未来のコレオグラファー、未来のエトワールを見いだすふたつの公演。

10名が参加して『パリ・オペラ座のダンサー コレオグラファー』

パリ・オペラ座の現役ダンサーが振付をし、その作品を現役ダンサーが踊るという公演「ダンサー コレオグラファー」は3代前のブリジット・ルフェーヴル芸術監督時代に何度か開催された。その最後の開催は2011年の1月で、もう10年以上も前のことだ。今シーズン、4月18~20日にジョゼ・マルティネス芸術監督が当時と同じ会場であるオペラ・バスティーユの地下のアンフィテアートルを使って公演「オペラ座のダンサー コレオグラファー」を復活させた。オペラ・ガルニエで『リーズの結婚』、オペラ・バスティーユで『ドン・キホーテ』が踊られていた時期で、これは第3のグループのダンサーたちのステージと言っていいだろう。主にコンテンポラリー作品に配役されることが多いコール・ド・バレエのダンサーたちが創作者であり、創作ダンサーだった。

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写真は今回作品を創作した10名のダンサーたち。多くはコンテンポラリー作品でおなじみの顔ぶれだ。

創作に参加したのはイヴォン・ドゥモル(コリフェ)、マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ(カドリーユ)、ジュリアン・ギユマール(カドリーユ)、フロリモン・ロリユゥ(スジェ)、ルー・マルコー=ドゥルアール(カドリーユ)&タケル・コスト(カドリーユ)、フロラン・メラック(プルミエ・ダンスール)、キャロリーヌ・オスモン(スジェ)、マクシム・トマ(コリフェ)の9組。彼らによる9作品は2公演に分けられ、4月18日がAプロ、4月19日がBプロ、そして4月20日はマチネにA、ソワレにBが踊られた。イヴォン・ドゥモルが9名のダンサーに振り付けた『Folamour』が、AとBの最後に踊られるというプログラム構成。彼がジェニファー・ヴィゾッキとともに開催するガラ『incidence choregraphique』では、彼が創作した作品がよく踊られている。今回の9組の中で彼は振付経験が豊かなコレオグラファーだろう。『Folamour』はダンサー各人に見せ場が与えられ、彼らはアレックス・エバートの歌声に乗せてオレンジ色のコスチュームでエネルギッシュな踊りを見せた。ポジティブな印象を残す完成度の高い作品だ。

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イヴォン・ドゥモル創作『Folamour』。photography: Julien Benhamou/ OnP

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『Folamour』のリハーサルより。タケル・コスト(左)とマリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ。photography: Julien Benhamou/ OnP

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コンテンポラリー作品が多い中、ショパンの3作品を使いジェローム・ロビンスの作品を思わせる3つのパ・ド・ドゥからなる『L'Abandon』を創作したのはフロリモン・ロリユゥ。「完全なる信頼は愛の中にある」というルイ・アラゴンの言葉に導かれ、彼はルチアナ・サジオロとアレクサンダー・マリアノウスキーというクラシックに強いダンサーに作品を振り付けた。これはBプログラムの最初の作品としてプログラムされていたが、初日の4月18日のAプロで急遽踊られることに。予定されていたフロラン・メラックが彼とクレマンス・グロスに創作した『Moonlight』が、メラックの体調不良のためキャンセルとなったからで、『L'Abandon』の3つ目のパ・ド・ドゥだけがその代わりに踊られたのだ。突然だったせいだろう、あいにくと、ふたりの呼吸がぴったりと合うというところまで準備がされていなかった。しかし翌日4月19日のBプロで、彼らは流れるような動きも、複雑なポルテも観る者の目に快適な3つのパ・ド・ドゥを披露。フロリモン、そしてアレクサンダーとルチアナがどれほどしっかりと稽古をし、この晩の舞台に臨んだのかと裏の仕事に思いを馳せさせるパフォーマンスだった。

