パリ・オペラ座のPOPで、2月の来日ツアーと『マイヤリング』の舞台裏ドキュメンタリーを視聴しよう。

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2024年2月、パリ・オペラ座バレエ団が日本にやってきた。その実現にいたるまでの7エピソードのドキュメンタリーがPOPで9月から始まった。

「POP(Paris Opéra Play)」ではバレエファンのためのプログラムが充実し続けている。これまでためらっていた人も、1カ月契約(9.9ユーロ、28歳以下は4.95ユーロ)あるいは1年契約(99ユーロ)をする時が来たようだ。

ドキュメンタリー

新シーズンの目玉はなんといっても7カ月間、毎月1エピソードずつアップされる英訳付きのドキュメンタリー『Danser à Tokyo Les secrets d'une tournée(東京で踊る。ツアーの秘密』だ。タイトルが物語るように、今年2月に行われた『白鳥の湖』と『マノン』のふたつの演目での来日ツアーをめぐるドキュメンタリーである。監督はジャン・リュック・ペレアール。登場するのは、99名のコール・ド・バレエのダンサー、13名のエトワールという豪華さだ。初回の『誰が日本へ?』はツアーの出発前の映像がメインで、2023年に入団したリザ・プティとルチアナ・サジオロが案内役を務めている。ジョゼによるダンサーたちへのツアー説明会やスタッフミーティングなどの合間には、日本での舞台の映像の挿入も。『マノン』についていえばオペラ・ガルニエ用に作られた舞台装置を、海外に輸送でき、かつ東京文化会館のフラットなステージで使えるものにするための大掛かりな作業や、ダンサーごとの多数のコスチュームと小物などの荷などといった裏方の作業が多く語られる。日本での公演チケットが高価なのも納得させられてしまうような内容だ。また『マノン』の主役だったふたりのエトワール、ミリアム・ウルド=ブラームとマチュー・ガニオにとってこれが最後のオペラ座来日ツアーとなることにも、このシリーズはスポットを当てている。10月から視聴可能となったエピソード2はリハーサル光景を中心に展開。カメラは『白鳥の湖』と『マノン』を行ったり来たり、でなかなか目まぐるしいけれどガルニエのリハーサルスタジオの当時の雰囲気が伝わってくるよう。この2回目は出発前にとんでもない事実が発覚するところで終わる。その続きは11月に!

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左: 『白鳥の湖』©️Julien Benhamou/ OnP 右:『マノン』。©️ Svetlana Loboff/ OnP

そして10月。『Danser à Tokyo』のエピソード2に加えてアップされたのは、『マイヤリングの舞台裏』だ。2022年10月にオペラ座のレパートリー入りしたケネス・マクミランによるこの作品。リュドミラ・パリエロとマチュー・ガニオの舞台リハーサルにいたるまでの稽古を追ったアンヌ=ソレン・ドゥーゲによる33分のドキュメンタリーである。彼らを指導するのはマクミラン作品のリハーサルコーチ、カール・バーネット。惜しくもこの春に亡くなってしまった彼の語りや、コスチューム、舞台装置、ヘアウィッグなどの話題も盛り込まれ、さまざまな角度から作品の魅力を伝えている。オペラ座でのこのドラマチックバレエの初演を前に、マチューとリュドミラが過ごした強烈な稽古時間を視聴者はともに経験できる仕上がりだ。

いまも引き続き見られるドキュメンタリーのひとつに、ピエール・ラコットの最後の創作となった『赤と黒』の創作の裏側を見せる25分の作品がある。ラコットと当時の芸術監督オーレリー・デュポンの会話を中心に、ステージ、衣装のフィッティング、セット製作など創作の工程の映像で展開する。こちらも英訳付き。なお、ユーゴ・マルシャンとドロテ・ジルベール主演によるバレエ全幕も視聴できる。

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リュドミラ・パリエロとマチュー・ガニオの『マイヤリング』。10月30日から始まる再演ではリュドミラが怪我で降板したため、レオノール・ボラックとマチュー・ガニオが組む。©️Ann Ray/ OnP

パリ・オペラ座の活動のひとつである南米の仏領ギアナでの文化的協力について、日本までほどんど情報が伝わってこないだろう。その活動を追ったドキュメンタリー『ギアナのオペラ座』は毎回22分の5話ものである。2022年11月の活動スタートが第1話で、ステファン・ビュリヨン、ローラ・エケ、マチュー・コンタ、マリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ、タケル・コストの6名がクラシック作品、ネオクラシック作品、コンテンポラリー作品をギアナの子どもたちを前に披露し、指導し......。第2話「出会い」、第3話「誰もがダンサー」、第4話「声で」と続く。10月にアップされた第5話「オペラ座の見習い」で最終回を迎えた。

