
Le Chapeau de Mitterrand☆ミッテランの帽子
読み始めるやいなや、これはツボ!と大好きな世界に引き込まれ、読み終わるのが勿体無いなく、淋しく、あえてゆっくり丁寧に読んでいた物語『ミッテランの帽子』<Le Chapeau de Mitterrand (原題)/Antoine Laurain (原著) 吉田 洋之 (翻訳)>。
2012年にフランスで初版発表されるやイギリス、アメリカをはじめ十数ヶ国で翻訳出版され、ベストセラーとなった本です。
当初はフランス語学習のためにオリジナルで…と思ったものの、すっかり忘れ、コロナ禍で日本語訳があることを知り飛びついてしまいました。。
ここでネタバレなあらすじは割愛ですが、とても洒脱、フランス文化に溢れた大人のおとぎ話で、読後に心の中にフワーッっとパリの風が吹きました(^^)
タイトルを見て『ミッテラン』って、あのミッテラン?と誰もが思うのでしょうが、まさにあのミッテラン。
1981年に社会党初のフランス大統領に選ばれたフランソワ・ミッテラン( François Maurice Adrien Marie Mitterrand)のことです。
1981年に大統領に当選し、1995年まで2期14年間、フランス大統領を務めました。
そのミッテランが野党首相の内閣を抱え、危機に陥った1986年からの2年間、1988年に再選を果たすまでがこの物語の舞台、時代背景です。
私の知らない80年代のフランス、パリが舞台ですが、街や人々の様子の描写に古さはなく、今に重なり、その光景はリアルに広がりました。と同時に80年代という時代が政治的、文化的にフランスにとって、その後のEU諸国にとって、重要な時代であることを知りました。
(ブラッスリーの絵葉書を栞にしながら)
パリのブラッスリーに置き忘れられた大統領の黒い素敵なフェルト帽。
ストーリーは、その帽子の持ち主が変わりながらオムニバス形式で進んで行きます。
嫌な上司の顔色ばかり窺ううだつの上がらない会計士、何もかもよろしくないとわかっていても不倫を断ち切れずにいる作家志望の女、すっかりインスピレーションを失った天才調香師、先祖代々続く名家で退屈な日々を送るブルジョワ男らがその「帽子」を手にしたことで、転機を迎え、それぞれの人生が好転していくというお話。
中でも私が一番ページをめくる手が早くなり、ちょっとドキドキ、それ!その香りです、そういうパリマダムいるよね〜!と、すっかり感情移入してしまったのが、調香師のくだり。
かつては天才と呼ばれた調香師だったのに、いつからか大スランプで抜け殻のような毎日だった彼がLe Nez(天才調香師)に蘇る!
読みながらどんどん本から香りが漂ってくるようでした。
人生を切り開くきっかけ、本当の自分を取り戻すきっかけは、ほんの些細なコトやモノなのかもしれません。
本書は確かに「おとぎ話」ではあるけれど、最後の訳者あとがきを読むと更に帽子の奇跡エピソードを知り、驚きました。
世の中で起こることは、やはり小説・ドラマ以上のことだと思えます。
数年後、これからの人生で繰り返し読みたいLe Chapeau de Mitterrand(ミッテランの帽子)でした。
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パリの1枚。
先週日曜日が母の日だったフランス。
Picard(ピカール)では、鉢植えフラワーを模したデザートが登場。
母ではないが食べたい!と近所のピカールに行ってたのですが、ありませんでした。
他にもお目当の定番商品などのいくつかが入荷待ちとなっていて、輸入問題や商品値上げをあちこちで感じる今日この頃。
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*Belle et Bonne Blogも気ままに更新中(^o^)/
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