Casa Camperの大テーブル。
レストラン「Dos Palillos」
デザイン・ジャーナル 2010.01.25
時間、そして景色。デザイナーがつくりだせるのは、ただその"物"に留まりません。
パリのデザイナー、Ronan & Erwan Bouroullec(ロナン&エルワン・ブルレック)から、今月完成したプロジェクトの情報が届きました。
ベルリンの中心地、ミッテ地区に誕生したホテルに、ブルレック兄弟がインテリアデザインを手がけたレストランがオープン。ホテルの名は「Casa Camper(カサ・カンペール)Berlin」。バルセロナに次ぐ、カンペールのホテルです。
ちょうど雑誌「Figaro Japon」2月5日発売号のアートページで、同ホテルにほど近い「博物館島」のコラムを書いていたところでした。修復を終えて70年ぶりに開館したNeues Museum(新博物館)。こちらの修復、再建に関わったのは英国人建築家、David Chipperfield(ディヴィッド・チッパーフィルド)。ベルリンの中心地、動いています。
Photo: ©Tahon & Bouroullec(レストラン写真すべて)
レストランはもちろん、客室数51のホテル、カサ・カンペールそのものもユニークです。ホテルの詳細は、www.casacamper.com
そんな街でロナンとエルワンが空間デザインを手がけたレストランは、「Dos Palillos(ドス・パリージョス)」。ホテルの外からも店のなかが一望できますが、横一列に席が並ぶその様子、ん、何かに似ている。そう、日本料理店や寿司店のカウンターのような......。
オークのテーブルとステンレススチールのキッチンとの対比。
ドス・パリージョスのシェフは、エル・ブリで長くシェフを務めたAlbert Raurich(アルベルト・ラウリック)。日本やアジアの料理をタパス風にまとめあげるオリジナルメニューは、アーティスティックな感性あってのもの......。
そして、腕をふるう料理人の姿はアーティスティックなショウ。13メートルもの長いテーブルは、生き生きとしてクリエイティブなキッチンの様子も味わえるように、と、考えられたものなのでした。
テーブルはシェフ(上)始め、料理人たちの華麗なるステージ! 空間の一部に煌めくゴールドがとり入れられていたり、一部に向かいあう席があったり、様々に面白い。
ところで、カンペールといえばもちろんシューズ。世界的なデザイナーを招いての店舗デザインも話題です。ちなみにロナンとエルワンは昨年、パリとコペンハーゲンでのカンペール店舗のデザインを手がけていました。今回、同社ホテルのレストラン空間を任されたのも、才能を引き続き高く評価されてのこと。その期待にしっかりと応えています。
©Studio Bouroullec
こちらはブルレック兄弟が手がけたカンペールのショップデザイン。ブルレックの作品にはいつも驚かされますが、彼らの色彩感覚にも注目です。
「この美しいテーブル、私が日本人だからかもしれないけれど、寿司店のカウンターのよう。なめらかなオークの表情もそんな感じで......!」。いつものように私の感想を。
「今回、確かに日本の食文化から多くのインスピレーションを受けているよ。そのうえで、テーブルを囲んで大勢の人が座っている景色を、つくろうと思ったんだ」。
そうそう! 彼らはいつも、美しい景色、広がる風景を見せてくれる。
こうして、シンプルでありながらも、単なるシンプルを超えた空間に。料理をつくる人と味わう人との関係を密にし、互いの姿があることでより美しいレストランの誕生です。
それにしてもこの景色、通りから目にしたらやはり、そのテーブルに参加したくなるというものです。ベルリン、ミッテ。私の次の旅先リストに、忘れず含めておかなくては。
いいなあ、この景色。料理を楽しむ心地よい空気が、店の外にまで伝わってくる。
I have received some intriguing information from the Ronan and Erwan Bouroullec Studio in Paris, in regards to their new design project for Dos Palillos.
This restaurant is located on the grand floor at the Hotel Casa Camper Berlin, which has just opened at Mitte, the central district of Berlin. Albert Raurich, the chef of this restaurant, was also well known as a former chef at elBulli. Roan and Erwan considering how to achieve the best form of communication between the chef, cooks and guests who sit around the 13-meter-long oak table.
Bouroullec prepared this new space so that we can realise a closer relationship between the artistic food creators and us. They also had an idea to eat in the kitchen, so guests can watch the art of cooking as it happens. With that long table, Bouroullec tried to created a beautiful "paysage" that is similar to their other wonderful design projects.
text by Noriko Kawakami
Hotel Casa Camper Berlin
http://www.casacamper.com/berlin/

Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami