CHICHI PARIS ~パリに住むエステティシャンのblog~

外出制限中のDVに悩む女性の暗号「マスク19を下さい!」

3月17日から外出制限が始まって以来、パートナー間の暴力が増加しているそうです。制限が始まって1週間での増加率はすでにパリ以外の地域で32%、パリでは36%。パリの方が増加率が高いのは、狭いアパートに住んでいてイライラが募るというのが理由のひとつでしょう。ニュースで見たカップルは幼い子供と3人で27平米のアパートに住んでいて、外出もできず仕事も休業に追い込まれて精神的に追い詰められていると話していました。

フランスでは2018年は121人、2019年は101人の女性がパートナーからの暴力により死亡していて、言い換えればDV被害で3日に1人女性が死亡しているということに。DV被害者専用の電話やメールでの連絡先が設置されているけれど、外出制限で加害者から常に見張られている状態では電話が掛けられないし、携帯を取り上げられているかもしれない。警察に駆け込む隙もないかもしれない。

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スペインの暗号「マスク- 19」

外出制限が始まったのがフランスよりも早いスペインではすでにDV被害者救済への取り組みが始まっていて、マスクとCOVID-19を組み合わせた暗号が登場。薬局に行き薬剤師に「マスク-19」と伝えると警察に通報してもらえる。これなら加害者が側にいても言えないことはない。そこで、フランスでも暗号を作るかスペインと同じ暗号「マスク-19」を採用するように検討が始まったそうです。

IMG_6785.jpg友人から送られてきた画像。ヘアードライヤーを取ってという奥さんに銃を渡す夫。

暴力は論外ですが、気が合わないパートナーと一日中顔を付き合わせているのは辛い。一方で既に破局したカップルにも影響を及ぼしています。

窓の外をみると目に入るのは、中庭を挟んだ建物に住むマダムCの姿。彼女は離婚することが決まり今月引越しする予定だったのに外出制限で引越しが出来なくなり、入境の閉鎖でCAの仕事も一時的に休業で、日がな一日窓を開けてタバコを吸うか携帯で話していて、私が窓を開ける度に向かいの建物の彼女と目が合うのです。愛情がなくなったのに一緒にいるのは嫌だろうなぁ。毎晩夜8時に皆んなが医療従事者にエールを送るために窓を開けて拍手をしているなか、彼女は興味なさそうにタバコをふかしているだけ。住民の噂ではもう自棄っぱちになっているとか。

離婚裁判がもう3年近く長引いている友人は、夫はパリ、彼女は地方在住で別居中。大学生の二人の子供はそれぞれパリで一人暮らしをしていて、休校と外出制限を機に父親の広い家に戻りました。本当は3月にふたりでパリの裁判所に出廷する予定が延期。彼女は子供達に会いたいけれど遠いので会えない。夫は外出制限中でも散歩、買い物、また買い物(個人運動と日常の買い物のための外出は許可されている。)と毎日3回も外出しているらしく、彼女は喘息のある息子が感染したらどうするのと怒り狂っているうえに、「どうせこんなときでもフラフラと女性を探しに外に出て行っているに違いない」と夫への憎しみ(離婚原因は夫の度重なる浮気)が日々倍増中。もう嫌いのレベルを遥かに超えてしまったみたいです。

フランスでは離婚も結婚も延期。恋人や浮気相手とも会えない。COVID-19の外出制限は家族やパートナーとの関係にも大きな影響を与えているようですが、その代わりに本当に大切な人が見えてくる機会かもしれません。

chichi

立神詩帆 / Shiho Tatsugami
2002年渡仏。エコール・フランソワーズモリスで学び、エステティック・コスメティックCAP国家資格を取得。2011年からパリ7区でエステサロンCHICHI(シシィ)を自営。All About のフランス流美容ガイドとして、パリジェンヌから学ぶ美容情報やライフスタイルに関するコラムを掲載中。
好きなものは、フランスの食文化、1日の終わりのアペリティフ、アルゼンチンタンゴ、旅。

www.chichiparis.com
https://allabout.co.jp/gm/gp/1693/
Instagram: @chichi_paris7

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