Abendessen☆
滞在中、ホテルの食事は毎日同じテーブルでいただきます。
初日にダイニングへ行き名前を告げると、
「◎◎ご夫妻の今回の滞在中のテーブルはこちらになります。よろしいでしょうか?」と。
ここでちょっとご紹介。
ディナー前の散歩からホテルに戻ると「今宵もディナーの席でお待ちしております」と声をかけてくれたのが今シーズンからダイニングの統括マネージャーとなったクリフォードさん。
クリフォードさんの前職は、イギリス・ロンドン郊外のお屋敷で「執事」をしていたそう。
し、執事…!?
バトラーと言われて私が想像できるのは映画「バットマン」の主役ブルース・ウェインに仕えるアルフレッド、漫画「メイちゃんの執事」の柴田理人ぐらい。。
なのでリアルに執事(だった)という職業の方に会ったのは初めて。
マナーの国イギリス仕込みのクリフォードさんはいちいち全てが丁寧で、ちょっと何かお願いしようかな?と顔をあげると静かに気配を消しながら必ず側にいるからびっくり。怖いくらいだ…。
そんな元執事なクリフォードさんに指示され、私達のテーブルを担当するのがアンドレアさん(右)とイヴァンカさん(左)。
去年新人だったアンドレアさんが先輩になり、すっかり頼もしい。
彼女は新人の頃から仕事ができ、チャキチャキと無駄なく、気が利き、何より毎日元気でニコニコの笑顔が気持ち良く、すっかり私はアンドレさんが好きになりました。
一方のイヴァンカさんは新人。新人ということで不慣れなことも多いものの、あまり周りを見てないので気が利くとは言い難い。
K「イヴァンカはさ、えっ?!と思うことが再三再四、再五あるんだけど」
夫「可愛いから許す」
K「今日のランチの時だってブラブラブラ(つい愚痴る)」
夫「美人だから許す」
K「・・・。そんなあなたもイヴァンカも許しがたし」
夫「ケーコおばさん、怖〜い」
さて、今回私たちに用意されたテーブルは、通路を挟んで向かい側にバーナーご夫妻(黒髪ショートヘアのマダム・アンゲラとドイツ人版還暦なトム・クルーズ風のムッシュ)、その通りにドイツ人ムッシュお一人(今シーズン初対面)、そして私達の隣りのテーブルも一人席がセット。
K「隣りは昨日から空いてるけど、今日はロゼワイン?が用意されてるから誰か来るね。どんな人が来るんだろ?」
夫「フリードリヒさんだったりして?!」
K「まさか〜、あの人にとっては隣りでわからない外国語で話されたらそれは騒音。とにかくこのホテルの重鎮だからホテル側もフリードリヒさんに事前に周りがどんなゲストか承諾とってから彼の席を決めてるよ」
夫「だよな」
そんな会話をしていたのが私たちが到着して2日目の夜でした。
日替わりプリフィックスなコース仕立てのディナー(Abendessen アーベントエッセン)のコンソメスープを食べていると、
「グーテン・アーベン」とやってきたのは、フ、フリードリヒさん!!
びっくり。思わずスープの中の蒲鉾ボールをポチャっとスープの中に落としてしまった。。
フリードリヒさん(仮名)は、このバカンスブログを書くようになってからずっと気になる、ホテルでも名物的な男性。
80歳近いと思われるドイツ人ムッシュで、とにかく子供が嫌いなようで、ファミリー客がやってきて近くで子供が騒ぎ出すと鼻に落としたメガネ越しにジーーっと睨む、子供が近くに寄って来るとシッシッと追い払ったりホテルスタッフになんとかしろと要求、更には自分が他の遠くのテーブルへ移動。
そんな彼の真横、手を伸ばしたら触れ合う距離に私…と思うと一気に緊張が走りました。
(ディナーコースの前菜は毎晩2種類からのチョイス。こちらはビーツ色々と名付けられたもの↓)
30年以上毎年このホテルに来ているという彼がテーブルに着くやいなやダイニングスタッフやシェフが大名行列のようにやって来て挨拶。
その動きに気がついたリピーターの宿泊ゲストたちも次々にやって来て挨拶。
オールドイツ語なので何を話しているのか隣りにいても全くわかりませんが、長く話し込むことはなく、とにかく入れ替わり立ち替わりでたくさんの人が彼に挨拶をする光景を見ているとフリードリヒさんはまるで皇帝のよう?!