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マキシム・トマ創作『La langue des oiseaux』では料理人役ローレーヌ・レヴィ(左)と庭師役アデル・ベレムが芸達者ぶりを発揮した。後方でピアノを弾くのはマキシム・トマ本人で、クラシック・バレエの稽古でおなじみのフレーズとテクニックをベースにした作品だ。photography: Julien Benhamou/ OnP

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ジュリアン・ギユマール創作『Absence(s)』はコンセプチュアルな作品。左からロレーヌ・レヴィ、キャロリーヌ・オスモン、アデル・ベレム。photography: Julien Benhamou/ OnP

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キャロリーヌ・オスモン創作『Mepak』のリハーサルより。左から、マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ、キャロリーヌ・オスモン、タケル・コスト、ルー・マルコー=ドゥルアール

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創作の多くは、たとえばアラン・ルシアン・オイエンの『Cri de Coeur』のような彼らがオペラ座で過去2~3シーズン中に踊ったどちらかというと演劇的コンテンポラリー作品にインスパイアを得ている印象があった。マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセの『Une porte』はカップルがドアを出入りするごとに異なる感情、状況を踊るデュオ作品で、照明の使い方もうまく、再び見てみたいと思わせる。踊ったのは彼女本人とルー・マルコー=ドゥルアール。彼はAとBの2つの公演でパワフルに4作品を踊り、かつタケル・コストと創作もしている活躍ぶり。今シーズンはイリ・キリアンの『Gods and Dogs』、オハッド・ナハリンの『Sadeh21』で観客の目を楽しませた彼だが、ここでもまるで流れが止まらないスライムのように柔軟に身体を操って彼らしさを爆発させていた。 次回の公演「ダンサー コレオグラファー」はいつだろうか。次はどんな新しい才能が登場するのだろう。

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マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ創作『La porte』より。photography: Julien Benhamou/ OnP

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アパルトマン内のセットであるイスとテーブル、ランプを効果的に振付に取り入れていた。photography: Julien Benhamou/ OnP

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オペラ座バレエ学校の公演に未来のエトワールを見る。

「ダンサー コレオグラファー」の公演に先立つ4月13、15、16日に、オペラ・ガルニエで学校公演が開催された。ここで踊った第1ディヴィジョンの生徒たちの中には7月に行われる内部入団試験あるいは外部入団試験の結果、9月からカンパニーの団員となる生徒もいれば、新たに組織されるジュニア・バレエに採用される18名に含まれる生徒もいるに違いない。

学校公演にエリザベット・プラテル校長が選んだのはローラン・プティの『旅芸人』、イリ・キリアンの『ウン・バロ』、そしてセルジュ・リファールの『白の組曲』というタイプの異なる3作品。これは日頃の学校での指導の成果を見せるのに素晴らしい選択だった。『旅芸人』はこの世界特有のメランコリーに満ちた作品で、踊りだけでなく芸術面での仕事もダンサーに要される。『ウン・バロ』を踊る5組の男女生徒たちはパ・ド・ドゥの技術とセンスがなければならず。最後の『白の組曲』はカンパニーのレパートリーでもあり、ダンサーにクラシックバレエの技量を問う作品。カンパニーではパリ・ガルニエで2009年2月に踊られたのが最後で、その後ビアリッツとアメリカツアーで踊られたきり。いまのソリストたちの公演に期待したものだ。これは『エチュード』同様にクラシックのテクニックに優れたエトワールやプルミエ・ダンスールたちが配役される難易度の高い作品だが、それに生徒たちは今回挑戦したのである。観客から拍手が惜しみなく送られていたのももっともだろう。来シーズン、この中から誰が入団しカンパニーで踊ることになるのか......。7月のサスペンスだ。

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さまざまなキャラクターが演じ、踊る『旅芸人』。photography: Svetlana Loboff / Onp

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昨年末オペラ・ガルニエで踊られた『小さな死』をどことなく思い出させる『Un ballo』。photography: Svetlana Loboff/ OnP

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『白の組曲』。photography: Svetlana Loboff/ OnP

editing: Mariko Omura

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