CHICHI PARIS ~パリに住むエステティシャンのblog~

復活祭のご馳走 アニョー・パスカル。

元来カトリック教徒の国であるフランスでは、十字架にかけられて死んだイエス・キリストが三日目に復活したことを記念するパック(復活祭)の昼食にアニョー・パスカル (Agneau Pascal)と言って、キリストの復活のシンボルである子羊を食べる伝統があります。

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今年は皆んなで集まって食事は出来ないけれど、病院勤務で多忙な隣人や自宅療養中の知人の分も一緒に用意することになりました。フランス人にとってはノエルと同等かそれよりも大切なパックの食事。美味しいものを食べて元気を出してもらわねば!こういうときだからこそ、ちょっと奮発してプレ・サレ (Le prés salé) の肩肉を焼くことにしました。

プレ・サレとはモンサンミッシェル周辺で育った羊のことで、プレはフランス語で「牧草地」、サレは「塩気がある」の意味です。モンサンミッシェル周辺の海水を含んだ湿地の塩分とミネラルを含んだ牧草を食べて育った子羊の肉は、柔らかく臭みがなく独特の風味があります。肉にはかわいいモンサンミッシェルマークが貼られていました。

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前日に子羊の首肉2Kgを香味野菜と一緒に約3時間煮たものを漉して、フォン・ド・アニョー(羊の出し汁)を取っておきます。

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厚手の鍋に肉の表面に焼き色を付けたプレ・サレを入れて、小さく切った野菜、ハーブ、作っておいたフォン・ド・アニョー、白ワインを加えて、鍋に蓋をしてオーブンで約1時間半蒸し焼きにします。別の鍋でフラジョレにフォンと水、白ワインを加えてコトコトと弱火で柔らかくなるまで煮ます。フラジョレは白インゲン豆を未熟なうちに収穫した薄緑色をした小さな豆で、よく古典的なフランス料理の肉の付け合わせに使われます。

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卵の殻に動物と魚が描かれたお気に入りのパックの飾り。ウサギや羊の他にもクマや鹿など卵ごとに違う動物が描かれています。

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アペリティフはシャンパンとスモークサーモンとイクラ。魚屋に好物の牡蠣が積んであり迷ったけれど、今ノロウイルスにかかって病院に運ばれている場合ではないのでサーモンにしました。そして前菜はフォアグラ、メインは子羊。

さて、久しぶりに食べたプレ・サレは柔らかくてとろけそう!!!中がトロトロになったニンニクと一緒に食べると最高に美味しかったです(^o^) 

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デザートは伝統的な子羊の形をした素朴な焼き菓子を買うつもりだったのに、買い物に許可された1時間の時間制限内で時間切れ&パン屋の長蛇の列に並ぶのが面倒になって、ババ・オ・ラムを作りました。もちろんパックのチョコレートも欠かせません。釣鐘も教会からパックの卵を運んでくるシンボルです。

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ずっと晴天続きで朝も晴れていたのに、だんだんと天気が崩れて食事中から雨が降り出しました。料理を持って行った知人から電話が。

「あー、美味しかったよ!ご馳走さま。ところで、やっぱり雨が降ったね 」

パックは移動祝日なのに、なぜかパリは毎年天気が悪いのでパリジャンにとっては「パック=悪天候」のイメージなのです。

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世の中の状況がガラリと変わっても、子羊を食べて、チョコレートを食べて、天気が崩れていつもと変わらないパックの休日。不自由な生活が続くなか、今まで当たり前だと思っていたことが、実はすごく幸せなことだったんじゃないかなと感じています。

chichi

立神詩帆 / Shiho Tatsugami
2002年渡仏。エコール・フランソワーズモリスで学び、エステティック・コスメティックCAP国家資格を取得。2011年からパリ7区でエステサロンCHICHI(シシィ)を自営。All About のフランス流美容ガイドとして、パリジェンヌから学ぶ美容情報やライフスタイルに関するコラムを掲載中。
好きなものは、フランスの食文化、1日の終わりのアペリティフ、アルゼンチンタンゴ、旅。

www.chichiparis.com
https://allabout.co.jp/gm/gp/1693/
Instagram: @chichi_paris7

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