ノートルダム大聖堂の火災から逃れた作品が修復され展示。
モビリエ・ナショナル(フランス国有動産管理局)のギャラリーで7月21日まで開催されていた、2019年に起きたノートルダム大聖堂の火災跡から発見され修復を終えた絵画やタペストリーの展覧会に行ってきました。
火災の日のことは今でもよく覚えています。あの日の夜、ヴェルサイユ宮殿の「戦争の間」で開かれた、ヴェルサイユ宮殿の修復工事を記念するカクテルパーティーに出席していました。ガイドの方に宮殿内を案内してもらい、ノートルダム大聖堂でのナポレオンの戴冠式の絵を鑑賞した後、カクテルが始まりました。
暫く経ったとき、突然誰かが叫びました。「ノートルダムが燃えている!」
一瞬会場は静まり返り、次の瞬間には「誰かが流したガセネタだろ?」と再び喧騒に包まれました。しかし、そのうち皆が各々のスマートフォンに映るノートルダム大聖堂が煌々と燃える様子を目にして騒然となり、なんとも言えない雰囲気でパーティーは終了しました。
展覧会は予約制で、ガイドの方がついて説明を聴きながら少人数のグループでまわりました。素晴らしかったのが、フランス語で5月を意味する「メイ」と題された、1630年から1707年の毎年5月に当時のフランスを代表する宗教画家によって寄贈された13枚の作品です。
寄贈された当時は大聖堂の壁にかけられていましたが、多くの作品がフランス革命や世界大戦などで行方不明となり、残っていた13枚の作品はたまたま炎が届かなかった場所に保管されていたため助かったのです。今回の修復で、2世紀ぶりの公開となったそうです。
タペストリーや19世紀のフランス君主であったシャルル10世が注文した長さ25メートルの絨毯も、巻かれた状態で保管されていたため消火活動の際の埃と水に濡れただけで、比較的軽い被害で済みました。
(photo 4点 : https://www.mobiliernational.culture.gouv.fr/fr/expositions-et-evenements/grands-decors-restaures-de-notredame)
延べ千人の専門家が修復作業に携わっており、それぞれの作品の作業の様子の映像でも見ることができます。日本語訳もついて分かりやすい。
「どの作品にも過去に修復された痕跡があります。今後100年、200年先に再び修復の手が加えられることを考慮したうえで修復を行なうことが我々の仕事だ」というプロの方の言葉が印象に残りました。
ノートルダム大聖堂の修復工事も進んでいます。マクロン大統領が目指したパリオリンピックまでの再建には間に合いませんでしたが、当時の姿を取り戻した作品が飾られたノートルダム大聖堂の一般公開は今年12月に予定されています。
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