花で紡ぐパリの日常。

花の命と向き合う、花と太陽のプロジェクト。(前編)

飲食業界で食品廃棄の問題が取り沙汰される昨今、花仕事を生業としている私も、フードロスならぬフラワーロスについて考えることが度々あります。

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花の仕事といっても、私は店舗を構えているわけではなく、基本的に事前オーダーに応じて使う分だけ仕入れるため、実は、ロスになる花はそれほど多くありません。
早朝の市場での仕入れは、できるだけロスが出ないように頭の中でパズルのごとく計算しながら時間勝負で動き回るので、毎回真剣そのもの。事前に予約注文すれば楽なのですが、その日の市場で最も心惹かれるものを選びたいので、余程のことがなければ事前予約はしません。
それは私の花の師匠から受け継いだことでもあり、以前、市場の仲卸さんがポツリと呟いていた言葉が印象的だったためでもあります。

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花は自然のもの。長い期間をかけて育成するため、直前に出荷量を調節するというわけにはいきません。あるとき耳にした、「その時々に市場に並ぶものを見て、買って欲しい」という、東京で長年お世話になっている仲卸さんの言葉が、私の心にずっと残っています。それは単純に美しさや品質のことでもあるけれど、生産背景のことも考えての呟きだったのではないでしょうか。仕事上、必要なタイミングや数量というのはどうしてもありますが、その中で、できるだけ健全な選択をしたいと思っています。

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そして、私自身がロスの問題に直面するのは、撮影のフラワースタイリングのとき。いつも、その日の撮影現場にいる方々に持って帰っていただき、ご自宅で楽しんでいただけるようにと心掛けていますが、例えば時間がとてもタイトで、セットの解体だけで手一杯だったり、持ち帰ることができないような状態だったり、花を廃棄しなければならないときがあります。「仕方がない」と言い聞かせつつも胸が痛み、日に日に、本当に「仕方がない」で済ませて良いのだろうかと疑念が大きく育っていました。

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近頃では、ドライフラワーにする、染色の材料にするなど、ロスフラワーを使った取り組みも目にするようになりました。
ドライフラワーは既に実践していましたが、今は染色が気になっていて、染色した布を使ってさらに花と環境に良い影響を与えられるものを生み出せないかと検討しています。
自分が選んで手に取った、いただいた花の命を、責任をもって見届けられるような取り組みはないだろうかと、日々模索しています。
そんな中で友人のフォトグラファーが提案してくれた、子どもの頃に心躍らせた実験のようなプロジェクトを、次回、後編で紹介します。

守屋百合香

フラワースタイリスト
パリのフローリストでの研修、インテリアショップ勤務を経て、独立。東京とパリを行き来しながら活動する。パリコレ装花をはじめとした空間装飾、撮影やショーピースのスタイリング、オンラインショップ、レッスン、コラム執筆などを行う。
Instagram:@maisonlouparis
www.maisonlouparis.com

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