パリ・オペラ座のシーズン25/26。マルティネス芸術監督が100%手がけた初のプログラム。
パリとバレエとオペラ座と 2025.04.07
4月2日、パリ・オペラ座の来シーズン2025/26のプログラムのプレス発表が行われた。会場に選ばれたのは、150周年を祝うガルニエ宮内のフォワイエ・ドゥ・ラ・ダンス。ダンサーたちがステージに上がる直前にウォーミングアップを行う場所で、日頃は部外者にはクローズされているだけに発表会参加者には貴重な体験となった。さて肝心の来季のプログラムについてだが、数日前から、発表日に向けてのカウントダウンを語るオペラ座のインスタグラムに流れる映像は『ル・パルク』だったので、この作品が含まれていることは容易に想像できるものの、そのほかはどのような作品なのか?と。これは発表当日までの大きなサスペンス!だったのだが、興味をよりそそることになったのは、これまでのプログラムには前任のオーレリー・デュポンが進めていたプロジェクトが含まれていたのだが、この2025/26からは、2022年12月に芸術監督に就任したジョゼ・マルティネスによる100パーセントのプログラムだからである。なお、このシーズンのメインテーマはLiberté(自由)。


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まずは発表されなかったことから始めよう。エトワールのドロテ・ジルベールはこのシーズンの始まりに42歳を迎えるので、シーズン25/26に彼女のアデュー公演が行われると思いきや、理由は明かされなかったが次シーズン以降に延期されたとのことだ。本人がインスタグラムでなんらかの情報をあげるかもしれないので、詳細はそれを待つことにしよう。
新シーズンは2024年秋に結成されたジュニア・バレエの活躍への期待が感じられる。彼らはシーズン開幕ガラではレパートリー入りする『Requiem for a Rose』を踊り、今年11月から来年5月にかけて国内外26カ所でツアーを行う。演目はクラシック作品、ネオクラシック作品、コンテンポラリー作品を組み合わせたプログラム。『Requiem for a Rose』も含まれている。また学校の生徒たちについては低学年が2026年6月に行われる公演『ラ・バヤデール』で舞台に立ち、上級学年の生徒たちは今年7月18~19日に東京で開催される公演「バレエ・アステラス」に招待参加するそうだ。
バレエ団については、誰もが気になる次シーズンのコンクールはどうなるのか、という質問が会場から出た。これからもカドリーユからコリフェ以外のコール・ド・バレエについては任命方式かどうか。マルティネス芸術監督によるとコール・ド・バレエのすべてのダンサーたちにおける正当な昇級のためのベストの方法を追求し続けているそうで、コンクールの行方は6月15日に決定がなされるそうだ。
では発表された来シーズンに踊られるバレエ作品を以下に。オペラも含め、このシーズンのメインテーマはLiberté(自由)である。マルティネス芸術監督がバレエのプログラムに新たに導入したのは、ミックス・プロにタイトルをつけたことだ。これまでミックス・プロはひとりの振付家の名前だったり、あるいは複数の振付家の名前を並べていただけでミックスの趣旨については触れられていなかったので新趣向である。この方法だと新しい振付家を招くことや、作品のレパートリーを増やすことによって、より幅広いチョイスを観客に提供できるという。シーズン中、過去のレパートリーからは9作品、創作は4作品(+ジュニア・バレエ団用の1作)、レパートリー入りは5作品だ。マルティネス芸術監督が復活させたオペラ・バスティーユのアンフィテアートルで行われる公開リハーサルは有料(10ユーロ)にも関わらず好評で、来期には8演目が予定されている。
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シーズン2025~26の公演プログラム
『Gala(シーズン開幕ガラ)』
2025年9月27日/オペラ・ガルニエ
「デフィレ」
レパートリー入り『Requiem for a Rose』
振付:Annabelle López Ochoa
音楽: Franz Schuberta
『Giselle (ジゼル)』
振付:Jean Coralli
音楽:Jules Perrot

『Giselle(ジゼル)』
2025年9月28日~10月31日/オペラ・ガルニエ
振付:Jean Coralli
音楽:Jules Perrot
23公演のうち、9月30日と10月2日はデフィレでスタートする。

