パリ・オペラ座の新シーズン 23/24、バランスの良いプログラム!

3月29日、パリ・オペラ座で今年9月に始まる次のシーズン2023/24のプログラムが発表された。プレス向けの発表会の壇上にはアレクサンドル・ネーフ総裁、ギュスタヴォ・デュダメル音楽芸術監督、そしてバレエ団の新芸術監督のジョゼ・マルティネスの3名が並んだ。来シーズンのバレエのプログラムは12公演。そこにはクリエイション3作とレパートリー入りする3作の新しいバレエ作品が含まれている。これはオペラ・ガルニエとオペラ・バスティーユでの公演についてで、これに加えて来年は来日公演が予定されている。東京文化会館で2月8日から11日までがルドルフ・ヌレエフの『白鳥の湖』、そして2月15日~18日に内容はいまのところ未発表だが別の演目が踊られるそうだ。

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3月29日の記者発表より。パリ・オペラ座の元エトワールダンサーで昨年12月に芸術監督のポストに就任したジョゼ・マルティネスがプログラムを発表した。チケットの予約購入は4月17日から(シーズン22/23の会員は4月1日から)。

さて、このシーズンもオーレリー・デュポン前芸術監督によるプログラムなのだが、彼女が用意したものにマルティネス新監督は少しばかり変更を加えたという。クラシックとコンテンポラリーとのバランスをよくするためだ。たとえばシーズン最後の『白鳥の湖』。もともとはミックスプロが予定されていたけれど、内容が確定されていなかったので替えることができたと語る。この作品は東京で2月に踊られるが、ダンサーたちは同じ作品を踊ることによって役柄の解釈を深めることもでき、成長できる利点があるとも彼は説明する。また3月末にデュポン前芸術監督がプログラムしていたのは『ロミオとジュリエット』だった。それを同じヌレエフ作品だが、彼は『ドン・キホーテ』に入れ替えた。『ロミオとジュリエット』はその舞台装置がツアーのための移動に不向きなので、新しく作り直すことにしたという裏事情があり、それで『ドン・キホーテ』に変更することにしたそうだ。これによって、もともとプログラムされていた12月の『くるみ割り人形』と合わせて、ヌレエフの古典大作が3演目というこれまでなく豪華なシーズンとなった。この発表時、彼の静かな語りの中に感じられたのは、パリ・オペラ座の遺産を土台にして新しい時代を築いてゆこうとする心意気だ。彼がより深く関われるシーズン2024/25のプログラムが早くも気になってくるが、これは1年後の発表を待つしかない。

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2023/24年のプログラムを盛り立てるルドルフ・ヌレエフの古典大作『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』『白鳥の湖』。photos:©︎ Opéra national de Paris

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来シーズン、クラシックバレエ・ファンをさらに喜ばせるのは陽気でフレッシュな『リーズの結婚』だろう。2018年6~7月以来、久々に踊られる。そして5月の『ジゼル』。これは1982年1月生まれのミリアム・ウルド=ブラムがこの作品でアデュー公演を希望したことから、プログラム入りしたそうだ。来シーズンは彼女が引退。その後1983年9月生まれのドロテ・ジルベール、1983年10月生まれのリュドミラ・パリエロ、1984年4月生まれのローラ・エケと女性エトワールが次々とオペラ座を去ってゆく。彼女たちが42歳の定年を迎えるシーズン2025/26は、新世代エトワールの時代への移行の年。彼女たちが去った後の大きな穴を埋めるのは、マルティネス芸術監督が任命するエトワールたちとなる。

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左から、『ジェローム・ロビンス』『リーズの結婚』『ジゼル』。ヌレエフ以外のクラシック作品、ネオ・クラシック作品もイン! 『ジゼル』には英国ロイヤル・バレエ団のマリアネラ・ヌニェスがゲスト出演する。photos:©︎ Opéra national de Paris

