マックス・フーバー & 葵・フーバー・河野。
ふたりの色、線、造形に出会える展覧会。

南青山にあるGallery 5610にて、6月23日(月)まで「AOI & MAX HUBER」展が開催されています。

スイスに生まれ、イタリアでも活躍したデザイナー、マックス・フーバー氏の作品と、氏のパートナーで、イラストレーターや絵本作家としても活躍している葵・フーバー・河野さんの作品の数々。

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会場風景です。マックス・フーバーの1983年から1958年の作品。カーペットも彼のデザイン。Photo: Yudai Yoshimura

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手前はマックス作品。奥に葵・フーバー・河野さんの新作。Photo: Yudai Yoshimura

デザインに詳しい方であれば「このふたりの展覧会が日本で!」と思われるにちがいありません。そうした方々にはもちろんのこと、そうでない方にもふたりの世界に出会ってほしいと願わずにはいられない、本当にすばらしい展覧会。

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なごやかな空気に包まれた展覧会オープニングの際に。葵さんと葵さんのスタジオで協働し、本展の企画・デザインを担当された吉村雄大さん。Photo: Noriko Kawakami

マックス・フーバーは1919年スイス生まれ。1940年にミラノに向かい、グラフィックと広告に関するミラノの国際的なスタジオで才能を発揮します。その後一時的にスイスに帰国、戦後に再びミラノを拠点として、オリベッティや老舗百貨店ラ・リナシェンテのデザインをはじめ、活躍しました。

ブルーノ・ムナーリやアキッレ・カスティリオーニらイタリアの巨匠デザイナーとのつながりも深かったマックス。友人でもあったムナーリは、「彼は、国際的なグラフィックデザインの最先端からの使者だった」とのことばを残しています。

「マックスはとても陽気で親しみを感じさせる友人であり、当時の私たちがまだ知らなかったプロフェッショナリズムを身につけていた。わたしたち若いグラフィックデザイナーはみんなマックスから何かを学んだものだった」(ムナーリ、1994年)

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マックス・フーバー「Ragtime Boogie」1976-86年。Photo: Courtesy of Gallery 5610

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マックス・フーバー「QSP 082」1984-85年。Photo: Courtesy of Gallery 5610

今回の展覧会で紹介されているマックスの作品は、スイス時代のものが中心です。マックス・ビル、ハンス・アルプらも関わっていた抽象芸術団体「アリアンツ」に参加していたマックス・フーバーは、団体の機関誌だった「アブストラクト・コンクリート」の表紙などを手がけていました。

その後、ミラノでの「抽象 --------具体美術」展(1947年)のポスターも手がけ、ブルーノ・ムナーリとともにミラノでの具体芸術運動にも参加。美しい幾何学構成の作品を通して、当時の時代の流れを知ることができるという点でも、今回の展覧会はとても貴重な機会なのです。

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Photo: Yasuo Saji

あわせて目にしたいのは、マックス・フーバーの「手」を感じさせる制作物の数々。たとえば1940年、ミラノのストゥディオ・ボッジェーリを訪ねた際に手にしていたというマックス自作の名刺も展示されています。ボッジェーリが目にした瞬間に採用を決めたという、伝説の名刺です。

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吊られた展示スタンドの中央に、その名刺が。白のスパイラルと手描きの名前。Photo: Yasuo Saji

スイスとイタリアを行き来したマックス。精緻なスイスのタイポグラフィと大らかでエネルギッシュなイタリアの色との出会いをもたらし、前衛美術とデザインとの枠を超えて活動した彼の、音楽が聴こえてきそうなデザイン(彼はジャズ好きでもありました!)。

そして葵さんの作品もマックスと同じく、躍動感と豊かな色に包まれています。

葵さんは東京生まれ。東京藝術大学 工芸科図案計画専攻(現 東京藝術大学デザイン科)を卒業後、スウェーデン王立芸術デザイン大学に留学、1962年からマックス・フーバーのスタジオで、おもにイラストレーションを担当していました。

ふたりが結婚したのは1962年。マックスが73歳で他界した1992年以降も、葵さんは南スイスを拠点として活動しています。昨年には新たにデザインスタジオ puntovirgola(プントヴィルゴラ)をスタートさせるなど、ますますお元気な葵さん。会場ではそうした葵さんの近作、新作に魅了されてしまいます。

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会場から葵さんの作品。上は2013年の作、下は本年の新作。Photo: Yudai Yoshimura

会場で目にできた葵さんの制作プロセスノートにも見入ってしまいました。本人の生き生きとした視点が伝わってきます。色鮮やかな描写に、「ザクロ」と書かれていたり......。

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私のスナップ写真でごめんなさい......。会場でぜひご覧ください。Photo: Noriko Kawakami

ギャラリーではマックスの作品集やシルクスクリーン作品、リトグラフ作品、葵さん作の絵本などが購入できます。葵さん作の絵本、私も何冊も持っていますが、表紙を開くたびに幸せな気分になるものばかりです。

本展を機に制作されたGallery 5610のオリジナルTシャツも販売されています。

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写真上は、左からマックスの「Spiral」、葵さんの父で日本を代表するデザイナー、河野鷹思氏の「Sakana」、葵さんの「Ovale」。写真下は葵さんのイラストレーション「machinami」(写真はキッズサイズ)。ギャラリーで購入できます。監修:puntovirgola(葵・フーバー・河野、吉村雄大)。Photo: Noriko Kawakami

鮮やかな色と造形で、嬉しい驚きにも満ちた、ふたりの世界。

「自由に楽しんでください」
葵さんのことばを、madame FIGARO.jp読者の皆さんにお伝えさせていただきますね。

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もう一点、葵さん作品を。2012年の「Sei Per Sei」。Photo: Courtesy of Gallery 5610


AOI & MAX HUBER
6月23日(月)まで、Gallery 5610
11:00〜18:00(月〜土)、日曜休廊
http://www.deska.jp

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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