ルーベのラ・ピシーヌ、フランス北の町にアール・デコを訪れて。

Paris 2025.12.16

パリの北駅からTGVで約1時間、Lille Flandres駅へ。そこから電車でRoubaix駅、あるいは地下鉄2号線でGare Jean Lebas駅へ。徒歩7分で美術館のLa Piscine Roubaix(ラ・ピシーヌ・ルーベ)に到着する。ベルギーの国境の近くなので、パリっ子たちもこれは遠い場所にあると思ってる人もいるれど、実のところ観光者にも一般交通手段だけで行けてアクセスがしやすい。ラ・ピシーヌとはその名の通り、浴場も備えられたかつての市民プールだった建物。1927年から1932年にかけて建築された、見事なアール・デコ様式の建築物だ。1985年にクローズされ、2001年に美術館としてオープンした。プールがあった部分の室内建築が託されたのはオルセー美術館の1979年の改装を手がけたジャン=ポール・フィリポン。それゆえ、プールの左右に並ぶ彫像が並ぶ光景に、ふとオルセー美術館を思ってしまうのも不思議ではないのだ。

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表通りからも目に入る、La Piscine Roubaix(ラ・ピシーヌ・ルーベ)の建物。photography: Mariko Omura

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かつて市民プールだったという歴史を生かしたスペース。photography: Mariko Omura

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1913年に制作されたアレクサンドル・サンディエによるセーブル焼の陶製のドアポーチが展示されている。photography: Mariko Omura


吹き抜けとなっているプールの上階の左右の通路は、美術館のコレクションからの展示を行うスペースである。来年2月15日まで、アール・デコ展100周年を記念して『Folles annés(狂乱の年)、20年代のクローゼット』展を開催中。所蔵品から厳選された1920年代の代表的なスタイルのテキスタイル、デイウエア、ソワレなどをみていると、この時期に流行ったダンスのチャールストンやアール・デコ装飾が施された豪華列車での旅などが目の前で繰り広げられているような気になる。1925年のアール・デコ展ポスターにもみられるが、このスタイルの潮流を代表するモチーフのひとつはバラの花。直線を生かしたグラフィックな花、パブリシティ、ドレス、インテリア、テキスタイル、ジュエリー、ビューティプロダクト、バッグなどのモチーフに生かされている。また、展示の中にはエジプト的モチーフも。1922年にツタンカーメンの墓が発見されたことから、エジプトへ世間は関心を向け、そこからエジプト的モチーフもアール・デコ期にはよくみられるようになったという。

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左:右はジャン・パトゥによるカクテルドレス。1925年。 右:テニスウエア。1930〜40年ごろ。photography: Mariko Omura

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左:マリアノ・フォルチュニーによるドレッシングガウン。1920年。 右:アール・デコ期の女性たちの装いが描かれた絵画も同時に展示している。photography: Mariko Omura

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バラをモチーフにしたテキスタイルの展示も見逃せない。photography: Mariko Omura

この展覧会は企画展ながら常設展のスペースで開催されているため、毎月第一日曜日は無料。なお常設会場では数は少ないが、建築家ロベール・マレ=ステヴァンス(1886~1945年)による家具を修復して展示している。

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左:ロベール・マレ=ステヴァンスの家具を展示。 右:プールに加えて浴場があった名残がこの入り口の文字に見られる。photography: Mariko Omura

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ラ・ピシーヌでは来年の1月11日までもうひとつの企画展『Odette Pauvert』展が開催中だ。こちら、副題はアール・デコの時代の野心の絵画とある。これは画家のオデット・ポヴェール(1903~1966年)が、1663年に創設されたローマ大賞を初の女性画家として『La légende de Saint Ronan』で得たのが、アール・デコ展がパリで開催された1925年であることからだ。画家の一家に生まれたオデット。この賞を得たことでヴィラ・メディチに3年間滞在することが可能となった。その後、大規装飾作品を制作したいという野望に燃えたものの、1937年に結婚し、また第二次世界大戦があり......戦後は古典主義を追求する彼女は時代を席巻する前衛の波とは折り合わず。輝かしい1925年の栄光にも関わらず忘れられる存在となってしまったのだ。ラ・ピシーヌは彼女の作品を再解釈し、当時のボザールの教育課程における女性の位置付けを検証することを目的にこの展覧会を企画。コレクションに遍在する戦間期の女性芸術家たちを称えるという、美術館としての意欲をここで表明している。

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左:オデット・ポヴェール作『マタ・ハリと呼ばれる、女性の肖像画』(1921年)。 右:右の裸婦は1923年作『入浴後』。

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1925年、初の女性画家によるローマ賞受賞作となった『La légende de Saint Ronan』。オデットはこの受賞によりヴィラ・メディチに招かれることになる。photography: Mariko Omura

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左:オデット・ポヴェールによるナポリ帽を被った自画像。 右:ヴィラ・メディチ内、自身のアトリエにて撮影されたオデット。どちらも23歳の頃だ。photography: Mariko Omura

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オデット・ポヴェール作『Promotion』(1926年)。ヴィラ・メディチの同期たちと自分(左)をユニークなフォーマットに描いた作品。photography: Mariko Omura

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左:ローマから1929年にパリに戻ってからの作品。photography: Mariko Omura

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オデットのスペイン時代。1934年、奨学金を得たオデットはマドリードのカサ・デ・ヴェラスケスに滞在し作品を制作した。photography: Mariko Omura

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1937年に結婚し3児を得た彼女。戦後は子供や孫などファミリー・ライフを主題に、以前とは異なる作風で画家活動を続けた。photography: Mariko Omura

『Années folles』展
〜2026年2月13日
『Odette Pauvert』展
〜2026年1月11日
Roubaix La Piscine
23, rue de l'Espérance
59100 Roubaix
開)11:00~18:00(火~木)、11:00~20:00(金)、13:00~18:00(土、日)
休)月、1月1日
料)9ユーロ(企画展なし)、11ユーロ(企画展あり)
https://www.roubaix-lapiscine.com/en/home/

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editing: Mariko Omura

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