パリは土曜日午前０時を境に変わりました。

土曜日は朝から外で用事がいくつかこなして終わったのが午後２時前。トロカデオ広場の博物館に隣接するシーフードレストランに行ったら博物館が新型コロナウイルスへの対応で閉鎖しているため臨時休業でした。じゃサロン・ド・テ「Carette」でクロックムッシューでも軽く食べようかと思ったら、いつもと変わらず人が多く賑わっていて、テーブルとテーブルの感覚が狭いので感染のことが頭をよぎり却下。いくつかレストランにも電話したけれどどこもランチタイムはもうすぐ終了との返事でした。

結局、前を通りがかったシャングリラホテルへ入ってみたら、バーラウンジには誰もいませんでした・・。３つの部屋に分かれているのですがどの部屋にも一人のお客さんもいない。宿泊客の減少で空いているのです。お好きな席にどうぞ、と言われて暖炉の前のソファー席でサンドウィッチを食べていたら、入れ替わり立ち替わり給仕の方が来てミネラルウォーターを持って来てくれたりワインを注いでくれたり、声を掛けてくれて至れり尽くせ理り。食後のエスプレッソは、ナポレオン・ボナパルトを大伯父にもつローラン・ボナパルトの邸宅だった建物についての歴史まで説明してくれるサーヴィス付きでした（笑）

その夜、事態が変わるとも知らずに・・・。

夜７時半、その２日前のマクロン大統領の「全学校の休校」発表に続いて、エドゥアール・フィリップ首相が急激な新型コロナウイルスの感染拡大（現時点で感染者５４２３人、死亡者１２７人）のため「全てのカフェ、レストラン、ナイトクラブ、映画館、劇場、商店を１４日の午前０時をもって閉鎖する」と発表しました。営業が許可されるのはスーパー、食料品店、薬局、銀行、タバ（新聞や雑誌、タバコ、宝くじなどを売っている小さな店）ガソリンスタンド。交通機関は運行を続ける。必要な買い物、軽い運動を除いては外出を控える。高齢者、７０歳以上の人、持病がある人は自宅で待機する等。ウイルスへの警戒レベルはステージ２から最高のステージ３へ引き上げられました。

フィリップ首相は不要な外出を避けるべき事態にもかかわらず、人々がカフェやレストランで談笑しているのを見てこの決定を下しました。ウイルスが移動するのではなく人が移動して感染が広がるのだということを意識するように語りました。

確かにそれまではフランスは全体的に危機感が薄かった。ようやく手洗いが習慣になり、握手、挨拶の頰へのキスは控えるようになりましたが、どの薬局もマスクが完売なのにマスクをしている人は見かけなかったし、お年寄りを含めて皆んな結構外出もしていました。私は職場と家が近いので交通機関を利用しないこともあり、気を付けていたのは徒歩で行けない場所にはタクシーを使う、美術館や劇場、混んでいるレストランやカフェには行かない程度でした。職業柄手洗いやアルコール消毒、お客様と接する時はマスクを着用することは常日頃からしていて気を付けていた方だとは思いますが、あらためてもっと注意しなくては。

翌日の日曜日は、地方選挙の投票日で投票をする人は前後の人との間隔を１メートル開けて、筆記用具を持参することで実施されました。政治に関心が高いフランス人の投票率が54.5%というのは、人々が感染を恐れて投票に行かなかったからでしょう。普段日曜日の午前中はフランス人にとってマルシェで商店で食料品の買い出しをする日です。私も空いている時間を狙って朝早く行きましたが皆んな考えることは同じで結構混んでいました。買い置きできるパスタやお米が品薄なのは分かるけれど、なぜかトイレットペーパーやキッチンペーパーが完売状態。これはもしかしたらちょっと前にニュースで、日本でトイレットペーパーが完売の様子や買い占める人達の映像が流れていたからかも？！フランス人にとってはものすごく奇妙に映ったようで、たくさんのフランス人から質問されたけれど、いざフランスの自体が深刻化したらパニックになってしまったのかもしれません。

写真は今朝、月曜日の朝の様子です。土曜日の夜を境にパリはすっかり変わりました。エッフェル塔の閉鎖で先週までは減ったとはいえエッフェル塔に行く観光客で賑わっていたカフェやレストランが休業し、人通りが減り、マスクを着用したりマフラーやストールで口を覆っている人が目立ちました。今回の決定で人々が事態を理解して危機感が増したのが明らかです。

私達もサロンを本日から休業しなくてはならないので、今朝は予約のお客さまへ連絡を入れました。アルザスでホテルとレストランを経営している友人は、沢山の従業員を抱えていて打撃の大きさに頭を抱えています。少なくとも２週間はこの状態が続くと言われていますが、今は外出を控えてただただ経過を見守るしかありません。