CHICHI PARIS ~パリに住むエステティシャンのblog~

ペトリュスのレジェンドが手掛けるナパ・ヴァレーの「ドミナス・エステート」

遠出して夕方パリ行きの電車を待っていたら、友人夫婦電話がかかってきました。20年以上ラスヴェガスで仕事しているフランス人の夫婦で、アメリカからシャルル・ドゴール空港に到着したばかりで実家に帰る前に2〜3日ホテルに泊まってパリで過ごすことにしたから今夜会わない?とのお誘いでした。パートナーは家に夕食に招待したいと言うけど、彼は前日に22時間のフライトを終えてパリに戻って来たばかりで、私もここ数日忙しくて疲れていたので、その日はアペリティフだけして翌日に夕食に来てもらうことにしました。

彼らが旅する必ずトラブルが発生することは友人達の間では有名な話で、一緒に車に乗ればタイヤがパンクし、飛行機に乗ろうとするとフライトがキャンセルになり、ホテルに泊まれば部屋に泥棒が入ったりと、30年来の親友のパートナーですら「もう一緒に旅行はしたくない」と言うほど何事もなく無事に済まないらしい。さて、夜7時にやって来たふたり。開口一番、奥さんのPが「私のスーツケースだけ出てこなかったの!下着も着替えもない!」彼女のスーツケースだけNY行きの便に紛れ込んでしまったらしい。案の定、やっぱりね(^_^;)

すぐに帰ると言いながらの長尻はフランス人あるあるだけど、それに加えてこのふたりはお喋りが止まらない。実は、トラブルメーカー以外にもフランス人も仰天の弾丸トークで有名なのだ。生ハムと野菜スティックとシャンパンでアペリティフが終わっても、ソファーで脚を伸び伸びと投げ出してすっかりくつろぎモード。フライト疲れと時差で眠たいと言いながらも二人とも喋り続けている。メロンを切って出して、近所のイタリンレストランにピザを頼んでワインを3本開けても帰らない。時差ボケのパートナーの目はもう瞼が落ちてくっ付きかかっているけど、帰る素ぶりがない。京都のぶぶ漬文化は、彼らには永遠に通じないのだ〜。どうやったら帰るんだよ〜。内心泣きたくなって、試合(その夜はサッカーの欧州試合のファイナルだった)が終われば帰るモードになるかと思ってテレビを点けたらPK戦でした・・・(泣)ようやく重い腰を上げたのが、試合が終了した翌朝の零時半をまわってから。去り際に「ア・デュマン(また明日ね)」。「えー、やっぱり明日も来るの?!」と力が抜けました・・・。

***

その翌日、元気いっぱいで再びやって来たふたり。ホテルの朝食を食べて、二度寝して午後3時まで寝てたと、スッキリし顔でお目めもぱっちり。夕方はリニューアルオープンして話題のデパート「サマリテーヌ」へ行き、下着と服を買ったとPはご機嫌でした。スーツケースはNYに到着したものの行方不明らしい。こっちは昨夜の長すぎるアペリティフの疲れを引きずって、買い物と料理で既にヘトヘトですよ・・・。

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アペリティフは、昨夜Pとシャンパンカラーのダイヤモンドの話で盛り上がったので、アムール・ドゥーツのマグナムボトルのシャンパン。トマトにオリーブオイルをかけてオレガノを振りオーブンで焼きました。

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以前にもブログで書きましたが、アムール・ドゥーツのコルクの蓋は天使が小さな本物のダイヤモンドを握っていて、ペンダントになるように紐も付いています。飼っているゴールデンレトリバーの首輪に付けようかなと、Pは大喜び。ところで、砂漠が広がるラスヴェガスの夏は最高気温が50℃を超える日もあるとか。暑さに弱いゴールデンにとっては辛いだろうと思ったら、家は当然ながら全館空調で24時間一定の温度に保たれていて、一歩でも外へ出たら灼けつくアスファルトで肉球を火傷してしまうので、日中は送迎付きのドッグスクールに行って、空調の効いた涼しいドックランで他の犬と遊んだりドックトレーナーの訓練を受けて過ごているのだとか。ひたすら扇風機で暑さをしのいでいる私よりも、ずっと良い生活環境のようだわ。

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予め彼らに何が食べたいか訊いたら「リブロースステーキとサラダとポテト」とすっかりアメリカナイズされたリクエストだったので却下。パートナーは「シンプルな人達だし、好き嫌いもないから、簡単な料理でいいよ」と言うけど、ここはやはり日本人の「お・も・て・な・し」の心を見せたいじゃないの。和食を作ろうと思い立ったのに、私は普段は和食を食べないので醤油も米も味噌も何もかもが切れていて、月曜日はマルシェも商店も閉まっているし、開いている店を探してあっちこっち買いに走りまわったあげく料理する時間がなくなってしまいました(>_<) 

