シャネルが定期的に開催している特別な読書会、カンボン通りの「文学のランデブー」。アーティスティック ディレクターのヴィルジニー・ヴィアールと2021年1月からシャネルのアンバサダーかつスポークスマンを務めるシャルロット・カシラギが始めたこの読書会では、多彩なゲストたちが女性作家の作品を巡り、豊かなディスカッションを繰り広げ、いまも昔も変わらない文学の魅力を届けてくれる。
ガブリエル・シャネルの想いを受け継ぐ「文学のランデブヴー」
「本は私にとっていちばんの友人でした」とは、ガブリエル・シャネルが残した言葉。オバジーヌの孤児院で過ごした孤独な子ども時代から、カンボン通りのアパルトマンで過ごした華々しい日々にいたるまで、彼女はいつも本に囲まれていた。文学は彼女の人生を豊かにし、シャネルというメゾンを前進させる力をシャネルに与え続けたのだ。普遍的かつ古びることのない、あのガブリエル・シャネルが確立したスタイルの誕生には、文学の力が大きく働いていたのは間違いない。そしてマドモアゼルからクリエイティブのバトンを受け取ったカール・ラガーフェルドもまた、大変な読書家だった。彼はシャネルの伝統であるファッションと文学、スタイルと言葉が交わすクリエイティブな対話の発展に35年間、尽力した。
そして、現在。このふたりのスピリットを継承するのがヴィルジニー・ヴィアールだ。ヴィルジニーが初めて手がけたオートクチュールコレクションでは「本への情熱」をテーマに掲げ、膨大な本が並ぶ書庫を模した会場でショーを開催、拍手喝采を浴びたのは19-20年秋冬のこと。そんな文学を愛するヴィルジニーとシャルロット・カシラギとの特別なプロジェクトがカンボン通りの「文学のランデヴー」。その集いには、メゾンと親交の深いパーソナリティとともに、女性著述家や女優などのゲストが集結。ゲストの著作や愛する過去、そして現在の文学者の作品を読み、意見を交換し、それぞれの自由でユニークな感想を共有し、語り合うという催しだ。
---fadeinpager---
女優たちが語り合う、ヴァージニア・ウルフ。
そのシャネルらしいイベントの第4回目は、パリからロンドンのサマセットハウスに場所を移して開催され、20世紀前半に英国で活躍した女性作家のヴァージニア・ウルフにフォーカス。シャルロット・カシラギがゲストとして招いたのは、ロンドン在住の米国人作家エリカ・ワグナーと『灯台守の話』(白水Uブックス刊)の英国人作家ジャネット・ウィンターソン、そして女優でメゾンのアンバサダーであるキーラ・ナイトレイ。今回の「文学のランデブー」は、ヴァージニア・ウルフのエッセイ集『女性にとっての職業』から、1931年に彼女が女性団体の集会で行ったスピーチをキーラが朗読することから始まった。

モナコ妃で女優の故グレース・ケリーの孫娘、シャルロット・カシラギ。


キーラ・ナイトレイは「女性が自立して働く場合、他人の意見が障害になることがある」と語った。


対話の全貌は動画でお届け。
---fadeinpager---
過去3回の「文学のランデヴー」は、ポッドキャストで!
第1回は、作家のサラ・チチェとシャルロット・カシラギにより、ドイツのエッセイスト、ルー・アンドレアス・サロメの肖像について対話された。
第2回は、『その腕のなかで』(新潮社刊)などで知られる作家のカミーユ・ロランスと、『フレンチ・ディスパッチ』『ガガーリン』『オートクチュール』など日本でも映画公開が続く女優のリナ・クードリ、そして文学史学者のファニー・アラマを招待。
第3回は、シャルロット・カシラギが、作家のアンヌ・ベレスト(『パリジェンヌのつくりかた』(早川書房刊))とともに、ガブリエル・シャネルとジャン・コクトーのユニークな友情について、シャネルのアンバサダーのカロリーヌ・ドゥ・メグレに語った。
text: Tomoko Kawakami