オランジュリー美術館、書店カフェで睡蓮色のティータイム。
Paris 2025.11.12
チュイルリー公園内のオランジュリー美術館は、毎日大勢の来場者を迎えている。お目当てはクロード・モネの連作『睡蓮』。作品を展示する地上階の丸い2つの睡蓮の間は、瞑想の場としてモネが構想した空間である。

オランジュリー美術館、入館するや大勢が目指すのが地上階奥に広がるモネの睡蓮の部屋だ。鑑賞者は静寂を守るように。photography: Mariko Omura
ここでゆっくりと静かな時間を過ごした後、地下2階の企画展そして常設展へと。美術館の所蔵作品はとても豊かである。ルノワール、セザンヌ、ピカソ、ドラン、ルソー、モディリアーニ......19世紀末から20世紀初頭の作品がここに集まっている。それらは画商でアート・コレクターだったポール・ギヨーム(1891~1934年)が収集した作品であり、また若くして亡くなった彼の死後、私邸を美術館にしたいという彼の意思を継いだ妻ドメニカが再婚相手の建築家ジャン・ヴァルテルとともにコレクションを充実させ、1959年から1963年に国家に寄贈したことで、オランジュリー美術館の所蔵品となったのである(ちなみにポール・ギヨームによる初期の収集品であるアフリカの彫刻は、ケ・ブランリー美術館が所蔵)。オラジュリー美術館の約20年前の改装によって、148点からなるジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム・コレクションのための広いスペースが地下に設けられた。

常設展の展示より。左:アメデオ・モディリアーニ作『新しき水先案内人ポール・ギヨームの肖像』(1915年) 右:アンドレ・ドラン作『大きな帽子を被るポール・ギヨーム夫人の肖像』(1928~1929年)
148点からなるジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム・コレクション。なぜ国に寄贈されることになったのか? いまからちょうど2年前、館内の書店にはギヨームの妻ドメニカの写真を表紙にした本が並んでいた。1冊は『ドメニカ、悪魔』、2冊目は小説『ドメニカ』。ドメニカが養子にした息子をドメニカの指示で殺害しようとした彼女の弟の投獄、そして彼女自身の関与を見逃す代わりに、時の文化大臣アンドレ・マルローがコレクションを国家に寄贈させたといったエピソードが語られている。億万長者ドメニカの華やかな人生の裏には、犯罪の匂いが漂ういくつかの事件もあり、"黒い未亡人"とも呼ばれ......と。コレクションが素晴らしいだけに、世間はこのスキャンダルについ注目してしまうのだろう。

ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム・コレクションの展示より。左:アンドレ・ドラン作『Le beau modèle』(1923年) 右:アンリ・マティス作『Le boudoir』(1921年)

会場で思わず見入ってしまうのは、写真から再構築されたポール・ギヨーム邸の1930年ごろの彼のオフィスとダイニングルームのミニチュアだ。photograrphy: Mariko Omura
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さて、本日の本題へ。美術館の地下1階にある書店内に、この秋からカフェ・スペースが設けられた。営業時間中、カフェや軽食に利用できる。いまの季節の飲み物はLatte Nymphéas(ラテ・ナンフェア)だ。ナンフェアとあるように、モネの睡蓮からインスパイアされたヴァニラ風味でヤマノイモの紫色が綺麗なラテである。ナンフェアについていえば、モネの絵画の一部のようなブルーが綺麗な3本セットのフィナンシェ"ナンフェア"も、このカフェだけのオリジナルだ。美術館訪問の合間や最後に、ナンフェア・ティータイムでモネの睡蓮をとことん味わうのもひとつの思い出になるだろう。

書店カフェ。座り心地の良いベンチ席のカバーも睡蓮色! photography: ©Philippe Vaurès Santamaria

左:フィナンシェ''ナンフェア''(7ユーロ)とラテ・ナンフェア(6.50ユーロ)。 右:ホットドリンクとチョコレート・ブリオッシュで憩いのひと時。photography: ©Philippe Vaurès Santamaria
また美術館内のカフェというのは、ひとり旅の時の食事には便利な存在。スモークサーモン・クロワッサン・サンド、キッシュ、サラダ、ブリオッシュのクロックムッシュなど軽食のセレクションも豊富に揃えられている。フレッシュオレンジ・ジュース、ホットドリンク(ラテを除く)、ヴィエノワズリーの3点による朝食セット(9ユーロ)も、朝一番に美術館に飛び込んだ時の強い味方では?

左:書店で購入した本やカタログとともに、のんびりと朝食を。 右:ランチ、ブランチにも......。チュイルリー宮殿のオレンジの温室だった建物が美術館となったことから、オレンジベースのオリジナル・ドリンクが3種。ランチセットは16ユーロ。photography: ©Philippe Vaurès Santamaria

書店内。クロード・モネ関連の書物やグッズが豊富だ。企画展にちなんだグッズも販売されている。photography: ©Philippe Vaurès Santamaria
Musée de l'Orangerie
Jardin des Tuileries
75001 Paris
営)9:30~17:45、9:30~20:45(企画展開催中の金曜日)
休)火
https://boutique.musee-orangerie.fr/en/
@museeorangerie.cafelibrairie
★Google Map
editing: Mariko Omura