(赤いビーツの前菜に対して、こちらはハーブの緑が効いたニシンのムースの前菜↓)
みんなフリードリヒさんに気に入られたいって感じね〜。
とか思いながら、でもこの人は子供が苦手みたいだし、顔が怖いし、正直言って私はちょっと苦手だけど、滞在中毎食隣りで食事をするわけだから努めて笑顔でいようと。
夫「ケーコさん、大丈夫顔引きつってるよ」
K「フリードリヒさんに大和撫子(多くを語らずとも魅惑的)の魅力を見せつけてやろう…へっへっへっ」
夫「すでにその顔がヤバい…」
(メイン料理は肉または魚の2種類からの選択です。こちらはラムチョップ↓ 食べて夫は大感激。東京のレストラン◎◎より全然美味しいかも♡)
とにかくフリードリヒさんの前では大声で話さない、ディナーの時は彼も毎晩きちんとした服装なので私達もあまりラフにしない、努めて笑顔。
と思った4日目の晩くらいでしょうか? 彼の方から「Hi! How are you?」と英語で声をかけてくれたのです。
いつも真顔でグーテンなんとかってドイツ語しか発しなかった彼がフレンドリーな様子で驚きました。
夫「フリードリヒさん、ナイスなんだけど」
K「見たことない笑顔だよ」
(ラム肉に対して、この日の魚料理は鮭のエスカロップ。しかもゴマ油を効かせたアジア風アレンジでピラフ付き↓)
そしてちょこちょことお話をするようになりました。
彼はミュンヘン在住で、あるビジネスで成功されたそう。
先に奥様を亡くされ、その後もお一人で毎年このホテルに来ていることは去年他のゲストから伺ったのですが、毎年このホテルに1ヶ月滞在し、別のホテルにもう1ヶ月滞在するのだそう。
2ヶ月間もホテル暮らしとは!
毎日午前中はスキーを滑り、ランチの後はスパ、夕食前にはクロスカントリー、空いた時間は読書が毎日のルーチン。
(ディナーには毎晩チーズビュッフェ付き↓)
そんな話を彼の方から少しずつしてくれるように。
そして先日のディナーでは、キッチンから何やら特別に用意された、この日のメニューには無いものが恭しく運ばれて来ました。
料理に関してはある程度のわがままオーダーができるので何かリクエストしたのだろう程度に思っていたのですが、しばらくすると元執事なクリフォードさんが「よろしかったらこちらをどうぞ。お隣りの◎◎さんからです」と。
それは、フリードリヒさんが特別にスペインから取り寄せたという「イベリコベジョータ」(生ハム)。
これまでベジョータは繰り返し食べてきたけれど、これはスゴイ!赤身はもちろんですが、脂身部分が別格な美味しさ。
(あまりに美味しいので食べ終わる前に1枚パチリ↑)
心の中では「フリードリヒさん、まいうーです!!」と叫びながらも務めてエレガントに「ダンケシェーン♡」。
(この日のオーストリアの赤ワインに合う、合う!↓)
こんな貴重なものをお裾分けしてくださったフリードリヒさんに感激とお礼を述べると、笑顔でサッと右手を上げるだけ。どこまでもクール…。
(デザートも2種類からの選択。こちらはコーヒームースのシャルロット仕立てと記されていたもの↓)
食後、席を去る前に改めてお礼を述べると彼の方から右手を。まさかの握手。
その右手を握り返すと大きく温かい優しい手でゴツゴツした無骨さはなく、綺麗な芸術家の手のように感じました。
夫「なんか俺たち、どんどんフリードリヒさんと仲良くなってない?!」
K「うん、嫌われてはいないと思う。席もそのままだし。笑」
(セミフレッドのティラミスとコーヒーアイスのデザート↓)
基本無口な方なので、少しずつですが5年目にしてこのホテルの重鎮ゲスト・フリードリヒさん(あくまで仮名)と日毎に親しくなってきたことに驚いてます。
夫「フリードリヒさんって寡黙だけど実はかなりナイスだね。凄い人なんだろうけど全然威張ったり、人を見下したりしないし。逆にそう言うタイプを嫌ってる感じ。」
K「今回はスパでも何度かご一緒してるけど、絵に描いたようなジェントルマンぶり。そういえば脱いでもお腹も出てなかったな」
夫「どこ見てるの…」
ちなみにフリードリヒさんのテーブルに毎食用意されているのはロゼワインではなくはクランベリージュースを水で割ったもの。これも比率が決まっているそう。
お酒は嗜まないそうで、コーヒー・白砂糖・小麦粉NG、お話を聞くほどにヘルスコンシャスな方。
但し、バニラアイスにチョコレートソースがけには目がない。(かわいい…)
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