怪物と呼ばれるLe Dome☆
パリの1枚。
春から夏に向かう途中、毎日のように1日1回短時間雷雨が続いたある日、アパルトマンの中庭にポコっとキノコ出現。
5、6年前に某レストランでオススメされた「昨日シェフが実家近くの山で採ってきたばかりの野生キノコのサラダ」なるものを食べてあたって緊急搬送され地獄を見ました。
以来、山や野にひょっこり現れたキノコを見るとあの苦しさを思い出す。くわばら、くわばら。
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たゆたゆと流れるセーヌ川?!
ではなく、フランスのワイン名産地、ボルドー市内を流れるガロンヌ川。
このガロンヌ川に面した美しき港町・ボルドーは川の湾曲部にそって三日月形に形成されているので「月の港」と呼ばれています。
そんな初秋のボルドー旅行を思い出しながら、今夜は自宅で美味ボルドーワインを飲むことに。
(トラムが走るボルドー市内)
パリに暮らすまで白ワインしか飲めなかった私が赤ワインを嗜むようになり、最初に夢中になったのが「ボルドーワイン」。
メルローが気に入った私とカベルネ・ソーヴィニヨン好きな夫との利害も一致して年に2回春と秋にワイン買い付けを目的にボルドーを訪れていた数年間がありました。
そこでケース買いしたのが、ワイン評論家たちから「怪物ワイン」と称されたChateau Teyssier(シャトー・テシエ)の
“Le Dome”(ル・ドーム)。
今すぐ飲んでも美味しいけど、5年、10年、20年後はさらに美味しくなるとワインカーブの店員さんも大絶賛。
毎年1本ずつ飲んでその熟成変化も楽しもうと思ってのケース買い。
そして2013年のある秋の日、飲んでみました。
飲む数時間前から抜栓、そしてデカンタージュ。
いよいよ、実飲♬
グラスをクルクルっと回し、シュルシュルって口の中に入れて転がし、ゴクっ。
夫「・・・。」
K「・・・。」
シーーン。
K「あの、、これって例の怪物ワイン?」
夫「うん。」
K「どのへんが怪物?」
夫「イマイチだな…」
K「イマイチも何も、これ昨日飲んだ安ワインの方が全然美味しいよ。香りも薄くて、余韻も短いし、、」
夫「ガチガチに硬いな〜。」
K「もう何時間も前から抜栓してるのに?デカンタしたのに硬い?開かないってこと??」
夫「うーーーん」
K「これ何本あるの?」
夫「いっぱい。」
K「そういえばケースだったんじゃ…」
再びシーーーンとしてその日のディナーは一気に撃沈ムード。
結局飲むのが早過ぎたと結論づけ、普段目につかないセラーの奥の奥でしばらく眠ってもらうことになったLe Dome。
あれから5年。
ヴィンテージ的には13年寝かされたLe Domeさん。
そろそろ飲み頃?起きてくれたかな?という期待と不安を感じながら今宵抜栓してみたところ、
K「うわっ、すっごい!!」
開けた瞬間、ドライアイスの煙のように香りがボトルから溢れ出す感で、どんどん周囲に香りが立ち込めました。
まるでスミレ畑のど真ん中にいるみたい。
最初はスミレをはじめとした花の香りがいっぱいだったのに、そのあとはハーブ、青っぽいの香りもしてきた。
そして一口飲むとアニス、クローブ、インク(インクは飲んだことないけど)、黒スグリのような味。
夫「旨い!!」
私のワイン記憶法、擬人化表現をするなら豊満ボディというよりは程よく鍛えた体に適度な丸みを持った大人の女性で、自立した知的美人を連想させる、そんな感じ。
カベフラ65%、メルロー35%。美しいルビー色にもうっとり♡
改めてこのワインのバックグランドなるウンチクをチェックしてみると、その歴史は石油コンサルタント、英国人ジョナサン・マルテュス氏が1991年に会社を売却し、94年にシャトー・テシエを購入してからスタート。
そのシャトー・テシエでカベルネフラン主体のトップキュベとして96年より発売されたのがLe Dome。
その生産畑はわずか1.64ヘクタールしかない平地で、出荷されるのは約700ケースというレアワイン。
ある時期には「パリで10万円出しても探せない」といわれたことが伝説のようで、リリースされてから短期間で成功したスーパーサクセス・シンデレラワインなのだそう。
特徴としてはカベルネフランを主体とし、「本当のサンテミリオン通のためのワイン」「シュヴァル・ブランを超えるサンテミリオンを造る」という目標の中で作られたワインだと。
そんなワインを今回はラム肉ステーキと一緒にいただきました。
K「それにしてもドームさん、5年前とは別人ですよ!」
夫「やっぱり熟成ワインっていうのは閉じたり開いたりを繰り返しながら右肩上がりに変化して行くんだな。たまたま閉じて味わいが後退したタイミングに飲むとあまり美味しくないらしい。」
K「じゃ、まさに5年前のあの瞬間は閉じて引き篭もってた時期?!」
夫「かもね。」
と思うとワインは益々面白く、とても人間的な飲み物。
人も生まれや育つ環境が違えば違ってくるように、ワイン葡萄も品種が違えば育つほどにその先天的な違いは歴然とするし、ポテンシャルの有無、育てる人(ヴィニュロン、醸造家)によって後天的な性質や特徴もどんどん加わり変わり、最後は年を重ねる中で自分自身で変化を遂げてゆく、ワインは人間の人格形成に似てるところがたくさんあり興味深い飲み物。
美味しい熟成ワインに出会うと、いろんな経験を重ね紆余曲を経て年を重ね、自分も素敵な味わいの人間に成長できればなぁなんて思う。
この先、まだまだもっともっと美味しく化けて飲み手を驚かせて欲しい怪物ワインLe Dome(ル・ドーム)です。
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