フィレンツェの名門、フレスコバルディ家。
ワイン「LUCE」とリチャード ジノリのプロジェクト


1000年という歴史を誇るトスカーナの名門、フレスコバルディ侯爵家。トスカーナ地方に9つの農園を有する同家は、ヨーロッパ屈指のワイナリーとしても広く知られる存在です。すでに14 世紀には欧州各国の宮廷や芸術家に愛されたワインとして愛され、ルネッサンス文化発祥の地フィレンツェで、文化、芸術の発展を支えてきた歴史もあるほど。

こうした歴史や文化への貢献から、現在も「マルケーゼ(侯爵)」の名で多くの人々に愛されているワイナリーなのです。このフレスコバルディ家で当主を務めるランベルト・フレスコバルディ侯爵に、ワインづくりについて、さらにはリチャード ジノリとのプロジェクトについて、話をうかがうことができました。

1.jpg「LUCE DELLA VITE(ルーチェ・デッラ・ヴィーテ)」。

2.jpgマルケージ・デ・フレスコバルディ社の副社長を務めるランベルト・フレスコバルディ侯爵。1963年生まれ。カリフォルニア大学デービス校で農業マネージメントとぶどう栽培の学位を取得した後、家業を継ぐ。

「私の家の歴史は古く、ワイン醸造を始めてから数えても、私で30代となります。ワインづくりとは、土地でとれるぶどうに、長年の知恵を加えること。私が今ここにいるのも、代々、歴史に時代の生命を吹き込んできたからなのです」(フレスコバルディ氏)

注目したいのが、「LUCE(ルーチェ)」、「光」という名のワイン。氏の父、ヴィットリオ・フレスコバルディ氏と、カリフォルニアのロバート・モンダヴィ氏によって1995年に設けられたワイナリー「ルーチェ・デッラ・ヴィーテ」のプレミアムワインです。トスカーナ、モンタルチーノの畑で育てられるサンジョヴェーゼと、外来種であるメルローをブレンドするという画期的な発想から誕生しました。

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4.jpgワイン「ルーチェ・デッラ・ヴィーテ」。サンジョヴェーゼのエレガントでしっかりとした味わいと、メルローのまろやかな味わいがとけあっています。ぜひ味わってみてください。

まさに「歴史に新たな息吹を吹き込む」ことの実践となるワインですが、2009年には、イタリアのデザイン、クラフツマンシップとのコレボレーションを活かした「CASA DI LUCE(カーサ・デ・ルーチェ)」のプロジェクトがスタートしています。企業とのコラボレーションによって、すでにデキャンタなどが実現されてきました。

「カーサ・デ・ルーチェは、我々のワイン『ルーチェ』とイタリアの土地で職人の手がつくりうるすばらしいクリエイティヴィティを融合させようと考えたプロジェクトです。イタリアの美しさ、また、イタリアが生み出すもののクオリティを、多くの方々に知っていただきたいとの想いもあります」

今年からの3年間はリチャード ジノリ社とのコラボレーションによるプレートのプロジェクト。その名も「GENI DE LUCE」(ルーチェのDNA)です。「ルーチェ」のワインにちなんだ、実に興味深いストーリーが用意されていました。

5.jpg「GENI X」。このプレートの日本での販売時期は未定。

サンジョヴェーゼとメルロー、それぞれの土壌のDNAを「X」と「Y」として、今年はサンジョヴェーゼの土壌の「GENI X」を、2013年はメルローの「GENI Y」を表現するプレートがつくられます。そして2014年、ふたつの土壌に育ったぶどうがもたらすワイン「LUCE」をイメージした、「GENI XY」としてのプレートが発表されるそう。フレスコバルディ氏のことばを再びご紹介しましょう。

「リチャード ジノリ社とプロジェクトを行なえる喜びは言うまでもありません。同社の創業は1735年、長い歴史を持つと同時に常に新しいものを生み出す情熱を持った企業であり、フィレンツェに生まれ育った我々にとっては、やはり重要な存在です」

「トスカーナの土地から生まれるワインを愛してくださる皆さんは、この大地から生まれるさまざまなものも同様に愛してくれると信じています。私たちのワインと一緒に、多くのかたがたに、芸術性に富むリチャード ジノリの美しさやその品質を知っていただける機会になることを願っています」

6.JPGこの日展示されていたリチャード ジノリの品。同社の品を多く手がけたイタリアの巨匠ジオ・ポンティ(1891~1979)のデザインでした。Photo: Noriko Kawakami

こうしてできあがったプレートプロジェクトの第一弾、「GENI X」。
フレスコバルディ氏の率直な感想も気になるところです。笑顔で次のように語ってくれました。

「なんと美しい金色だろう! そう思い、感激しました!」

「降り注ぐ太陽の光、光を受けた大地の表情......ご覧ください、私たちが享受しうる自然の恵みが、手作業で施された黄金の色彩にみごとに表現されています。自然からの贈り物に伝統や叡智が加わることで生まれでる美を、感じていただけるのではないでしょうか」

「そして、リチャード ジノリならではの『白』の表情......! この白い磁器の美しさは、土に含まれるカオリンという成分によってもたらされるものです。ジノリ製品のなかでも白い磁器は美しいと思いますが、このプレートの裏側も、ほら、本当に美しいですよね」

7.JPGトスカーナの大地が生む「白」。フレスコバルディ氏自らプレートの裏側を披露してくださいました。Photo: Noriko Kawakami

トスカーナの大地の恵みと、それを活かす人々の創造力。すぐれたワインや磁器を生む妥協のないプロセスと、そこにたっぷりと費やされる時間について......。

「土地の素材を用い、培われてきた知恵を活かすことですばらしい製品を生み出すということでは、我が社のワインも同様です。その一方で違いもあります。プレートをつくる際、しくじったら再び粘土をこねて焼き直すことができますが、ワインづくりではそうはいかない......醸造を失敗してしまったら、次の一年を待たないとならないのです」

「他にはない最高のワインをつくりたいと日々とりくんでいるわけですが、天候や予期せぬさまざまな要因にも向きあわないとなりません。時には、ああこれはしかたがない、来年また最善を尽くそうと考えなくてはならないこともあります。ワインをつくる人間は、忍耐強くならないとなりません......」

8.JPG氏の話に大感激。プレートをはさんで思わず記念写真を......(笑)

丹念な作業と時間を経ることでもたらされる味わいや表情。省くことのできないいくつもの段階を経て生まれるもの、受け継がれるもの。自然の恵みと人の叡智、自然と一緒につくる作業について......フレスコバルディ氏にもっと話をうかがいたいと思ったこの日、最後にこう語ってくれました。

「人が持ちうる知識や経験に対する尊敬の念を忘れることなく、さらに次の時代に伝えていくことの重要性についていつも考えます。とくに私たちのようなファミリービジネスでは、家業に想いを投資していくことで、伝統をさらに伝えていくことができます。そう、カーサ・デ・ルーチェはまさにそのひとつ。長い文化や伝統を、生活の美に対する想いを次の時代につないでいくための、本当に大切なプロジェクトでもあるのです」

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問い合わせ先:
日本リカー株式会社 TEL 03-3453-2201
http://www.lucedellavite.com/


興味のある方は以下もあわせてご覧ください。
リチャード ジノリ社
http://richardginori.co.jp/
フレスコバルディ社
http://www.frescobaldi.it/

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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