
ガリエラ美術館で開催中の、ガブリエル・シャネル回顧展
突如、屋外でのマスク着用義務が解除されました。カステック首相が昨日発表したのだけど、一昨日は時期尚早と言っていたのにどうなっているんでしょうね?今朝仕事場に行くのに家を出たら、7割がマスクなし、残り2割が鼻or顎マスク、残り1割がマスク着用続行という感じを受けました。30度を超える気温では、マスクをしているとますます暑く息苦しい。でも私はまだまだマスクを外す気にはなれないなぁ。
さて、6区のガリエラ美術館で開催中の『ガブリエル・シャネル、モードのマニフェスト』展に行って来ました。予約しようと思っていた矢先の3月にロックダウンになってしまい美術館が休館に。見逃したとがっかりしていたらロックダウン開けに再開し、7月まで延長することになったのです。
私はモードには全く疎いけれど、初期の1910年の作品から亡くなった1971年の最後のコレクションまでを時系列に沿って見ることができるので、スタイルの変化や流れが非常に分かりやすく興味深かったです。
地上階フロアは第2次世界大戦より前の作品や香水が陳列されています。特に初期は華やかな色も多く、エレガントなデザインが多い印象。もちろんジャージ素材のドレスも。
非常に細かな手仕事が素晴らしいシルクやレースのドレスは、ため息ものの美しさ・・・。
地下フロアは戦後1954年にファッション界に復帰してからの作品。
当時の雑誌にシャネルスーツのパターンが掲載されているのが衝撃!!当時はお金持ちの人を除いては洋裁店に頼んだり自分で服を縫っていた人も多かっただろうし、自作のシャネルスーツを着ている人もいたということでしょう。
本物とフェイクを組み合わせたカラフルなコスチューム・ジュエリーは、ひとつひとつは大ぶりでこれひとつ着けるのは抵抗があるような気がするけれど、複数個着けることでシャネルのスタイルになるのだとか。アイコンである人工パールのジュエリーもありました。
圧巻は何と言ってもずらーっと陳列されたシャネルスーツ。ココ・シャネルが実際に着たスーツや、シェミーロミー・シュナイダーやジャンヌ・モローが愛用していたスーツも展示されています。特にマリーネ・デートリッヒがオーダーしたスーツを見ると、シャネルスーツを着こなすにはスラリとした体型、とりわけ膝から下が真っ直ぐ長いことと、そして細身でも厚みのない薄っぺらい体型ではなくて筒のような丸い厚みのある細さが必要不可欠なんだと分かります。そうでなければ、長年着続けた人だけが持つある種の貫禄か。
いつもシャネルジャケットを着ている超高齢のフランス人のお客さんが3人いらっしゃるのですが、2人は腰が曲がり背も縮んで小さくなっていて歩くのに付き添いの人が必要です。もう一人は病いのために身体がくの字に曲がってしまいやはり運転手が付き添って車椅子でお越しになるマダム。着替えを手伝っていたら、その中のひとりのマダムが袖が短くて小柄な自分には動きやすいと仰っていたので、本当に着やすいんだろうなと思うけれど、歳をとって体が動かなくなったときにシャネルジャケットを着れる人がどれくらいるかしら・・・。若いときから何十年と日常的にシャネルを着ていないと醸し出せない雰囲気というのが確かにあるのだと、彼女達を見ていると感じてしまいます。
ジャージー素材、コスチューム・ジュエリー、リトル・ブラック・ドレス、シャネルスーツ、香水など、貧しい環境で生まれたひとりの女性が、ゼロから生み出した物だと思うと感慨深いものがありました。階級社会のフランスで、しかもその時代にそれがどれほど大変だったか、そして邁進する強さを備えていた類稀なる女性だったか想像に難くありません。
家に帰って、すぐにパリ在住のジャーナリスト山口昌子さんの本を読み直し始めました。
見応えのある回顧展、本当にオススメです!
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