フランス国内、海外のダンサーを集め、パリで開催される意欲的なガラ。

東京では3年ごとに開催され"ダンス界のオリンピック"と呼ばれるワールド・バレエ・フェスティバルがあり、さらに年間を通じて多くの海外カンパニーの公演や旬のダンサーたちが参加するガラがあるので、ダンスのイベントには事欠かない。パリではコンテンポラリーダンスの小規模な公演は少なくないものの、クラシックやネオクラシック作品がパリ・オペラ座の外で踊られる企画は東京とは比べるとわずかである。

ラ・セーヌ・ミュージカルの『レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス』。

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第4回レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス。左からエステバン・ベルランガ、ミッシェル・ウイレム、ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン、ジル・イゾアール、ルカ・アクリ、ブルーエン・バティストーニ、ポール・マルク、マチュー・ガニオ、オルガ・スミルノヴァ、ヴィクトール・カイセタ、マシュー・ボール、マヤラ・マグリ、リュドミラ・パリエロ。

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Kosma Pavlosが撮影したダンサーの写真が毎回プログラムのカバーを飾る。

そんな中で健闘しているのが、今年の3月3日にパリ近郊の劇場ラ・セーヌ・ミュージカルで4回目の公演が行われた『Les beautés de la danse(レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス)』だろう。アーティスティック・ディレクションをジル・イゾアールが務め、クラシック&ネオクラシック作品で構成するプログラムというのが特徴のガラだ。参加するダンサーは毎回変化があるが、パリからはオペラ座のダンサーが初回から参加していて、2回目からはロシアを去りオランダに移ったオルガ・スミルノヴァが、3回目からは英国ロイヤル・バレエ団のマシュー・ボールが加わり内容もますます充実している。ガラとして知名度も高まったようで、今回の公演はステージ前方席はもちろん、ステージ脇の席および後方の席まで観客が入り、バレエを習っていそうな子どもたちの姿も少なくなかった。

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リュドミラ・パリエロとマチュー・ガニオ『マノン』。photo: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

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ドロテ・ジルベールとユーゴ・マルシャン『オネーギン』。photo: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

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ブルーエン・バティストーニとポール・マルク『グラン・パ・クラシック』。photo: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

パリ・オペラ座からは6名が参加。ドロテ・ジルベール×ユーゴ・マルシャン組は『ラ・バヤデール』と『オネーギン』のパ・ド・ドゥ、リュドミラ・パリエロ×マチュー・ガニオ組はバレエ「Who Cares ?」から『The Man I Love』、そして『マノン』の寝室のパ・ド・ドゥを踊った。『グラン・パ・クラシック』で華やかに第1幕を締めくくったのは、ポール・マルクとブルーエン・バティストーニだ。ロイヤル・バレエ団のマヤラ・マグリ×マシュー・ボール×アクリ瑠嘉の3名が選んだのは『海賊』のパ・ド・トロワ! パリでこれを見られるとは、なんとも豪華である。マシュー・ボールは第2幕では自身が創作した『The Recurrence』をマヤラ・マグリと披露した。シベリウスの同名タイトル曲に乗せて、ふたりの流れるような動きが目に焼きつく作品だ。2回目から参加しているミッシェル・ウィレム。現在はベルリン・バレエ団で踊っているが、かつて所属していたチューリッヒ・バレエ団から2回目の公演同様にエステバン・ベルランガがパートナーだった。どんな動きの中にもフレッシュな清らかさを感じさせるダンサーである。"トリ"と呼ぶのにふさわしい登場だったのは、第2幕の最後に踊ったオルガ・スミルノヴァだろう。ヴィクトール・カイセタをパートナーに『ライモンダ』を踊り、ガラを格調高く締めくくった。なお、今年の夏はラ・セーヌ・ミュージカルからフランスの地方都市に舞台を移して、レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンスの音楽フェスティバルへの参加が検討されているそうだ。

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マヤラ・マグリ、マシュー・ボール、アクリ瑠嘉『海賊』パ・ド・トロワ。photo: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

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マシュー・ボールとマヤラ・マグリ『The Recurrence』。photos: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

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ミッシェル・ウィレムとエステバン・ベルランガ『ロミオとジュリエット』(Christian Spuck版)。photo: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

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オルガ・スミルノオヴァとヴィクトール・カイセタ『ライモンダ』。photo: Francette Levieux/ Les beautés de la danse

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シャンゼリゼ劇場にフランスの4つのカンパニーが集まった。

3月11~12日にモンテーニュ大通りのシャンゼリゼ劇場で2度目の開催があったのは『FrancenDanses(フランソンダンス)』。これはダンサー個人ではなく、フランス国内の複数のバレエカンパニーによる公演という、ありそうでなかった画期的なプログラムだ。今回はパリ・オペラ座バレエ団出身のブルーノ・ブーシェが芸術監督を務めるラン国立歌劇場バレエ団、エクサン・プロヴァンスを拠点にする創作家アンジュラン・プレルジョカージュのバレエ団、ボルドー国立歌劇場バレエ団、そしてパリ・オペラ座バレエ団の4カンパニーによって5作品が踊られた。

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4つのカンパニーのダンサーと芸術監督たち。©️JPRaibaud

ラン国立歌劇場バレエ団が踊ったのはマルタン・シェクス版『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥと、ダヴィッド・ドウソンの『On the nature of daylight』の2つだった。マルタン・シェクスはパリ・オペラ座バレエ団の学校の生徒のために『マザー・グース』を創作した振付家だ。『ジゼル』もそうだが、ポワントによるクリエイションを行うコレオグラファーとして知られている。プレルジョカージュ・バレエ団のダンサー4名が踊ったのはプレルジョカージュ創作の『Gravité』からの抜粋で、ダンサーたちの身体能力の高さに大きな拍手が送られた。ボルドー国立歌劇場バレエ団はソル・レオン&ポール・ライトフットの『Softly, as I Leave You』。心の痛みを身体で表現する男女のデュオはアルヴォ・ペルトとバッハの音楽とともに感動を呼ぶ強い作品である。公演の締めくくりは、パリ・オペラ座バレエ団による『Who Cares?』。ガラとはいえステージ上にオペラ・ガルニエで踊られたのと同じセットが現れるや、客席からは喜びと驚きの声が上がった。踊ったのはドロテ・ジルベール、オニール八菜、ヴァランティーヌ・コラサント、マチュー・ガニオ。このプログラムでは『レ・ボーテ・ドゥ・ラ・ダンス』のような超古典作品は踊られず、コンテンポラリーからネオクラシック作品までと現代のダンスの幅広さを見せ、また各カンパニーの個性も見えておもしろい企画だった。

『フランソンダンス』の初回は2020年10月に開催され、パリ・オペラ座からはリュドミラ・パリエロとユーゴ・マルシャンが参加し、『トロワ・グノシエンヌ』を踊った。3回目についてはいまのところ何も決まっていないということだが、実現を期待したい。

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ラン国立歌劇場バレエ団。マルタン・シェクスの『ジゼル』第2幕より。photo: Agathe Poupouney

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ボルドー国立歌劇場バレエ団。レオン・ライトフットの『Softely,as  I Leave You』。photo: Pierre Planchenault

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左: プレルジョカージュ・バレエ団。アンジュラン・プレルジョカージュの『Gravité』より。 右: パリ・オペラ座バレエ団。ジョージ・バランシンの『Who Cares?』を踊るドロテ・ジルベール。photo: gathe Poupeney/ OnP

editing: Mariko Omura

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