メゾン・エ・オブジェ・パリが、展覧会となって東京で開催中。

1995年に始まり、毎年1月と9月にパリで開催されるデザインとライフスタイルの国際展示会『メゾン・エ・オブジェ』。その魅力がぎゅっと詰まった展覧会が都内で開催中です。2022年3月21日(月・祝)まで日本橋髙島屋で行われている『デザイン・ダイアローグ  メゾン・エ・オブジェ・パリ展』。

4月には髙島屋京都店で、8月にはジェイアール名古屋タカシマヤでも開催されるなど、メゾン・エ・オブジェ・パリの醍醐味に各地で触れられるまたとない機会です。東京展の様子をみなさんご紹介しましょう。

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フィリップ・スタルクの「A.I.」チェア(カルテル社)が私たちを迎えてくれる日本橋髙島屋の1階エントランス。

デザイナーがクリエイションを展開する際には、さまざまな対話が生まれます。時代時代の空気との対話や素材との対話。制作に携わる人々やデザインを受けとめる多くの人々との対話も大切です。そう、デザインは「私」だけで完結するものではありません。タイトルにある「ダイアローグ」の深い意味を改めて考えます。

この展覧会も、デザインを愛し、生活を楽しむ心を大切にする日本とフランス双方の対話から始まっていました。髙島屋で開催されることの背景にも、歴史に残る大切なストーリーが潜んでいます。フランス生まれのデザイナー、シャルロット・ペリアンと日本との関係です。
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1941年「選擇・傳統・創造」展で紹介された竹製シェーズロング「TOKYO」(展示はカッシーナ社による復刻版)。ペリアンは日本のつくり手の工夫を生かすなど、創造的な対話の結晶となる作品。綴織壁掛は髙島屋資料館収蔵の貴重なもの。

ペリアンを日本に招いた背景には日本の商工省と髙島屋の協力がありました。ペリアンがパリを離れ、マルセイユの港から中国を経て神戸に到着したのは1940年の9月。その後、民藝運動の担い手たちにも会い、東北を始め各地に足を運んでいます。

来日から半年後の41年3月、東京の髙島屋で「ペリアン女史日本創作展覧会 2601年自宅内部装備への一示唆 選擇・傳統・創造」が開幕。自らデザインした家具や作品だけでなく、日本各地でつくられている品々や日本民藝館が収蔵する美術工芸品を選び紹介するなど、「諸芸術の総合」というペリアンの理念がかたちにされたことでも、重要なできごとでした。

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会場エントランス。「ル・コルビュジエ、レジェ、ペリアン三人展」で紹介されていたペリアンのソファ「REFOLO」とチェア「OMBRA TOKYO」。(展示はカッシーナ社による復刻版)

55年には「巴里 1955年 芸術の綜合への提案 ル・コルビュジエ、レジェ、ペリアン三人展」も開催されています。こうした歴史を振り返りながら竹製シェーズロングの復刻版を始めとするペリアンデザインの家具を目にできる今回の会場には、当時制作された貴重な綴織壁掛も。対話から生まれた品々が時代を超えて輝き続けることのすばらしさを改めて楽しめる展示です。

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デザイン・ダイアローグの歴史を胸に会場を進んだ先には、メゾン・エ・オブジェ・パリの「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」。99年に遡り、現在まで、賞に輝いた21名が各氏のデザインによる代表的な椅子と照明器具とともに紹介されています。各氏の世界観に出会いながら進んでいく、刺激に満ちた回廊のようなコーナーがつくられていました。
 

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2000年受賞のフィリップ・スタルク(左)と2001年受賞のジャスパー・モリソン。

同コーナーのキュレーションを手がけたフランソワ・ルブラン・ディ・シシリアのことばを引用しましょう。「椅子にはデザイナー自身のコンセプトが反映されています。照明器具は機能とテクノロジーのシンボルとなるものです」

こうして歴代の受賞者を一度に知ることのできる展示は、メゾン・エ・オブジェ・パリでも初の試み。それも年代順に目にできることで、各デザイナーが脚光を浴び、後の飛躍につながる重要な時期がいつであったのが浮かび上がります。このデザイナー・オブ・ザ・イヤーには日本からも、吉岡徳仁さん(12年)、佐藤オオキさん/nendo(15年)が選出されてきました。
 

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2011年受賞のロナン&エルワン・ブルレック。

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2012年受賞の吉岡徳仁。

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2022年の受賞デザイナーは、フランスを拠点に活躍するフランクリン・アジ。実は、今年1月に予定されていたメゾン・エ・オブジェ・パリが延期となって3月24日開幕となったことで、東京での本展はパリより早く受賞者の紹介ともなっているのです。2024年に完成する新モンパルナスタワーの設計も手がけるなど、まさに注目の人物です。

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3月24日からパリで行われるメゾン・エ・オブジェでは、「RETRO FUTUR(レトロ・フューチャー)」と題した展示が行われる。Franklin Azzi Architecture, The Bureau – Monsigny, Paris, 2020 ©Valerio Geraci_portrait Franklin Azzi

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フランクリン・アジが手がけたイザベル マラン(2012年)。©Franklin Azzi Architecture, Isabel Marant, 2012

本展のさらなるハイライトは「ホワッツ・ニュー」。メゾン・エ・オブジェ・パリに出展される品々から毎年、トレンドコンサルタントとして活躍するエリザベス・ルリッシュのフィルターを通して示される新潮流の紹介です。

200にも及ぶ品々で構成され、生活とインテリア、デザインとの関係はもちろん、社会のムーブメントを考察するうえでも注目の特別展。そう、この「ホワッツ・ニュー」もパリより早いお披露目となりました。

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FM1-12.jpg2020年のメゾン・エ・オブジェで、エリザベス・ルリッシュが手がけた「ホワッツ・ニュー」のブース。©AETHION

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ルリッシュが挙げる今回のテーマは、「エレメンツ・オブ・ネイチャー(自然の要素)」。「自然の要素とは、創造の世界にもインスピレーションを与える要素です」と彼女。「自然と再びつながることを促す3つの領域」として「本質的な自然」「瞑想的な自然」「彫刻的な自然」を掲げたうえでの、魅力あふれるインスタレーションとなっていました。

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このコーナーでの家具やインテリア小物は日本で初めて目にするものばかりで、デザインの豊かな世界を改めて感じずにはいられませんでした。そうした出会いの喜びとともに、古来生活と切り離すことのできない「自然」と私たちとの対話について、楽しみながら考えるきっかけにも満ちています。こちらもみなさんにご覧いただきたい展示です。

デザイン・ダイアローグ展のレポート、次回に続きます。

『デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ展』

会期:~3/21(月・祝)
日本橋髙島屋 S.C. 本館8階ホール(東京都中央区日本橋 2-4-1)
tel: 03-3211-4111(代)
営)10:30〜19:00 (最終入場19:00)
※3/21は16:00まで(最終入場15:30)
入場料:一般¥500、中学生以下無料
www.takashimaya.co.jp/store/special/maison-objet/top.html

巡回展予定:
2022年4/28(木)〜5/9(月)髙島屋京都店 
2022年8/17(水)〜8/30(火)ジェイアール名古屋タカシマヤ 

 

photography & text: Noriko Kawakami

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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