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ドロテ・ジルベールやギヨーム・ディオップがステージを披露した『ギアナのオペラ座』第3話より。 ©Julien Mignot - Cheeese - OnP

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ライブ

毎回、POPではオペラとバレエのライブを流している。今シーズンのバレエのライブは12月17日で、演目はピエール・ラコットの『パキータ』。この作品は2015年5月に踊られて以来の久々の上演となる。発表されている配役によると、主役を踊るのはヴァランティーヌ・コラサントとギヨーム・ディオップのふたりだ。まだイニーゴ役については発表されていない。最後の公演でこの役を踊ったのはフランソワ・アリュ、セバスチャン・ベルトー、オードリック・ブザール、マルク・モロー。このうち3名はバレエ団を去っているし、マルクはエトワールとなり......。現役ダンサーの誰がイニーゴ役に選ばれるか気になるところでは? パ・ド・トロワや3カップルによるグラン・パなどドゥミ・ソリストたちの活躍が見られる楽しみもある。フランスと日本の8時間の時差はライブ上映のネックだけれど、その後一定期間リプレイで見られるのでご安心を。

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12月17日は『パキータ』のライブ。主演はヴァランティーヌ・コラサントとギヨーム・ディオップが予定されている。

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マスタークラス

『ジゼル』に次ぐ新しいマスタークラスもオンライン配信がスタートした。2023年の学校公演で『ライモンダ』が踊られた際のもので、女性ダンサー3名のライモンダ役のコーチは学校長の元エトワール、エリザベット・プラテル、そして男性ダンサー3名のアブデラム役のコーチはヌレエフ作品に不可欠だった元エトワールのシャルル・ジュードである。往年のバレエファンには懐かしい名前だ。細部にわたる丁寧な指導は学校の生徒に限らず、プロのバレエダンサーも多くを学べるものだろう。

バレエ

9月に新たに視聴できるバレエのプログラムに加わったのは2023年2月に3回の公演があった『パトリック・デュポンへのオマージュ』だ。オペラ・ガルニエでの公演そのままに、最初にパトリック・デュポンの子ども時代からのバレエ人生を語る映像からスタート。この公演で踊られたバレエは3作品あり、まずヴァランティーヌ・コラサント×ポール・マルク×ギヨーム・ディオップによるハロルド・ランダー『エチュード』、そしてジェルマン・ルーヴェ×ユーゴ・マルシャンによるモーリス・ベジャール『さすらう若者の歌』、締めくくりがマルク・モローがニジンスキー役を踊るジョン・ノイマイヤー『Vaslaw』。自宅でこんな豪華なキャストによる公演を1時間30分楽しめるのは、なかなかの贅沢では?

POPで視聴できるバレエ作品はとても豊富。前回のライブ公演だったオニール八菜とジェルマン・ルーヴェによるカロリーヌ・カールソンの『シーニュ』、昨年のオペラ・ガルニエの年末公演『イリ・キリアン』の見ごたえたっぷりな4作品、パラリンピック開会式で振り付けをしたアレクサンダー・エクマンの創作で今年年末に再演される『プレイ』......さらに学校の生徒たちがガルニエ宮で踊ったマルタン・シェクス創作の『マザー・グース』まで。パリまで簡単に来ることのできないパリ・オペラ座バレエファンにとって、POP は夢の時間をもたらしてくれるストリーミング・プラットフォームと言っていいだろう。

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左: 『パトリック・デュポンへのオマージュ』から、ハロルド・ランダーの『エチュード』を踊るギヨーム・ディオップ。 右: マルク・モローが踊った『Vaslaw』。右はロクサーヌ・ストヤノフとフロラン・メラック。©️yonathan kellerman/ OnP
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左: イリ・キリアンの『小さな死』より。ダニエル・ストークとアリス・カトネ。 右:イリ・キリアンの『Sechs Tänze』ではコール・ド・バレエのダンサーたちが大活躍した。©️Ann Ray/ OnP
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マルタン・シェクスがオペラ座のバレエ学校のために創作した『マザー・グース』より。コスチュームも舞台芸術も楽しいものだった。©️Svetlana Loboff/ OnP

editing: Mariko Omura

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