名建築の宿がもたらす、ラグジュアリーなひとときを。【静岡県・沼津市|沼津倶楽部】
Travel 2025.04.22
予定を詰め込む旅ではなく、籠って楽しめる場所でゆっくりと過ごす。そんな贅沢な旅のスタイルにいま私たちは心惹かれる。土地が紡いできた文化や伝統に、モダンな美意識を反映したデザイン宿で、豊かな時の流れを堪能するステイを。
沼津俱楽部
[ 静岡県 ]沼津市
昼と夜で雰囲気がガラリと変化する客室棟。漆黒の水面に映し出される夜の情景も見もの。
グラフィカルな自然美宿る、侘び寂びの建築。
沼津駅から車で約10分、日本百景のひとつである千本松原を抜けた先。約三千坪の敷地を有する庭園の中に巨大な水盤と荘厳な建築が現れる。沼津倶楽部は1913年に建てられた数寄屋造りの松岩亭を始まりとし、2008年に建築家・渡辺明によって設計された全8室の宿泊棟を増築した宿。国の有形文化財に登録された松岩亭(現・茶亭)などを継承するべく、2023年にリニューアルオープンを果たした。全室水盤フロントで、部屋同士の垣根を感じさせない開放的な造りは海外のゲストからも人気だという。
「水盤は、雨の日にはアートのような波状を楽しめ、季節によって新しい風景を映し出してくれます」と総支配人を務める今井博美。
ロビーに差し込む心地よい光。家具は世界的デザイナー川上元美が手がけている。
5タイプある客室のうち、リニューアル時に誕生した沼津スイートは京都の西陣織の老舗HOSOOが内装を手がけた。全室に採用されている優しい竹格子の窓に新しいものと古いものを繋ぐ意匠が感じられる。
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ダイナミックな建造物の軸になっているのは、富士川の砂と土を蓄積させた版築壁。土地の資源がモダンで有機的な建築へと姿を変え、侘び寂びを感じさせる空間を作り出す。地のものの魅力を堪能できるのは建物だけではない。茶亭でいただけるのは、静岡県にルーツを持ち、四川料理の人気店イチリン ハナレの料理人、齋藤宏文がプロデュースするモダンチャイニーズ。県内で採れた野菜や魚介を活用した四季折々のコースが楽しめる。
ディナーコースはプティフールを含む12品で構成。季節に合わせてメニューを変えながらも地元食材を主役に味わえる沼津倶楽部は2024年に1ミシュランキーホテルに選出された。イチリン ハナレのシグネチャーでもある"よだれ鶏3段活用"は通年いただける。よだれ鶏、餃子、山椒麺の順に黒酢を利かせたタレに絡めて食べる3皿は絶品。
国産の鶏の骨を6~7時間煮込んだ濃厚な白湯スープを回しかけて振る舞われるフカヒレ。
沼津の近海でとれた鮮魚をいただく。
〆にはジャスミンライスとともに提供される麻婆豆腐を。
110年以上の歴史を重ねた茶亭には、昭和の間と呼ばれる和洋折衷のラウンジや茶室も併設。
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施設内には岩盤浴やサウナ、富士山の伏流水を沸かした露天風呂、そして美容関係者から評価の高いウカのオリジナルトリートメントと、身も心も安らぐ設備が揃う。歴史と自然素材が紡ぐ隔離された空間で過ごす時間は、これまでにない静寂かつ贅沢な満足感を与えてくれる。
右:沼津倶楽部でしか体験できないウカ監修のメニューが揃う。ボディトリートメント60分¥16,100
沼津俱楽部
静岡県沼津市千本郷林1907-8
055-954-6611
全8室 全室バスタブ付き スーペリアバルコニールーム1名¥71,200~、沼津スイート1名¥136,000~(ともに1室2名、2食付き)
レストラン「茶亭」
営)11:30~13:30L.O.、17:30~20:00L.O.
不定休
要予約
https://numazu-club.com/
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋
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photography: Yayoi Arimoto