前菜はカツオのタタキ。洋皿に一人分ずつ少しずつ盛って、薄くスライスした玉ねぎとシソや生姜を添えました。パリと同じで「Tataki」はすっかりアメリカでも浸透しているそうですが、大抵がマグロのタタキだそうです。

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メイン料理を用意をしている間の繋ぎに出したのは、冷やした野菜の揚げ浸しと出し巻き卵。揚げ浸しは野菜を油で揚げて市販の麺つゆに浸しただけ。卵焼きは茅乃舎のだし巻き卵の素で作れば、ふわふわでジュワッと出汁が溢れる美味しい卵焼きができます。ラスヴェガスでは日本食レストランへ行くという彼らも、初めて食べたそうで、料理が上手だと褒めてくれました。すかさず横からパートナーが「僕は美味しさの秘密を知ってるよ。あれは・・・」と手の内を暴露しそうになったので睨んで牽制しましたが。

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キッチンで豚肉にパン粉をつけたり、おにぎりを握ったりサラダを洗ったり、アタフタと準備していると、居間からは彼らが実家の親兄弟、一足先に帰国した娘とFacetimeする賑やかな声が聞こえてくる。なんせ一々話が長いので、いくら待たせても大丈夫だから気楽。最後は必ず「バーイ!ラブ・ユー♡」。そう、すっかりアメリカ生活に馴染んでしまい、会話していてもすぐに無意識に英語に切り替わってしまうほど、フランス人には珍しいほど彼等自身がアメリカンナイズされています。

料理の下ごしらえがひと段落して、テーブルに戻って大ショーック!!ワインが空になってる・・・!!!お土産に持って来てくれたワイン3本のうち2本はナパ・ヴァレーのドミナス・エステートというワインで、ナパ・ヴァレーのワインを初めて飲む私は期待に胸を膨らませていたのです。ドミナス・エステートはペトリュスのオーナーであるクリスチャン・ムエックス氏が手掛けるワインで、2010年は当たり年だと説明してもらってすごく楽しみだったのに!待っている間に、繋ぎのだし巻き卵と揚げ浸しをつつきながら3人で飲んじゃったらしい。3本目のワインは、貴重なワインだから100年間ワインセラーで寝かしてから飲むように言われたので今開けることはできない、というよりワインより先に人生が終わってしまう。 せめてこれ以上飲まれないように、半分ほど残った2本目のドミナス・エステートを抱えてキッチンに戻り、トンカツを揚げました。

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そんなわけで、メインはトンカツとバジル味噌のおにぎりと、リクエストされたグリーンサラダ。そして、パートナーからドミナス・エステートの価値と値段を聞いてびっくり仰天。トンカツとおにぎりと一緒に飲んでいいワインじゃなかった!!でも、とんかつはバスク地方のブランド黒豚を奮発したし、お米5キロと醤油や味噌、麺つゆをシャンゼリゼ通りから担いて歩いて帰ってくるのは大変だったし、何よりも前夜からの労働対価には見合っているかも(^m^)

IMG_5128.jpgのサムネイル画像

デザートは作る時間がなくて、買ってきたアイスクリームとお菓子。マルティーヌ・ランベール(Martine Lambert)というアイスクリーム屋さんは種類が沢山ありすぎていつも迷ってしまうのですが、ミルクチョコレートでコーティングしたノワゼットとアーモンドが入ったCrousti(カリカリした歯ごたえの)バニラアイスクリームとプラリネ・ノワゼットアイスクリーム、どちらも濃厚で美味しかったです。

喋り倒して午前2時にふたりは帰っていきました・・。ひたすらふたりの弾丸トークに耳を傾けていただけのような気がするけれど、すごく楽しかった!何だかんだ言っても。私はこのふたりが大好きなんです。建物の門まで見送って、家に戻ったら既にパートナーは布団に入って寝息をたてていました。

ちなみに、フランスでも仕事があるはずなのに、彼らがなぜこれだけ長い間アメリカで仕事をしているかというと、フランスで働くと周りのフランス人の労働意力の低さと長すぎるバカンスや休日にイライラするからだそうです。ふたりともワーカーホリックで毎日12〜15時間働くのが普通で、アメリカの夏のバカンスは1週間、長くても2週間だけどそれでいいと言う。こんな考え方をするフランス人もいるんですねぇ。例外中の例外だから、国外へ流れて行ってしまうのですが。

chichi

立神詩帆 / Shiho Tatsugami
2002年渡仏。エコール・フランソワーズモリスで学び、エステティック・コスメティックCAP国家資格を取得。2011年からパリ7区でエステサロンCHICHI(シシィ)を自営。All About のフランス流美容ガイドとして、パリジェンヌから学ぶ美容情報やライフスタイルに関するコラムを掲載中。
好きなものは、フランスの食文化、1日の終わりのアペリティフ、アルゼンチンタンゴ、旅。

www.chichiparis.com
https://allabout.co.jp/gm/gp/1693/
Instagram: @chichi_paris7

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