オーガニックな子育て

デジタルネイティブの子どもたちに、自己肯定感という武器を作る。

191227-top.jpg

うちの双子も当然デジタルネイティブとなるわけで、手元の小さな窓から世界の情報や世界の人といとも簡単に繋がることが当たり前だと思って育つでしょう。それは、とても素晴らしいこと。でも使い方を間違えると、いま日本でも社会問題になっているように、SNSによる背筋の凍るような犯罪に巻き込まれかねません。
親として、そういうことから絶対的に子どもを守りたいと誰もが思うこと。これはきっと世界共通ではないかと思います。けれども私たち親は、24時間そばで守り通すことはできません。

世界の親御さんたちが同じ悩みを抱えているはず。そこでまずフランスではみんなが取り入れている基本の“デジタルルール”があるのかパリのママ友に聞いてみました。「多くの家庭では親が日中テレビをつけているから、テレビに馴染んでいる子が多いと思うけれど……」という前置きをした上で、文化的なインテリ層“BOBOパリジャン(Bourgeois-Bohemien ブルジョワーボヘミアンの略)”と呼ばれる、暮らしにこだわりを持った(トレンドも取り入れつつ、でもオーガニック、ナチュラル派多し)パリの若者層から支持されているのは、「3-6-9-12ルール」というルールだそうです。
このルールは、Serge Tisseronという子どもとテレビやインターネットの「スクリーン」との付き合い方を指南しているフランスの精神分析医の提唱するもので、3歳まではテレビを見せない。6歳まではテレビゲームを与えない。9歳まではインターネットの利用時に付き沿う、12歳になると、一人でネットサーフをしてもよい、ただし利用時間を制限するというのがボトムラインです。多くの親からの質問に出来るだけシンプルに、また子供の精神的な成長に合わせたガイドラインなのだそうです。

191227-rochforl.jpg

とはいえ社会はどんどんデジタル化が進んでいますし、私たち親も常にお手本を見せる(例え仕事の連絡であっても、食事中にはスマホに手を伸ばさない、とか……)のもかなりチャレンジを要するものです。また、家庭内でなければ保育園や学校など、情報のソースはあちこちからやってきます。我が家のぐりとぐらも、うちではプリンセスの「プ」の字も出したことないのに、急にプリンセスブームが到来しました。さらには家では見せたことがない子ども向けアニメのキャラクターの名前を知っていたりするのです。そういう避けられない事柄が必ずでてくるのも人生の通り道。

191227-Alice.jpg

---fadeinpager---

そこで、どうしたらアナログ時代を知らない子どもたち自身が、デジタル(テレビ、ビデオ、メディア、ゲームと言ったスクリーンを通してコミュニケーションをするもの)から自己防衛力を身につけることができるかを私なりに考えてみました。

① どれほど愛しているかをたくさん伝える。→ 子ども自身が、自分の絶対的な存在意義を感じることで、自己認証力が高まる。

② どれだけ特別な存在であるかをたくさん伝える。→ 子供自身が自分の考えは正しいと思える力を生む。

191227-blunch.jpg

この二つ自己肯定感にダイレクトに繋がるものだと思います。自分がどれだけ「価値のある存在なのか」を肌で感じ続けて育つことで、もっと大きくなってから、自分自身、また自分の意見に対して自信を持つことが最重要事項ではないかと思うのです。心が折れそうになった時に、一番の救いになるのは、最終的に自分の意思です。そこにどれだけ自分を信じる力があるか、自分という素晴らしい人間は、前に進むのだと感じる力。人になんと言われようとも、「私は私」と思える力を作ることができるのではないかと思うのです。
また、親が子どもと向き合う時間が無かったことで、子どもが感じる「寂しさ」に託つけた罠に陥入ることを防ぐためには、これしかないと思うのです。

皆さんが忙しくてたとえ過ごす時間が限られていたとしても、言葉を何度も何度もかけることはできます。たとえ叱ったとしても、その後からでも伝えることができます。
ちなみに私は、毎日2人を抱きしめて「あなたはなんて素晴らしい子なの!」「お母さんは、キミのことほんっとに大好きだよ」「キミはそんなことできちゃうなんて天才だね」と言っています。そして寝かせる時には、「キミは本当に特別な子だよ」と言うと、娘たちはコクンとうなづいて寝ついています。
言う時に気をつけている事は、口だけ使うのではなく、本当にその通りのことを思いながら伝えることです。

