松本十帖/松本本箱 ~浅間温泉・長野~ 城下町に歴史と未来のミクスチャー、 しゃれた地域再生プロジェクト始動!

城下町松本の町には、国宝・松本城が堂々と鎮座し、日本初の学校として知られる国宝・旧開智学校も残されています。また、松本は“セイジオザワ”の音楽フェスティバル開催でも知られ、城下町らしい老舗店舗や信州蕎麦の名店などが点在し、歴史薫る信州の中心地です。そんな古都の玄関口であるJR松本駅から車で20分たらずの場所に、日本書紀にも登場し、開湯1300年以上と伝わる名湯“浅間温泉”があります。

2/本箱外観_32I0139.JPG
ホテル「松本本箱」の入り口と、向かって左に隣接するなまこ壁の建物はシードルの醸造所。

浅間温泉には、江戸時代には松本藩の“御殿湯”が置かれたといい、いまに伝わる歴史的逸話も多く残ります。温泉街が華やかに繁栄する明治以降になると、若山牧水、与謝野晶子など文人も訪れたと言われる名湯です。そんな浅間温泉で最大級の規模を誇り、温泉街のシンボルでもあった老舗旅館「小柳」(貞享3(1686年)創業)が新潟の“株式会社自遊人”の子会社となり、存続をかけたエリアリノベーション、地域再生プロジェクトが始まりました。

3/エントランスを入った空間210202_1827.jpg
「松本本箱」の入り口を入ると無数の本に包まれる。圧巻の本はインテリアとしても個性的だが、実際に手に取り、買うことも可能。

現在は「小柳」の敷地内に、「豊かな知と出会う」と掲げて造られたブックホテル「松本本箱」と、「小柳」の名を遺したファミリー対応(バリアフリーも完備)のホテルが新たに生まれ、カフェやショップ、シードル醸造所なども含め、総合施設「松本十帖」が誕生しました。今回、ここで紹介するのは「松本本箱」です。ホテルのエントランスを入るやいなや、圧巻の数の本が並ぶ中で、忘れかけていた本への愛着が呼び起されました。

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「松本本箱」のグランドオープンは2022年7月、地上6階の建物をリノベーションし、客室数は24室が造られました。すべての部屋に露天温泉風呂が設置され、温泉に浸かりながら眼下に広がる町の展望を楽しみ、遠くに聳えるアルプス連邦に沈む夕陽を眺めたり、インナーバルコニ一のついた快適な部屋は旅情にあふれています。

8/各部屋の温泉露天風呂.JPG
各客室に設置されている名湯、浅間温泉の掛け流し露天風呂のひとつ。

何しろ、書店とホテルという垣根のない施設はとても斬新です。いろいろと手に取りその場で遠慮なく本に触れ、お気に入りの本は買い求めることも可能といいます。また本棚の並ぶパブリックスペースには、随所に、読書に没頭できるようにとスペースが造られ配慮が行き届いています。そして、複合施設「松本十帖」の現在は、ダイニング、ベーカリー、バー、カフェ、ブックストア、温泉、発酵蔵などを展開し、この浅間温泉全体を舞台に目指すは地域の活性化です。

7/客室の1つ.JPG
全室掛け流しの温泉露天風呂付。写真は「露天風呂付グランスィート」(145㎡)。窓からの景色は絶景、露天風呂からも同様に松本市街、山並みが楽しめる。

「松本本箱」に隣接する美しい蔵は、リンゴ王国の長野らしく、5種のリンゴを使ったシードルの醸造所「信州発酵研究所」(信州松本平ワインシードル特区認定)となり、昨年仕込んだ5種類の発泡酒“シードル”が、今年、初シーズンとなるファーストヴィンテージとして出荷されていました。これらのシードルは館内のレストランでも提供されるほか、ショップでの販売もされているとか。寂れた印象の浅間温泉街に、こうして地域を盛り上げる新しい“息吹”が起こり始めると、やがて大きな渦となり、地域全体が再び活気を取り戻し輝きを放つ温泉街に再生される……期待は大きくなっていきます。

9/シードル32I0625.JPG
長野は林檎の産地、数多い種類の林檎から選ばれた種類でシードルを醸造する松本本箱「信州発酵研究所」から発売されたファーストヴィンテージ。通常は捨てられてしまう摘果リンゴもハードシードルにし、サスティナブルな醸造所を目指している。

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1:宿泊受付#32I0244 - コピー.JPG
中央通りに面したカフェ兼ホテルのレセプション「おやきと、コーヒー」、味のある1軒家の2階は落ち着いたカフェスペース。

「松本十帖」では、「松本本箱」でも「小柳」でも、滞在者はまず宿泊受付のある一軒家、カフェ兼ホテルのレセプションの役割を持つ「おやきと、コーヒー」に立ち寄りチェックインの手続きをします。中央通りに面する1階がコーヒスタンド「おやきと、コーヒー」(中央通り)となり、アンティークな家の小さなスタンドは何とも印象的な“おやき”(焼くのではなく蒸して仕上げる)を販売しています。

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「安曇野放牧豚の薪火焼き」。薪火で焼いた安曇野放牧豚に、玉ねぎのフリットとハーブの四川花椒菜を合わせ、バルサミコとシェリービネガーのソースでいただく人気の一品。

そこで滞在の手続きを終えたら、その中央通りから急な湯坂を上っていくと道沿いにパワフルな印象の「松本本箱」、老舗旅館らしい格式のある「小柳」が並び、そこを通り過ぎさらに上ると、道沿いに古い小さな1軒家が見えてきます。その家が昔の姿のままのカフェ「哲学と甘いもの」でした。浅間温泉の随所には、まるで“呼び水”のような洒落た施設や、いまどきの感性豊かなスペースを提供。こうしてエリアリノベーションプロジェクトが始まり、この周辺の通りを起点に、若い人たちや家族連れが集まってくるようになりました。

4/本箱.JPG
アート関連の書籍が中心の「オトナ本箱」、迷路のように本が並ぶ「こども本箱」などがある。また、大浴場の湯船に美しいタイルが張られ座って読書もできるなど、さまざまな改装にも注目。

松本十帖/松本本箱
長野県松本市浅間温泉
Tel:0570-001-810
matsumotojujo.com

Kyoko Sekine

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

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