強気なフランス人女性と優しいフランス人男性。
日曜日から冬時間に変更に切り替わりました。昨日の日曜日は秋晴れの気持ちの良いお天気でしたが、今週は雨が続く予報。夏が長かったぶん今年の秋は短かくなりそうです。
10月中旬の最後の夏日に、友人夫婦宅に招かれました。ご主人のFと奥さんのMは、ふたりともパートナーの同級生。仕事の都合でFはアフリカで、Mと子供はロンドンで暮らしていて、休みのときに皆んなでパリに戻ってきます。最近買ったロンドンの家には広い庭があるそうだけど、パリの家も森に隣接している庭付きの素敵な一軒家。パリで一軒家なんてとても贅沢です。
翌日からバカンスへ発つため1日しかパリにいないから、バーベキューをすると言われて、バーベキュー大好きなパートナーは肉屋に飛んで行き、大喜びで大きなリブロース肉を持参しました。Mと私に「アペリティフしながら待っていて」と言って、男ふたりはいそいそとエプロンを着けて、炭をおこしたり野菜を切ったりして準備に取り掛かり始めました。
Mは、20年前に新婚旅行で日本を訪れて京都がとても気に入り、私の地元が京都ということで好感を持ってくれていて、会うたびに如何に京都での体験が素晴らしかったかを話してくれます。来年か再来年に子供も一緒に日本でバカンスを過ごしたいというMの話を聞いていたら、Fがシャンパンのおかわりを注ぎに来ました。
M:モンシェリー。パプリカのスティックをもっと持って来てちょうだい。
F:ごめん。1個しか買わなかったから、もうないんだよ。
Mの表情がサッと曇った。
M:嘘でしょ?私がパプリカ好きなの知ってるのに、なんで1個しか買わなかったのよ?!
F:だって、今日着いて明日の朝には空港へ行くんだし・・。ごめん、マシェリー。今から買ってくるよ。
M:もういいわよ、いらない!(怒)
楽しくお喋りしていたのに、急にご機嫌斜めになったM。大人でも感情をそのまま顔に出すフランス人の女性は珍しくなく、どうやらMはそのタイプらしい。私は足りないより余った方がいいと思って多めに買う派で、パートナーはぴったりの量を買う派なので、彼女の気持ちが解らないでもないけど、Fが食事の支度をしている間ずーっと彼女は何もしないでウッドデッキに座って私と喋っていた。それで好物のパプリカが足りないとプリプリ怒っても・・・。ちょっと大人げなくない?
リブステーキが美味しそうな色に焼きあがりました。いい匂い!玉ねぎも1個だけ。
前菜はメロン、お肉にはサラダ菜とトマトのサラダ、ジャガイモのソテー。買い物してくれたFよ、ありがとう。
Mの機嫌も治って、ロゼに焼けたお肉を切り分けていただきまーす。
すると、また始まった。
M:モンシェリー、この塩はダメよ。フルール・ド・セル持って来て。
テーブルに置かれていたのは、フランスのスーパーなら何処でも見かける鯨のイラストが描かれた青い容器に入った塩。
F:久しぶりに帰って来たから、キッチンの棚にはこれしか見当たらなかったんだよ。
M:私がスーパーの塩を買うわけないでしょ!誰が買ったのよ?とにかく、絶対に何処かに天然のフルール・ド・セルがあるはずよ。探してちょうだい!
F:探したけど本当にこれしかなかったんだよ。今日はこれで我慢して食べてよ。
M:いやよ。こんなデギュラス(不味い)な塩!もう一度よく探して!
F:まぁ、そう言わずに今回はこれで食べてくれよ。
という会話をエンドレスに繰り返すふたり。
彼らが塩で揉めているのを傍目に、何食わぬ顔でお肉を食べ続けていたパートナー。そりゃ、自分で買ったお肉だもんね(笑)
Mは食品の安全性への拘りが強くて、子供がマクドナルドで食べていいのは年に1度だけ、イギリスのスーパーM&Sやアイスランドへは足を踏み入れたことすらないそうで。我が家でも使っているその鯨マークの塩をMは悲しくなるほどけなしまくり、結局塩はかけないで食べていました。
テーブルにデザートのチーズが置かれました。途端に鼻を突く強烈な香り。カビの色からして見るからにものすごく古そう。捨てるのを忘れて冷蔵庫に入れっぱなしになっていたチーズだというので、恐々ひとくち口に入れてギブアップ。一方でパクパク食べていたM。さすがデザートにチーズがないと食事が終われないフランス人。でも、古くなって発酵が進みすぎてるチーズを食べるなんて、Mの舌もその程度・・・なーんて(笑)
後日、学生時代のMはどうだったのか訊いたら、あのまんまだったと回答。一方のFは優秀で性格が良くハンサムで、テニスが上手くて女の子に人気があったとべた褒め。いつかFが穏やかな女性と出会ってMの元を去るという同級生達の想像を裏切り(?)長く結婚生活を続けているふたり。フランス人は愛情が冷めたら別れてしまうから、うまくいっているのでしょう。お姫さま気質の女性を優しく支える優男の組みわせはフランスでは珍しくないかも。Mにはどんな我儘を言ってもFが一緒にいてくれるという、強い自信があるのかもしれません。
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