改装が終わったガリエラ宮で開催中。パリ初のアライア展を見逃さないように。
Paris 2013.10.30
大村真理子の今週のPARIS
パリ16区のガリエラ宮市立モード美術館。改装工事中も館長オリヴィエ・サイヤールは外の会場を使ってグレ展、バレンシアガ/コムデギャルソン展など話題のモード展を開催していた。その彼がこの秋の美術館のリニューアルオープンに選んだのは、アズディーン・アライアである。


ナオミ・キャンベル、ステファニー・シーモア、ヴェロニカ・ウェッブといった80年代のトップモデルたちは、多忙にもかかわらずアトリエで彼のクリエーションに協力を惜しまず。彼女たちは仕事だけではなく私生活でもアライアのドレスのファンで、こうした極めて細いウエストのドレスも楽々と着こなした。photos Mariko OMURA
アライアがデザインするのは装飾といったらせいぜいファスナー程度で、シルエットありきの服。 素材選び、カット、縫製......すべてがパーフェクトな彼の仕事は、女性なら一度は体感すべきもの。そのフィット感は身体をしめつけるのではなく、上へと持ち上げられるような感じがあり、つい姿勢を正してしまう。女性に美しいアリュールを与える服なのだ。 年に2回のシーズンごとのトレンドというのとも無縁で、女性を美しくする服創りをひたする追求する彼。アライアの服は高価だが、時代を超越した永遠の一着を入手するのだと思えば納得できるのではないだろうか。


「私が作るのは時代にすたれない服だといえる」と語るアライア。テーマや時代にとわられず、自由に見てほしいという構成となっている。
ファッション・シーンの表には滅多に姿を現さない巨匠クチュリエ。これはそんな彼を説得し、開催にこぎつける努力を2年間惜しまなかったサイヤールの敬意と熱意がこもった展覧会である。 サイヤールがキュレーションし、ブールデル美術館で催した「グレ」展を見て、回顧展を拒み続けていたアライアは考えを変えたそうだ。彼は祖国チュニジアで彫刻を学んでいて、 サイヤールは彼の服創りにも、マダム・グレと同様に彫刻家の仕事を見いだしている。 彼の手によって粘度や大理石のように、操られ、布や革がフォルムをなすのだ。ルネッサンス様式の美しい建物内、モザイクタイルの床、ポンペイ・レッドの壁、フレスコ画の天井などが見事に再生された会場。1980年代から今に至る服がマルタン・ゼッケリーによるシンプルな構成で並べられている。服は手にとれる近さにあるので、ディテールもじっくりと見ることができる。

モードを仕事にする人にとって、これほど近くでアライアのアトリエ仕事、素材をじっくりと見られるのはうれしいことだろう。ブティックで販売しているのはプレタだが、クチュール顧客も彼には多い。過去にはアルレッティ、グレタ・ガルボといった女優も顧客だった。
ジュリアン・シュナーベルの絵画や、バスキア、アンゼルム・キーファー......海外での展覧会ではアライアの服は、アーティスト作品と共に展示されることが多かった。パリではガリエラ宮の裏庭の向かい側にあるパリ市立近代美術館も今回の会場の一部で、マチスの作品を見せる2部屋を使って8点のドレスを展示している。その一部は、展示されている作品にあわせてのクリエーションだという。来年1月26日までと長期の開催なので、ぜひ旅のプログラムに組み入れよう。

近代美術館内での展示より。マチスの「パリのダンス」「未完成のダンス」を展示しているのは常設展会場なので入場無料。
会期:開催中~2014年1月26日
Palais Galliera, musée de la Mode de la Ville de Paris
10, avenue Pierre 1er de Serbie
75116 Paris
時間:10時~18時(木曜 ~21時)
休)月、祝
入場料:8ユーロ
Tel:01 56 52 86 00
www.palaisgalliera.paris.fr