上記の仮説を立ててからは、もっと意識的に、頻繁に、このような言葉を伝えるようになりました。結果が出るのは、きっとティーンになる頃なのかもしれませんが、これは今からやったらものすごく強力な武器になると思うのです。
でも、これを実践し始めてからすぐの変化は子どもではなく、私自身に起こりました。これを伝えている時の私の心がものすごく幸せで満たされているのです。もしかすると、伝えた言葉がそのまま自分にも向いているのかもしれません。自分への癒しの言葉でもあるにだと気づくことができました。

私たちの世代は「そんなんじゃ、だめ!まだまだ!」と言ったように、「不屈」の精神を学び育ってきて、それは決して悪いことではないと思いますが、「お前ダメだから、もっとがんばれ!」という意識の理解の元に大きくなった気がします。だから、自分に厳しく、自分を認めることが難しい世代でもあると思います。だから私の場合、自己肯定感というのは、自分自身への課題であったりもするのです。

フランス人のディスカッション好きは、もはやフランス名物の一つみたいになっていますが、それぞれの人が、自分の意見は正しいと信じているからこそ成り立つのがディスカッションです。そう考えると、国民的に自己肯定力が高いのかもしれません。

---fadeinpager---

191227-morimoto02.jpg©️Nahoko morimoto

以前、このブログでも書きましたが、フランスでは、子どもに呼びかける時に名前ではなく「Mon chaton」(私の仔猫)とか呼ぶということを書きましたが、他にも「Ma chérie , Mon chéri 」(私の可愛い子)とか、「Mon amour」(私の最愛の子)とか呼ぶことはわりと普通です。今思えば、この様な事も実は関連しているのではないかと思いました。
また、友人達と子ども連れで会っている時に、友人は「XXは、この間こんな事ができて、本当にすごいの! ね!」とみんなの前で我が子を褒めます。こういうことで、子どもは親から絶対的な愛とリスペクトを受けていると感じ取っているのかも知れません。

こんな話を、フランス人のアートヒストリーのスペシャリストの友人ソフィー・リチャードと話していました。彼女は全くの無名でしたが、芸術と日本が大好きで実費で取材をし、The art lover’s guide to Japanese museumsという、(日本語版)海外のアート好きの人向けに本を出版してしまったくらい、思い込んだら突き進むタイプです。それがきっかけで、昨年はNHKのBSに呼ばれ、2シーズン番組制作に関わりました。無名だろうがなんだろうが、海外のアート好きの人のツボにハマる美術館ガイドが無いのはおかしい、と作ってしまうという、それくらいの情熱と、絶大な自分への信頼感を持っています。だからこそ、彼女に親から何か言われて育ったか聞いてみました。
するとソフィーは「私は、どんな時でも母が私を特別な人間だと言ってくれてたかな。」と言っていました。また滝川クリステルさんは「あなたはとてもラッキーな子なのよ」といつもお母さんに言われてきたのだと聞きました。すると自然と「自分はラッキーな人間だ!」と常に思うわけですから、運はやってきます。

我が子が、何をもって幸せと感じるかはその子次第です。私とは、全く違うかもしれません。でも間違いないのは、自分の意志でやりたい事を実行し、突き進む勇気を持ち続け、結果を出した時の達成感や幸福感を得ること。そして、この根底を支えるのが、まさに自己肯定感だと思うのです。

これはあくまでも私の仮説で、またそのうちの一部でもあり、(また今度別のことも書きますね)もちろん他にも方法があると思います。けれど自分もフンフンいい気持ちになりながら、いづれ子どもの人生を左右することになるかもしれない、愛の言葉をかけることの重大さを思うと、今日もやらずにはいられない気持ちになるのでした。

191227-morimoto01.jpg©️Nahoko morimoto

清川あさみ、ベルナルドのクラフトマンシップに触れて。
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
2024年春夏バッグ&シューズ
連載-鎌倉ウィークエンダー

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories