焼きたてのパンの食感、香りが楽しめる、
「バルミューダ ザ・トースター」に感激。

「わぁこれはすごい。焼きたてクロワッサンの食感だし、バターの香りがきわだっている!」
今夏発売になっていたトースターがわが家に到着。パン好きの友を招いてパンを焼いて食べる会を楽しんだ先日のこと、大いに盛りあがりました。トースターの落ち着いた姿も、今回ご紹介したいと思った理由です。

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つや消しのブラック。落ち着いたデザイン。Photo: Courtesy of BALMUDA

家具から電気製品までさまざまなデザインを取材するしごとをしていますが、「!」と心に響いてくるものに出合えた日ほど幸せなことはありません。そうした出合いに恵まれると、これは自分の生活でも使いたいと即座に思ってしまいます。また、実際に我が家にあるのは、そうして長く使い続けているものばかり。

スペックを読んですごいなあと頭で理解する以前に、心の底から「わぁ!」と思えるものって実はなかなかないからなのですが......。最近気になっていたのが、このスチームトースター。BALMUDA(バルミューダ)の「BALMUDA The Toaster」(バルミューダ ザ・トースター)です。

かつてなかった羽根の形状でそよ風のようにやさしい風を生む扇風機をはじめ、高性能の空気清浄機や壷の姿をした加湿機など、独自の製品開発を続けているバルミューダ。社長の寺尾 玄さん(1973年生まれ)には初代扇風機が発表された5年前より取材をさせていただいているのですが、今回、「トースター」と最初に聞いたときには驚かされました。

でもすぐに納得です。空調の機能を備えた家電の開発を通して日々の「気持ちよさや、心地よさ」を目ざしてきた同社のこと、食に関するプロダクトで「おいしさ」という喜びを探究することは、ごく自然のことだったのでしょう。2015年のバルミューダのキーワードは、「Hello Kitchen!」。

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「BALMUDA The Toaster」本体の色がホワイトのものも。クラシックな趣も漂う美しい佇まい。「おいしいトーストがどのような物から出てくるか」を探ったデザインでは、映画『魔女の宅急便』でニシンのパイを焼くおばあちゃんの家の"薪のストーブ"もヒントに。
¥22,900(税別)。Photo: Courtesy of BALMUDA

ちなみに、寺尾さんのパンに対する想いは、20年以上も前に遡ります。わずかな荷物とウォークマン、本とノートを手にひとりヨーロッパに旅した17歳のとき、目的地であるスペイン南部の街で口にした「香ばしいパン」の味。その日から今回の開発に至るストーリーは、本人のことばで同社ホームページにも。

目先のことであたふたとさせられることの多い現代。心の奥に輝き続ける想いを継続して探究することや、かたちにした後も大事に育てていくことって、真の情熱がないととてもできない。そのことにしっかりと向き合う活動はやはりすばらしい。

......というわけで、気になる会社の、気になる社長の体験も大切にされた最新のトースターを、わくわくしながら使ってみました。結果は冒頭で書いた通り。驚きと感動の連続です。

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このトースターでパンを焼いて楽しむ会のスナップ写真をここから何枚か。Photo: Noriko Kawakami

ここで忘れてならないのが、トースターに添えられた可愛らしいカップ。「BALMUDA The Toaster」の最大の特色とは5ccの水を使うこと。独自のスチームテクノロジーが搭載されているのです。

こうして「水を使う」ヒントを得たきっかけにも、興味深いストーリーがあったことを知りました。トースターの開発を始めてすぐの頃、開発に関わる皆さんが注目したのは、社内で開催したバーベキュー大会でのできごとだったそう。あいにくの雨のなか、炭火で焼いたパンが実においしく、その味を再現するべく実験を重ねた開発チーム。試作機をつくった後にパンを焼いた実験でも合計1000時間に及んだとか。

パンの表面を薄い水分の膜で覆いつつ完璧な温度制御で焼くことで、パン屋さんの焼きたて状態にしてくれるスチームテクノロジー。バルミューダによると重要なのは3段階の温度帯、60℃前後、160℃前後、220℃前後とのことで、パンの種類に応じて上下のヒーター管の動きが細かく制御されているのです。最先端の技術が凝縮されていました。

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パンを焼くのは専用カップで注ぎ口に水を入れてから。ヒーターで温められた水がスチームとなり、パン表面を薄い膜のように覆います。パンの表面を軽く焼き、パン内部に水分と香りをとじこめつつ、完璧な温度制御でやきあげるというしくみ。Photo: Noriko Kawakami


さてさて、今回焼いてみたのは、よく買いに行く3つの店、Lotus、L'atelier de Plaisir、La vie Exquiseのパンです。セットしたタイマーが動き始めると、クルマのウインカー音に似た「カチ、カチ、カチ」と音が聞こえてきます。この音からすでに楽しい。クルマを愛する寺尾さんの遊び心かしら?! そう思いながらガラス窓より内部を見ると、みるみるスチームに包まれている......!

スチームの様子やヒーター管の動き、とくに最後に220度前後の温度でみごと焼き上げる状態を目にしつつ、ドキドキしながら待つこと数分......。硬い表面のパンを焼く(温める)フランスパンモードでまずはバゲットを。皮はパリッとしてさくさくと、パンを焼き上げて硬くなるというのとは異なる食感です。しかもパンの内側はふっくら、ふわふわとして温かく、香ばしさが伝わってくる。

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クロワッサン、フランスパン、トースト、チーズトーストなど、用意されたトーストモードにセットするだけ。ガイドブックではさらに山形パン、角食パン、ベーグル、イングリッシュマフィンといった細かな分類での調理時間も紹介されています。デザイン、開発に関わった方々のパンに対する愛情がうかがえます。Photo: Noriko Kawakami

クロワッサンモードでは、パンを温めると同時に、表面を焦がすことなく、さくさくっとした歯ごたえに仕上げてくれます。クロワッサンは焼きたてが一番なので、朝、近所のパン屋さんに買いに行くことが多いのですが、このトースターがあれば焼きたての食感やバターの風味をたっぷり楽しめる。異なる店のクロワッサンを試してみると、それぞれのお店のこだわりレシピをより楽しめることを実感しました。

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Photo: Noriko Kawakami

食パンやイングリッシュマフィンなどを焼きあげるトーストモードも、軽快ともいえる表面のさっくり具合と中のふんわり具合のバランスが絶妙で......。興味深いのはチーズトーストモードです。社長の寺尾さんはチーズトーストが大好物だそうで、そんなこだわりが製品にもちゃんと込められているのが微笑ましい。バルミューダならではの魅力ですね。

と同時に、ここにも優れたトースターを開発する試みが隠されています。というのも、チーズの香りを活かしたうえでとろりとしてこんがりとしたトーストを実現することって難しいのです。最高のチーズトーストを焼くための設定が組み込まれているのも「BALMUDA The Toaster」の開発力があってこそ、なのです。

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Photo: Courtesy of BALMUDA

どんなパンでも、たったいま窯で焼きあがったばかりといった味を楽しませてくれる。これはもう、「トースター」よりもっとふさわしいことばがあるのでは? と思わせられるほどでした。そう、トースターを超えたトースター。一日のはじまりとなる朝食を幸せな時間にしてくれ、私たちを笑顔にしてくれる。

それにしても、感動を覚えた食感や香りをそのままお伝えすることの難しさを実感してしまった今回。やはり実際に使っていただくのが一番かもしれません。パン好きの皆さんには本当におすすめ! 
......と、今回は最後まで興奮気味の文章で、失礼いたしました(笑)

「BALMUDA The Toaster」http://www.balmuda.com/jp/
オンラインストア     http://www.balmuda.com/store/

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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