ファッションウィークならではのメゾンでのお仕事
ファッションウィーク中、パリならではの仕事の依頼をいただきました。メゾンでクチュリエールやモデリストとして働く人達のマッサージです。ショーの直前は長時間の作業が連日続くので、彼らの疲労を少しでも軽減するためにマッサージの出張サービスを利用するメゾンも多いそうです。
提示された唯一の条件はオイルを使用しないマッサージということだったので、よく空港で見かけるチェアーマッサージをすることにしました。
マッサージを受ける感覚は日本人とフランス人で大きな違いがあります。「強い=気持ちいい」「痛い=効く気がする」の日本人の感覚とは対称に、「優しい=気持ちいい」「痛い=苦痛」のフランス人。フランス人日本人を問わず今日までかなりの人数のマッサージをこなしてきたけれど、圧倒的に日本人の方が凝っていて強い圧のマッサージを求める人が多い。
でも、それは大間違いでした。
メゾンで働く人達の背中の硬いことったら・・・!
ガチガチ。ゴリゴリ。
「もっと強くしていいよ!」「すごく痛いけど、続けて〜!」とまるで日本人のようなリクエストも飛び出して、マッサージ中に寝てしまう人も続出。疲れているんだろうなぁ。
その中のひとりに「私たち、服装もヨレヨレだし想像と違ったんじゃない?」と訊かれたけれど、ラフな格好で一見するとファッションに携わる人とは分からないかも・・・。でもそれも其の筈。皆んなショーの1週間前からは朝9時から夜中零時や1時まで働き、モデルが決まるのが1〜3日前で、そこから各モデルの体型に合わせて直して前日は全員徹夜で働き、ギリギリに梱包し会場へ搬入するのだと教えてくれました。勿論どのセクションの人もこの時期は寝る時間を削って働いているのですが、縁の下の力持ちのいわゆるお針子さん達は本当に大変そう。
人数が多かったため背中・腕・首・頭皮をしてひとり僅か20分間のマッサージ。それでも皆んな喜んでくれました。中にはマッサージを受けるのが初めてという人が感激してくれたり、貴女のマッサージが一番上手と褒めてくれる人もいて、とてもやり甲斐がありました。
その仕事の数日後、エコール・ミリテールで開催されたジバンシィのショーへ。
招待状はクラッチバックの中に入っていて、これだけ手に持ってショーに行けるようになっています。
シースルーのアイテムが多く、大きなパールとメレダイヤのイヤーカフが素敵。シガニー・ウィーバーをはじめセレブも沢山招待されていて華やかでした。でもお針子さん達の仕事っぷりを見た直後ではまた別の感動がありました。
コレクション発表直前に50ピースのショーピースが盗難に遭ったバルマンが、10日間で縫い直してショーに間に合わせたけれど、その裏には想像を絶する努力があったことでしょう。華やかなランウェイの背後には、コツコツと地道な作業からなる舞台裏があることを知ったファッションウィークでした。
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