'西太后'縁の夏宮殿「サマーパレス」に
そっと寄り添う特別なシティリゾート。
「Aman At Summer Palace, Beijin(アマンサマーパレス北京)」北京/中国
ホテルへBon Voyage 2011.12.22
中華人民共和国の首都、北京は、紀元前一千年の悠久の歴史を宿す世界最古の都市のひとつであり、巨大中国の政治・文化の中心地でもある街です。その北京が大きく変わり始めたのが、2008年夏に開催されたオリンピックではないでしょうか。恐らく歴史上に残る街の変貌ぶりだったと言われています。
とりわけこのオリンピックを機に最も変化を見せたのが、観光産業やエンターテイメント業界といわれています。世界中からやってくる外国人に向けて、国際的な豪華ホテルや大型チェーンホテルが相次いでオープンしたのもこの時期でした。そして北京の中心から少し離れた場所、ユネスコ世界遺産に登録された「頤和園」に隣接して誕生したのが「アマンサマーパレス北京」でした。オープンは他の施設よりもやや遅れ、オープンラッシュの終盤9月27日に門を開けたのです。
手の込んだ彫刻や色彩による伝統建築は、「アマンサマーパレス北京」のエントランス・ロビー棟。館内には広いロビー、ラウンジがある。
アマンリゾーツにとっては初の都会での誕生とあって、誰もが驚きました。もともとアマンリゾーツはハイダウェイや辺鄙な村、秘密のジャングル、大自然の残る静かな島など、風光明媚なロケーションを選ぶように建てられていたのですから、突然の大都会への進出には衝撃を受けたのも事実です。さらに、北京の中心地にある紫禁城から約15kmの場所、世界遺産となっている'サマーパレス'(頤和園)の東正門に隣接して佇むというロケーションにも驚きました。まるで敷地の一部に属しているかのような立地なのです。やはり都会を選んでも、ただ単に便利な場所だから・・・とはいかない、アマンの哲学があったのでしょう。
アマンサマーパレス北京は中国伝統様式を重んじた建築方が用いられ、その上、宿泊棟はこの地方伝統の家屋である「四合院造り」になっています。また立派なアマンの正門は、時々、隣の頤和園の門と間違えられるほどです。隣接しているその「サマーパレス(頤和園)」は清王朝の王宮別荘として、また紫禁城の避暑地として利用された夏の離宮でした。12世紀に作られた王宮が二度の火事に遭ったことで、現存している建物は意外と新しく、そのほとんどが1900年初頭に再建築されたといいます。
コートヤード・デラックススイートの夜景。中央から入るとパブリックなサロン、右と左に客室が分かれ2組のゲストが滞在可能。客室内はさらにサロン、ベッドルーム、フィッティングルーム、バスルームに別れており、余裕の広さがある。
その頤和園との関係に於いて、アマンに泊まった人だけに許されている特別なことがあります。それは、サマーパレス内にアマンの敷地を囲む土塀の一部にはひっそりと閉じた門があり、リクエストをすれば、アマンのゲストに限り、いつでも頤和園に出入りが自由にできることです。アマンの敷地を囲む土塀の一部にあるひっそりと閉じた小さな門を、スタッフに頼んで鍵を開けてもらうと、そこはすでに頤和園の一部。正門から入場した観光客もその門を不思議そうに覗き込みますが、あくまでもアマンのゲストに許された通用門なのです。また、四合院造りの客室棟、長い廊下の天井に描かれた色艶やかな壁画、中国ならではの伝統的建築様式、中国伝統家具や芸術性豊かな調度品などは、アマンが中国に敬意を払い再現されたオリジナルです。
(左)四合院造りのコートヤードスイート、隣に通じる通路。(右)中庭でゲストを待つスタッフ。
(左)「コートヤード・デラックススイート9」のベッドルーム。(右)「コートヤード・デラックススイート2」のバスルーム。
大都会にあるとはいえ、アマンはシティリゾートらしさを備えています。スペースの広いフィットネスエリアには、贅沢な25mプールやピラティスが、さらに、 'シネマ'と呼ぶまるで映画館そっくりの映画鑑賞用の広い空間も作られています。ダイニングルームは、懐石風フランス料理、グリル料理、絶品の宮廷料理も楽しめる中国料理レストランなどがあります。
これが地下に造られたゴージャスなプール。長さは25mもある。
(左)地下のフィットネスを出てジュースバーへと続くコリドール。(右)レストラン「The Grill」。朝食もここで提供される。
客室は全51室。コートヤード形式「四合院造り」のスイートタイプと、壁画やアートワークの施された美しい2層建ての集合建築物があり、コートヤードの建物などは20年から120年もの時を経たという伝統家屋が利用されています。四合院の'四'は東西南北の4面を表すといい、北京や北の地方で多く見かける伝統家屋です。建築家は人気のジャン・ミッシェル・ギャシー。インテリアデザインはジャヤ・イブラハムという、アマンの哲学を知り尽くした豪華メンバーです。「北京の迎賓館」と言われる「アマンサマーパレス北京」。日本からは週末にも行ける距離にありますから、2012年は一度、足を運んではいかがでしょう。(K.S)
Aman At Summer Palace, Beijin
(アマンサマーパレス北京)
1 Gongmenqian Street, Summer Palace Beijing, PRC 100091
Tel (86) 10 5987 9999
Fax (86) 10 5987 9900
www.amanresorts.com/amanatsummerpalace
部屋数:51室、
料金:コートヤード(四合院造り)/US$.750,
スイート/US$.950~3900.
施設:レストラン(中華、フレンチ、グリル)、ラウンジ、
スパ、フィットネス、ボールルーム、ライブラリ、
ブティックギャラリ-、庭園、他
アクセス:北京中心地から15km、北京空港~車で約45分。
連絡先:トールフリー/NTT:0033-010-800-2255-2626
KDDI:001-010-800-2255-2626

Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com