CHICHI PARIS ~パリに住むエステティシャンのblog~

食欲の秋、芸術の秋!セーヴル陶器美術館の食事は芸術展

セーヴル陶器美術館で開かれていた「A Table! Le repas tout un art(テーブルへ!食事は芸術)」展の最終日に間に合いました。

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パリ郊外のセーヌ川の側にフランスを代表するセーヴル焼きの国立製造所があり、その敷地内にあるセーヴル陶器美術館にはセーヴル焼きだけでなく世界中の磁器が展示されています。

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フランス料理や食卓文化が好きでその分野の本をよく読むので、食卓の歴史についての展示がとりわけ興味深かったです(^o^)

以下は展示パネルの説明からです。まずは古代ローマ時代。お金持ちは立派な屋敷で生演奏の音楽やダンスなどの演出を楽しみながら、ソファーでくつろぎながら手づかみで食事をしていました。夕食の時間は冬は午後2時半、夏は午後4時と今よりも随分と早い時間に食べていたようです。オードブルに当時人気だったのがサラダや卵、海の幸。メイン料理は煮込んだり焼いた肉や魚で、デザートにはフルーツやお菓子を食べていました。

ワインは水で割ってスパイスを加えて飲んでいました。夏にピシン(プール)と呼んでワインに氷を入れたり、水で割って飲む人達のことを、フランス人は田舎者と呼んで小バカにする(つまり良いワインを飲まない人・ワインの味が分からない鈍感な人という意味らしい)のですが、古代ローマ時代の技術では美味しいワインは作れなかったのでしょう。

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魚介類が盛られていた銀製のプレートには、海老や魚の繊細な美しい細工が施されています。貝は楊枝で中身を出して食べていましたが、今の私達と同じですね。

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中世の時代になると、順番に多種類の料理を食べるフランス料理の基盤やサーヴィス方法が出来上がります。オードブルは季節の果物、パテやブーダン、ソーセージなど。次いで野菜と共に調理した肉やポタージュスープの前菜が続き、メイン料理は宗教カレンダーにより肉を食べる日が決められていました。まだ家にはダイニングルームが存在しなかったので、豪華な装飾を施した部屋にその都度テーブルを組み立ててテーブルクロスを敷いて食卓を準備しました。丸または四角い木または金属製の板の上に、各自スライスしたパンを置き、パンの上に料理をよそって手づかみで食べていました。この時代にナイフが登場しますが、まだフォークは存在しなかったのです。

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ルネッサンス期に入ると、砂糖やバターの出現、また南米からトウモロコシやジャガイモ、トマト、南瓜が入ってきて、貴族達の間でサラダや野菜料理が流行ったことで食文化が発展。ようやく二股フォークが登場。料理をお皿によそって食べるようになりますが、二股フォークは使い難く、多くの人々はまだ手づかみで食べていたようです。

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1600年に行われたブルボン朝初期のフランス王アンリ4世とマリー・ド・メディシスの結婚式のメニューが残っています。展示されていたのはほんの一部の肉料理だけですが、ざっと私が読めるだけでも6×12個のパン、ワイン、リ・ド・ヴォー、6羽の鶏肉のブレゼ、6羽の詰め物をした鳩とケイパー、2羽の去勢鶏とレタス、詰め物をした仔牛の胸肉、羊の脚と無花果と栗、ハムのパテ・・・とすごいご馳走!南米から入ってきた七面鳥もあります。

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お終いは16世紀の終わりから17世紀にかけての食卓。貴族の間、とりわけヴェルサイユ宮殿で食文化が発展しました。面白いことに、中世に確率された順番に料理を食べる文化は消え去り、暖かい料理も冷たい料理も全て一緒にテーブル一杯に並べるようになります。ブイヨンで野菜を下茹でしたり、スパイスの効いた味付けからブーケガルニによる香りを活かした料理へと変わり、調理方法も改良されました。またようやく三股フォークがスプーンとナイフに加わり、カトラリーを使って食事をする現在のスタイルへと変化しました。王様は黄金や純銀製の食器を使用していましたが、残念ながらフランス革命の際に溶かされたり盗まれたりして、高価な食器やカトラリーは殆ど現存していないそうです。

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***

食卓の歴史の他にも、セーブル窯が他のブランドやアーティストとコラボレーションした作品や、外交用に特注で作られた食器が展示されていて、中でもエマニュエル・マクロン大統領が就任して間もなく大統領府が注文した300枚からなる「エリゼ宮のブルーの食器セット」が圧巻でした。

1913年6月7日に描かれたエリゼ宮殿の地上階の見取り図を皿で表現した、フランス人造形アー作家のエヴァリスト・リッチャー氏が手掛けた作品です。よくこんなアイデアを思いついたものです。

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300枚の皿を並べるとぴったり見取り図に!これで300枚ですが、大規模なレセプション用に更に1200枚を加えて計1500枚が製作されました。

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エリゼ宮殿の見学に行ったときにこの「エリゼ宮のブルー皿」のテーブルがあったけれども、その時は金色の縁取りや美しい絵柄が描かれた伝統を感じるセーブル焼きの皿に比べると、一枚一枚単独で並べてあったので「地味で寂しげなお皿」という印象しかありませんでした。見取り図だとも知らなかったし。でも、そのコンセプトを知ると感激です。

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一部の92枚が壁に展示されていました。小さなパン皿には縮尺が!

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充実した濃い内容の展示に大満足。美味しいものを求めて流行のレストランに行くのもよいけれども、フランスの味を知るにはまずその背景から。食の歴史や文化を知るといつもの食生活により一層深みが出るような気がします♪

chichi

立神詩帆 / Shiho Tatsugami
2002年渡仏。エコール・フランソワーズモリスで学び、エステティック・コスメティックCAP国家資格を取得。2011年からパリ7区でエステサロンCHICHI(シシィ)を自営。All About のフランス流美容ガイドとして、パリジェンヌから学ぶ美容情報やライフスタイルに関するコラムを掲載中。
好きなものは、フランスの食文化、1日の終わりのアペリティフ、アルゼンチンタンゴ、旅。

www.chichiparis.com
https://allabout.co.jp/gm/gp/1693/
Instagram: @chichi_paris7

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