ミモザを訪ねて、南仏イエールへ。(1)
フランスには、夏だけではなく、一年のうち何度もバカンスがあります。2月末の短いバカンスもそのひとつ。まだまだ寒いこの時期のバカンス先は悩みどころで、フランスではスキーに行く人が多いけれど、我が家は寒さを逃れて暖かいところへ。
薄曇りのグレイッシュなパリの街並みは大好きだけれど、太陽の真っ直ぐな日差し、どこまでも青い空が恋しくなりました。そういえばと思い出したのが、以前同じ時期に、南仏へミモザを見に行ったこと。
7年前、花修行のため留学にきていた頃、ミモザを見たい一心で南仏へ弾丸一人旅をしたことがありました。
南仏には「ミモザの里」なる村があると聞いたものの、当時はインスタグラムなどのSNSも今ほど盛んではなく、情報を得るのも一苦労。フランス語のサイトを必死で読み解いて、飛行機と中距離バスを乗り継いで、国道沿いをひたすら徒歩で登山した末に目に飛び込んできた風に揺れるミモザの大木と、空と海の青は、今もくっきりと脳裏に焼き付いています。
今回は1歳児連れの家族旅行なので、交通のアクセスも踏まえ、夫がイエールという街を拠点にするのはどうかと提案してくれました。
イエールはプロヴァンス地方最南端の街。年間300日の晴天を誇ります。また、国立公園や、フラミンゴが生息する塩田地帯、黄金の島々と称賛されるイエール諸島があるなど、自然豊かな地です。そしてミモザの里ボルム・レ・ミモザへも、バスで1時間程度で行くことができます。
ボルム・レ・ミモザに到着すると、バス停そばに大きなミモザの木が出迎えてくれました。
しかし、期待に胸膨らませながらベビーカーを押して、山頂へと坂道を登り始めるも、想像していたほどにはミモザの木はあまり見当たらず・・・。
どうやら、暖冬の影響でミモザの開花時期が例年よりも少し早く、一番の見頃は終わってしまっていたようです。
逆に、想像以上だったのは、坂道の長さ。夫と代わる代わるベビーカーを押して頑張りましたが、途中からは階段が多くなり、ギブアップ。幸い、息子は初めて目にする景色に興味津々で、楽しんで歩いてくれたのでほっと胸を撫で下ろしました。
ボルム・レ・ミモザは、ミモザの里としてだけでなく、実は「花の村」としても有名。四季折々、いつでも花にあふれた美しい村です。このときは、ミモザは少なかった代わりに、ブーゲンビリアの花が早くも咲きはじめていました。
そこかしこの家の壁をぎっしりと覆うブーゲンビリア。テラコッタの壁に水色の窓、フューシャピンクのブーゲンビリアのコントラストが本当に可愛くて、たまりません。
他にもモッコウバラやジャスミン、オリーブなど、植物とカラフルな家々を愛でながら、あっちこっちにフラフラ歩く息子を追いかけながら山頂近くの展望台を目指しました。
(「ミモザの里感」を感じられる写真も、なんとかおさめました。)
地中海の煌めきが眩しく、思わず目を閉じて深呼吸したこの風景ももちろん宝物ですが、実のところ、ここに辿り着くまでの、家族で息を切らし、笑いながらきた道のりの方をよく覚えています。
少し先を歩いていた夫が「良い小径を見つけた!」とうれしそうに駆け寄ってきて教えてくれた、ジャスミンのトンネル。息子と夫がトンネルの向こうへとだんだん小さくなってゆく姿をカメラのファインダー越しに見つめていて、シャッターを切りながらなぜだか涙が出そうになりました。ちょうどウクライナ侵攻のニュースを耳にしたばかりで、世界中の誰もに、同じように守りたい人がいる、家族がいるのだと思うと、やりきれない気持ちが溢れてきました。
いま困難な状況にある人々に、一刻も早く平和な日常が戻ってくるよう祈ります。
〜(2)に続きます
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