人物の間の明らかなつながりである自然、誕生、変身は、アルプの芸術的制作において繰り返し登場するテーマだ。ふたつ目の会場は古代モチーフの現代的ビジョンと題されている。トルソ、アンフォラといった古代のフォルムに対するアルプのビジョンにフォーカスを置いた展示で、はるか彼方の時代に彼が向けた現代の視点を見ることができる。

なお古代ギリシャだけでなく他の文明や時代にもアルプは影響を受けている。エジプト神話であったり、イースターの像だったり......。こうした作品も少しだが展示されている。

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3階の''古代のアルプ''会場。壁には1964年の油彩『Horus』が。

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ジャン・アルプによる人形の習作も展示されている。photography: J.P. Pichon. Droits fondation arp

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ブロンズの『La Sirène(人魚)』 (1942年)なども展示。photography: Mariko Omura

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建物の最上階の一角、ゾフィーが1929年にデザインしたデスクと1927年にデザインした椅子を常設。photography: Mariko Omura

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2階と3階で展開されている展覧会はジャン・アルプの作品についてで、ゾフィーの仕事がフォーカスされているのは地上階だ。財団が所有するゾフィーによるグアッシュL'Aubetteの作品のひとつが、最近ウールでラグに再現された。これはクリストファー・ファー・ロンドンとのコラボレーションによるものだ。また、彼女がこの家のためにデザインした燭台のIC Designによるリプロ、そしてゾフィーのデッサンと刺繍から生まれたクロスステッチ・キットなどもこのフロアで発見できる。敷地内の別館の1階にブティックがあるので、どんな品が入手できるかチェックしてみるといいだろう。

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地上階。壁に「L'Aubette」が。photography: Mariko Omura

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左:後方はこの家のためにゾフィーがデザインしたキャンドルスタンドのリプロ。手前の展示はセリーヌのアルプ・プロジェクトのペンダント(左:ヴェルメイユ/5000ユーロ、右:シルヴァー/4500ユーロ)。エディー・スリマンが2024年のアーティスト・ジュエリー・プログラムに選んだのはアルプの「プトレマイオスII」(1958年)。photography: Mariko Omura 右:Unwind Studioによるクロスステッチ・キット3種。Photo & droits: Unwind Studio

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ゾフィーのグアッシュをラグに。Christopher Farr.による習作。photography: S.Tardy .Droits fondation arp.

なお敷地内の庭ではジャン・アルプによるブロンズの彫刻を展示。また石膏の工房もあるので、ここまでやってくれば展覧会だけでなく十分にジャン・アルプとゾフィーの世界を堪能できるのだ。

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アルプの作品を展示する庭園と工房。 photography: Mariko Omura

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庭園の工房内。photography: Mariko OMURA

財団が所在するクラマールというのは馴染みのない場所だろう。パリからは高速地下鉄RER C線を利用する。下車駅はMeudon Val-Fleury。そこから財団までは徒歩で5~10分。途中には何人かの現代建築家による建物が並ぶので、建築に興味ある人は財団に着くまで目がキョロキョロしてしまうに違いない。

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左:MeudonVal Fleury駅。 右:アルプ財団にゆく途中、建築探索を。photography: Mariko Omura

Fondation Arp
21, rue des Châtaigniers
92140 Clamart
開)14:30~18:00
※ガイドは14:30、16:00(金)、14:30、15:30、16:30(土、日)
休)展覧会開催期間外、開催中は月〜木
料)10ユーロ
https://www.fondationarp.org/
@fondationarp

Google Map

editing: Mariko Omura

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