ミックス・プロ『Racines(ルーツ)』
2025年10月6日~11月10日/オペラ・バスティーユ
『Thème et variations』
振付:George Balanchine
音楽:Piotr Ilyitch Tchaïkovski
レパートリー入り『Rhapsodies』
振付:Mthuthuzeli November
音楽:George Gershwin
レパートリー入り『Corybantic Games』
振付:Christopher Wheeldon
音楽:Leonard Bernstein
バランシンは『Thème et variations』で彼を形成したロシアン・アカデミック・スタイルにオマージュを捧げた。『Rhapsodie』はケープタウン出身のMthuthuzeli Novemberが、南アフリカと都会のエネルギーを盛り込んだ作品だ。3番目のクリストファー・ウィールドンの『Corybantic Games』はレナード・バーンスタインの音楽に乗せ、古代ギリシャの司祭たちのどんちゃん騒ぎにインスパイアされて彼が2018年にクリエイトしたもの。彼にとってオペラ座バレエ団のレパートリー入り5番目の作品となる。
ミックスプロ『Contrastes(コントラスト)』
2025年12月1日~31日/オペラ・ガルニエ
『O złożony/O composite』
振付:Trisha Brown
音楽:Laurie Anderson
レパートリー入り『If you couldn't see me』
振付:Trisha Brown
音楽:Roberto Raushenberg
レパートリー入り『Anima animus』
振付:David Dawson
音楽:Ezio Boss
創作『Drift Wood』
振付:Imre & Marne van Opstal
音楽:Amos Ben-Tal
『If you couldn't see me』(1994年)はロバート・ラウシェンバーグが音楽、舞台美術、コスチューム、照明を担当。トリシャ・ブラウンは彼とは『Glacial Decoy』(1979年)でコラボレーションを行っている。『Drift Wood』はオランダの振付家兄妹のImbreとMarneによるパリ・オペラ座バレエ団のための初創作だ。『Anima animus』はダヴィッド・ドーソンがマスキュラン/フェミニンを遊ぶ。この作品についての彼とマルティネス芸術監督の対話がビデオ化されている。
『Notre-Dame de Paris(ノートル・ダム・ドゥ・パリ)』
2025年12月6日~31日/オペラ・バスティーユ
振付:Roland Petit
音楽:Maurice Jarre
シーズン2020/21に予定されていたものの新型コロナ感染症防止のための劇場封鎖で全公演がキャンセルとなったが、無観客での公演が映像に残されている。その前は2014年7月。この時カジモド役を踊ったステファン・ビュリオン、ニコラ・ル・リッシュ、カール・パケットは全員引退。来シーズン、誰がカジモドを踊るのだろう???

『Démonstrations de l'École de Danse(バレエ学校デモンストレーション)』
2025年12月6日~14日/オペラ・ガルニエ
『Le Parc(ル・パルク)』
2026年2月3日~25日/オペラ・ガルニエ
振付:Angelin Preljocaj
音楽:Wolfgang Amadeus Mozart
前回はシーズン2019/20に公演が予定されていたがストで公演は中止に。その翌シーズン2020/21は新型コロナ感染症防止策中の劇場封鎖ゆえに、3月9~15日の公演は観客なしで行われた。ガラでは3つ目の"解放のパ・ド・ドゥ(フライング・キス)"が踊られるけれど、ここにいたるまでの男女の誘惑の駆け引きの妙が見られる全幕は一度は見ておきたいものだ。

ミックスプロ『Empreintes(痕跡)』
2026年3月11日~28日/オペラ・ガルニエ
創作「タイトル未定」
振付:Morgann Runacre-Temple, Jessica Wright
音楽:Mikael Karls
創作『Étude』
振付:Marcos Morau
音楽:Gustave Rundman
ビデオがダンスの創作に何をもたらすことができるのか、をテーマに創作される2作品からなるソワレだ。
『Roméo et Juliette(ロミオとジュリエット)』
2026年4月2日~5月12日/オペラ・バスティーユ
振付:Rudolf Noureev
音楽:Sergueï Procofiev
5年前の『ロミオとジュリエット』では、当時まだカドリーユだったギヨーム・ディオップがジェルマン・ルーヴェの降板により、レオノール・ボラックを相手に初役でロミオを好演した。今回はどのようなサプライズが見られるだろうか。

『Spectacle de l'École de Danse(バレエ学校公演)』
2026年4月15日~19日/オペラ・ガルニエ
『祭りの夜』
振付:Léo Staats
音楽:Léo Delibes
創作『星の王子さま』
振付:Clairemarie Osta
音楽:Simon Bång
『ヨンダリング』
振付:John Neumeier
音楽:Stephen Collins Foster
2012年に『マノン』でアデュー公演を行い、パリ・オペラ座を去ったクレールマリ・オスタが、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによるおなじみの『星の王子さま』を学校の生徒たちのために創作する。楽しみに待とう。
『La Dame aux camélias(椿姫)』
2026年5月5日~23日/オペラ・ガルニエ
振付:John Neumeier
音楽:Frederic Chopin
最後にオペラ・ガルニエで踊られたのは2018年12月。マルグリット役にはエレオノーラ・アバニャート、アマンディーヌ・アルビッソン、レオノール・ボラック、ローラ・エケが、アルマン・デュヴァル役にはオードリック・ブザール、ステファン・ブリオン、マチュー・ガニオ、フロリアン・マニュネが配役されていた。今回、新世代エトワールたちの活躍が見られることだろう。

『La Bayadère(ラ・バヤデール)』
2026年6月17日~7月14日/オペラ・バスティーユ
振付:Rudolf Noureev
音楽:Ludwig Minkus
最後に踊られたのは、2022年4月3日から5月6日と遠くない。この時の公演と同じ配役に新たな配役が加えられることだろう。

ミックスプロ『Vibrations(バイブレーション)』
2026年6月27日~7月14日/オペラ・ガルニエ
創作『Dreams This Way』
振付:Micaela Taylor
音楽:Tru
レパートリー入り『Solo for Two』
振付:Mats Ek
音楽:Arvo Pärt
『The Seasons' Canon』
振付:Crystal Pite
音楽:Max Richter

Opéra de Paris
シーズン2025/26のチケット予約と販売
会員予約:4月22日より(シーズン2024/25の会員は先行で4月5日より)
作品ごとのチケット予約:6月3日 12:00より順次
詳細はhttps://www.operadeparis.fr/にて
editing: Mariko Omura