アマンヤンユン
上海郊外/中国
森と伝統家屋を擁する最新のアマンが、上海郊外に誕生。
ホテルへBon Voyage 2018.06.07
2018年1月、上海の郊外に現在最も新しいアマン「アマンヤンユン」がソフトオープンし、4月28日にグランドオープンを迎えました。開発目覚ましい中国上海の郊外に誕生した、中国4軒目となるアマンです。
10ヘクタール、3万坪以上もの再開発された敷地には、この1月に訪れた時には冬枯れで葉を落としてはいましたが、撫州出身の実業家、マ・ダードンによって移植された1万本以上のクスノキが、未来の森を彷彿とさせていました。
美しいクスノキが茂る撫州の森とヴィラの原型、木々やヴィラを上海郊外に移し復元させたのが現在のアマンヤンユン。
“森を移す”と願った壮大なストーリーは、上海から700km近く離れたマ・ダードンの故郷、江西省撫州市郊外の小さな集落付近に始まったのです。2002年、11世紀から続く静かな集落に突然ダム計画がもちあがったのを機に、マ・ダードンは、自分がその貴重な木の茂る森や、周辺の民家を守ろうと決心したのです。その地域には清・明朝時代の古民家が点在していました。さらに村には人々が精神的な糧として崇めてきた聖なるクスノキの巨樹があり、先人から受け継がれてきた樹は「皇帝の樹」と呼ばれ、人々に崇められてきました。そこで、マ・ダードンの“森を移す”事業が始まったのです。
マ・ダードンが入手した上海郊外の土地には、木々と一緒に、故郷の地から無作為に選んだ明・清王朝時代の伝統家屋50棟が解体され運ばれました。そして移築された美しい建物が、いまのアマンヤンユンの原型となっています。
細部まで移築され、より華麗に復元された現在のアンティークヴィラ「楠書房」の全景。
ホテル棟のレセプション内のラウンジスペース。芸術的な技巧が凝らされ歴史と現代を感じる高級感溢れる空間。
現在、アマンヤンユンは、26棟の復元されたアンティークヴィラやパビリオンと、新たに建てられた客室とで構成されています。こうして2002年から徐々に始まった移植は、全部で10,502本のクスノキ、さらにほかの木々1,070本が、700kmもの距離をトラックで運ばれた壮大な計画でした。
花が咲き乱れる春の中庭の様子。建物の中央はアウトドア・スイミングプール。インドアのプールもある。
アマンヤンユンの敷地の中央部を占める中庭には、中心に1本の巨樹が立ち、それこそがまさに、“森を移す”きっかけとなったクスノキの巨樹「皇帝の樹」でした。高さは約20m、重さ80トンもあるといい、現地住民によれば樹齢は1,800年、公式にアマンは1,000年と謳っています。アマンヤンユンには、こうしたさまざまな物語が秘められていますが、知の殿堂として復元された「楠書房」も存在感を誇っています。書房内では、書道、香道、伝統音楽、絵画、刷り絵、瞑想など、それぞれ師とともに学べる中国の伝統体験が提供されています。
それにしても、2009年に人を介して当時の元アマン会長であったエイドリアン・ゼッカと出会ったことで、マ・ダードンの運命が変わりました。意気投合し、互いの求めることが一致したおかげでアマンヤンユンの誕生となったのです。
新築の客室、ミン・コートヤードスィートの内部。
客室はアマンをよく知るケリー・ヒルの建築であり、アンティークヴィラ13棟、スイート24室、アマンレジデンス13棟が揃っています。レストランは中国料理、日本料理、そして世界共通でアマンが今年から打ち出したイタリア料理レストラン「ARVA」が揃い、ウェルネスゾーンだけでも2840㎡もあり、アマンの中でも世界一の広さを誇るリゾートとなりました。
アンティークヴィラのリビングルーム。昔ながらの美しいヴィラが復元されている中、新しい快適さを求める家具もオリジナル。
同じくアンティークヴィラのリビングルーム。
2ベッドルーム アンティークパビリオンのマスターベッドルーム。
スパで使われるプロダクツいろいろ。伝統療法を取り入れたトリートメントやリラクゼーション、など敷地面積2865㎡、10室のトリートメントルームを含むウェルネス施設が充実。
6161 Yuanjiang Road, Minhang District,
Shanghai, China 201111
Tel: +86 21 8011 9999
www.aman.com
客室数:アンティークヴィラ13棟、スィート24室、アマンレジデンス13棟
料金:スタンダードルーム1泊6,000元~、
ヴィラ1泊27,000元~
アクセス:上海浦東空港から車で約1時間
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Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com