360度のライブパフォーマンス『バベル』。夜、ボン・マルシェ が劇場に変貌する。
Paris 2025.09.10
新学期が始まった9月のパリ。デパートのボン・マルシェの地上階、ビューティフロアで吹き抜けの天井を見上げると不思議な物体が目に入る。毎週、木・金・土曜の夜21時からこのスペースの売り場がライブパフォーマンス『Babel(バベル)』の劇場に変身し、この物体はその公演のための舞台装置なのだ。
左:一階のビューティーフロアーの中央が夜、ステージに変身する。 右:館内のポスター。photography: Mariko Omura
振付家ムラード・メルズーキが創作した作品はバベルの塔の神話の再解釈で、ステージに立つのはダンスとサーカスの世界から集められた10名のパフォーマーたち。彼らが創作した作品はバベルの塔の神話の再解釈である。吹き抜けに浮かぶ物体から観客が囲む円形のステージに続く螺旋階段が塔を成し、舞台上の垂直・水平の空間で繰り広げられるパフォーマンスは驚きの連続が続く1時間だ。吹き抜けを活用した公演なので観客席は地上階だけでなく二階、三階にも設けられている。いずれにしても至近距離で観ることができ、タイミングが緻密に計算された振り付け、パフォーマーたちのエネルギー、身体能力に圧倒されずにはいられない。
塔というと上に向かってゆく建築物だけれど、このパフォーマンスのセットの塔は下に向かい、しっかりと根を下ろす、という発想だ。©Le Bon Marche Rive Gauche
ボン・マルシェが商業空間から劇場空間へと変貌しショーを開催すると言う大胆な試みは、2022年の演劇『Au Bonheur des Dames』が最初だった。デパートゆえに照明、大道具など劇場が必要とするものが何も備えられてない場所のためという制約のある創作は、演出家や振付家にとっては刺激的な挑戦となる。その分準備には通常以上の時間を要するそうで、2026年にここで開催されるプログラムはすでに決定され、いまや2027年のプログラムの準備に取り掛かっているそうだ。日中は買い物を楽しみ、夜は文化活動に力を入れているボン・マルシェに新しい体験を求めて鑑賞に来てみては?
『バベル』と振付けたムラード・メルズーキ。©Le Bon Marche Rive Gauche
開催中~12月31日(木・金・土 21:00~)
Le Bon Marché Rive Gauche
24, rue de Sèvres
75007 Paris
料)75ユーロ、50ユーロ
要予約
http://lebonmarche.com
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editing: Mariko Omura