欧州最古の歴史を湛えるホテルは、
今もラインの流れと共に輝いていました
Grand Hotel Les Trois Rois
〜バーゼル/スイス〜

バーゼルはスイス最西北部に位置し、ドイツやフランスと国境を接し、歴史的にも興味深い逸話が沢山残されています。スイス最古のバーゼル大学や、世界最古の公共美術館「バーゼル市立美術館」(1661年~)など多くの美術館もあり、スイスでは文化や芸術の中心でもあります。しかし大都会と思いきや雑踏はなく、しっとりと静かで美しい街。何よりも印象的なのは、街の中心をライン川が滔々と流れ、古くからこの川によって水運業が発展し、街が発展した要であったことが感じられます。

 「グランド・ホテル・トロワ・ロワ」(仏語で「3人の王様)の意味)は、そのライン川沿いに建つ5ツ星最高級ホテル。因みに、ホテルの名にある3人の王とは、Balthasar(バルタザール)、Gasper(ガスパール)、Melchior(メルキオール)のことを指し、3人は「東方の3賢者」「東方の3博士」とも言われ、新約聖書の「マタイによる福音書」に登場しているといいます。また、このホテルには、かつて客としてナポレオン・ボナパルト、エリザベス2世、パブロ・ピカソ、トーマス・マンなど名だたる人々が逗留しました。ナポレオンは、1798年、今で言うビジネスランチに立ち寄ったといいますし、ピカソは1937年に長期で滞在したことが記されています。

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(左)ホテル前景、エントランス。(右)エントラスの上に飾られた「3人の王様」。

 ホテルの方がそっと教えてくれました。「ナポレオンが昼食でお供を連れてやってきたとき、多くのスタッフが彼に近づきたくて即席のウェイターになり代わり、彼に料理を運びたがったのです」という、その時の場面を思うと、今のホテルマンと余り変わらぬ様子だったに違いありません。

 そんなホテルが初めてドアを開けたのは1681年のこと。その後、1844年2月16日にはすべて建て替えられ、「Hotel Trois Rois」として新たにオープン。次々と経営者が変わる中、世界的な名声を得るホテルに成長していきました。その後、ホテルは何度かリニューアルを繰り返し、また激動の歴史の中でオーナーも何度か変わり、2006年3月20日、新たに大がかりな改装が行われ、エレガントな高級ホテルとして現在に至っています。

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(左)シンプルだが重みのあるレセプション。(右)レセプション・エリアから見上げる自然光の入る吹き抜け天井。

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(左)クラシカルなロビーラウンジは左手にレストラン、右手にバーが隣接。(右)3階のエレベータホールはアールデコの装飾。

 館内には、ミシュラン2ッ星、及び、ゴーミヨ18点を獲得している地中海料理レストラン「Le Cheval Blanc」があります。シェフは2011年に、スイス・ゴーミヨでは「今年の料理人」にも選ばれた達人。繊細で高度な技術を持つシェフの料理は高い評価を得ています。残念ながら、私の泊まった日は週末だったため、テーブルは予約で一杯でした。他に、フレンチの「Brasserie」,イタリアンの「Chez Donati」、「Bar / Lounge」が揃っています。
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これがミシュラン2ツ星レストラン「Le Cheval Blanc」。

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(左)朝食も摂れるブラッスリー、川沿いに近く美しい風景が望める。(右)ブラッスリーでのスイスらしい朝食ブッフェ

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ボリュームのある朝食はブッフェならでは。

 スィートルーム「Suite Les trois Rois」では、入り口に'3人の王'の像が置かれ、その部屋には屋上テラスもあり、ジャグジーやサウナが設置され、ライン川や旧市街を見ながら楽しめます。広さは250㎡もあり、なんとも贅沢な部屋造りです。私の部屋「Chambre Junior」(22㎡)は余り広くはなかったですが、窓を開ければ直ぐ前がライン川。行き交う船を眺められる情緒たっぷりの部屋でした。

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ライン川に面したホテルの全景、こちら側が'ラインビュー'の部屋。

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宿泊した客室もアールデコのインテリアに改装。


Grand Hotel Trois Rois
Blumenrain 8, CH-4001 Basel Switzerland
Tel: +41-61-260-5050 Fax: +411-61-260-5060
http://www.lestroisrois.com/Grand-Hotel-Les-Trois-Rois.377+M5e34df5a01a.0.html
http://www.troisrois.net/index.html
部屋数:101室
料金:季節により大きな違い、要問い合わせ
施設:レストラン、ブラッスリー、ラウンジ、バー、
ライブラリィ、ボールルーム、他、
日本での連絡先:各旅行代理店、またはインター-ネット 

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

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