
パリ・新旧エステティック事情
今回のテーマは「新しいパリ、古いパリ」ということで、エステティックの視点から書きたいと思います。
エステティックはフランス発祥の文化のひとつ。私の出身校でもあるフランソワーズ・モリスは世界で初めて設立されたエステテシャン養成学校であり、マダム・モリスはエステティックの第一人者としてフランスでは知られています。今でもエステティシャンの国家試験の実技では、モリス式のトリートメントが基本になっています。

学校についてのブログ → http://madamefigaro-wlp.jp/75017/archives/3446521.html
モリス式エステの大きな特徴は、60年間全く変わらないフェイシャルトリートメント。
キネジテラピュートのモリス夫妻が生み出した、キネがベースになったマッサージ「キネプラスティー」は、その素晴らしい効果にファンが多く、シャンゼリゼ通りに近い本店サロンは、有名女優をはじめ、裕福層のパリマダム達に愛されています

*キネジテラピュート=医療マッサージ(キネジテラピー)をするマッサージ師の免許をもった専門家。医療行為として医者の処方箋に基づいて施され、医療保険でカバーされます。
日々、進化するエステティックにおいて、変わらないということは実は凄いことなんです

フランスの数ある化粧品会社やサロンの中で、この考えを貫き通しているのは実にフランソワーズ・モリスだけです。
基本は良質のマッサージ、変える必要がないから変えない。
というモリス夫妻の考えは、それだけ完成度が高いということ。厳しい目をもったパリマダムに支持されるのも頷けます

では、その変わらないモリスのトリートメントと他のトリートメントの違いは?

モリス式エステでは、リュカという噴射機を使い、水を使わずに化粧水で洗顔します。

リュカは19世紀にリュカ・シャンピニエール医学博士により発明された機具で、当時フランスのエステティックにもよく取り入れられていました。毛穴の奥からの汚れを洗い流すとともに、保湿効果に優れています。現在よく使われるスチーマーの原型です。

スチーマー

ハンドでのマッサージに入る前に、ヴィブラターを使い肌の深層と表層に振動を与えます。固くなった繊維をほぐし、シワ一本一本を丁寧にケアしていきます。

現在では超音波美容機に取って代わられ、この機械はフランスでももう存在しませんが、モリスのエステでは使われ続けています。超音波美容機ではジェルを塗りまんべんなく超音波を当てていきますが、ヴィブラターは、繊維やこりがほぐれたかをエステティシャンの手の感覚で調節します。

超音波美容機

次にハンドでのマッサージを施していきます。マダム・モリスが開発したキネが基本になった、ペトリサージュとマラクサージュという、2種のシワ・たるみに効果的なマッサージに加え、1907年にジャケ博士によって開発された皮膚をあらゆる方向からつまむようにほぐしてゆく、全ての肌トラブルに対応するマッサージが組み合わされたマッサージです。
「つまむ・ほぐす・流す・流す」、そして最後に「顔の形を整える」技術が施されます。一回でもその効果はてきめんに表れるのですが、そのぶんエステティシャンの力量が問われ、技術習得が難しいため、最近フランスではエンダモロジーという機械で行われています。


エンダモロジー
こうして書いていくと、昔はエステティシャンの手の感覚ひとつが頼りだったことが分かります。
次々と新しい機械が開発されていますが、技術の基本は変わっていません。人の手か、機械かの違いのみ。
戦後に女性の地位向上を目的として、エステティックを国家試験のレベルにまで引き上げたモリス夫妻。女性が高い技術を身につけて、安定した職に就いてほしいという思いから、フランソワーズ・モリスは生まれました。
残念なことに機械ではエステティシャンの技術は問われません。
それが良い事なのかどうかは分からないけれど、私は手のぬくもりが伝わるハンドケアが続いてほしい。この女性をキレイにしてあげたいという気持ちが必ず伝わると思うから・・

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