花で紡ぐパリの日常。

バカンスのない人生なんて

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広島に住む義父から、リンドウの花が届きました。

義父はリンドウをはじめ、スモークツリーやシンフォリカルポスなどを育てています。今の季節はちょうど、リンドウが畑で立派な花を咲かせているのです。

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昨夏の今頃はこの山で、野花を摘んで、束ねながらお散歩しました。家に帰ってくる頃には、手の中に、自然がくれたブーケができていました。

私はこの夏、東京で過ごしていますが、目を閉じれば、あの日の畑を焼く匂いが遠くから、風に乗ってやってくるようで。

濃い、野の匂いが、人と自然のやさしさに包まれる時間が、東京で凝り固まった心身をほぐしてくれます。早くまた、花たちに会いに行きたいな。

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フランス人は、毎夏、短くとも1ヶ月程度のバカンス(長期休暇)を取ります。旅行へ出かける人も多く、パリの街にも束の間の静けさが訪れます。行き先は人それぞれですが、めいっぱい太陽の光を浴びられる南の方へ向かう人や、自然を求めて田舎へ行く人が多く、いずれも1ヶ所に長く滞在するのが特徴です。

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正しいバカンスの過ごし方は、簡単。何もしないことです。

太陽の光を存分に享受し、息を深く吸って吐き、ぐっすりと眠り、時間をかけて食事を楽しみ、大切な人と過ごす。それだけ。プラグを引っこ抜いて、ただ人生を楽しむだけの日々を、彼らがいかに謳歌し、愛しているか。それはバカンス明け、日焼けした肌とともにパリに戻ってきた人々の、心の底から満ち足りた表情が物語っています。

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彼らはきっと、バカンスのたびに心に溜まった澱を捨てているから、いつでも軽やかでいられるのかもしれません。ゆったりとバカンスを楽しみ、人生で大切なものはそう多くないことを教えてくれる夏。肩の力を抜いて行こうと思える時間。

私たちの人生にはやっぱり、バカンスが必要なのです。

守屋百合香

フラワースタイリスト
パリのフローリストでの研修、インテリアショップ勤務を経て、独立。東京とパリを行き来しながら活動する。パリコレ装花をはじめとした空間装飾、撮影やショーピースのスタイリング、オンラインショップ、レッスン、コラム執筆などを行う。
Instagram:@maisonlouparis
www.maisonlouparis.com

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