今シーズンは『パトリック・デュポンへのオマージュ』で2月にガラ公演が行われたが、新シーズンはいつものように開幕ガラとして9月21日に決定。内容はデフィレに続き、シーズン開幕プログラムのトリプルビルである。デュポン前芸術監督は女性コレオグラファー3名の宵として、フランス人のマリオン・コタン、中国人のシェー・シンのふたりに創作を依頼し、これに公演のたびに大好評を博すクリスタル・パイトの『The Seasons’ Canon』をプラスしてのトリプル・ビルだ。コンテンポラリーで開幕する2023/24。12月にはイリ・キリアンの4作品がオペラ・ガルニエで踊られ、また2月には新型コロナ禍で延期となっていたオハッド・ナハリンの創作『SADEH21』がいよいよ。この創作およびシーズン最後のプログラムであるピナ・バウシュの『青髭』についてオーディションを、マルティネス芸術監督はオープンにしたそうだ。その希望者は90名とか。パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちがクラシック作品だけでなく、複数のタイプのダンスを踊れることを観客に見せられると彼は語る。なお、就任時から語っているように、ポワントで踊られるクラシックバレエのテクニックを用いた新しい作品を将来プログラムに入れたい意向が彼にはある。それについてはパリ・オペラ座を去ってから今回の就任にいたる間にソーシャルメディアなどを介して、カンパニーの中にそれができる可能性のある人を見いだしたそうで、そうした人々を創作へと導きたいと語った。

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コンテンポラリー作品の公演は『Marion Motin / Xie Xin / Crystal Pite』『イリ・キリアン』『Sadeh21』『青髭』。なおオペラ座バレエ団のレパートリー入りするピナ・バウシュの作品は、この『青髭』が4作品目となる。photos:©︎ Opéra national de Paris

2024年はパリ・オリンピック年である。カルチャー・オリンピックのプログラムとして、7月14にはオペラ・バスティーユのステージおよび裏手で、大勢が参加できるバー・レッスンが予定されている。おなじみアンドレイ・クレムが教師だ。また7月20日にはパリ・ガルニエでヒップホップのカンパニーBlack Sheeとパリ・オペラ座の合計80名のダンサーが参加してSaïdo Lehlouheが創作する『Apaches』が踊られる。2023/24はダンサーにも観客にも、なかなか熱いシーズンとなりそうだ。

パリ・オペラ座 シーズン2023/24 プログラム

2023年9月21日 オペラ・ガルニエ
「オープニング・ガラ」
デフィレ、『The Last Call』(マリオン・モタン/新作)、『Horizon』(シェー・シン/新作)、『The Seasons’ Canon』(クリスタル・パイト)

2023年9月23日~10月12日 オペラ・ガルニエ
「Marion Motin / Xie Xin / Crystal Pite」
『The Last Call』(マリオン・モタン)、『Horizon』(シェー・シン)、『The Seasons’ Canon』(クリスタル・パイト)

2023年10月24日~11月10日 オペラ・ガルニエ
「Jerome Robbins」
『En Sol』『In the Night』『The  Concert』

2023年12月8日~12月31日 オペラ・ガルニエ
「Jiri Lylian」
『Stepping Stones』『Gods and Dogs』(レパートリー入り)『Petite Mort』『Sechs Tänze』(レパートリー入り)

2023年12月8日~2024年1月1日  オペラ・バスティーユ
『くるみ割り人形』(ルドルフ・ヌレエフ)

2024年2月7日~3月2日  オペラ・ガルニエ
『Sadeh21』(オハッド・ナハリン/新作)

2024年3月15日~4月1日 オペラ・ガルニエ
『リーズの結婚』(フレデリック・アシュトン)

2024年3月21日~4月24日  オペラ・バスティーユ
『ドン・キホーテ』 (ルドルフ・ヌレエフ)

2024年4月13日~16日 オペラ・ガルニエ
「学校公演」
『旅芸人』(ローラン・プティ)、『Un ballo』(イリ・キリアン)、『白の組曲』(セルジュ・リファール)

2024年5月2日~6月1日 オペラ・ガルニエ
『ジゼル』(ジャン・コラリ、ジュール・ペロ)

2024年6月21日~7月14日 オペラ・バスティーユ
『白鳥の湖』(ルドルフ・ヌレエフ)

2024年6月22日~7月14日 オペラ・ガルニエ
『青髭』(ピナ・バウシュ/ レパートリー入り)

2023年12月3日~6日
バレエ学校デモンストレーション

2024年1月4日~7月21日
招待カンパニー公演 
「ベジャール・バレエ・ローザンヌ」オペラ・ガルニエ

editing: Mariko Omura

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