あなたなら、どう座る?
チェアレス写真展とディーツ新作家具

この写真、何だと思いますか。カジュアルなベルト? ネックレス? ブックバンド? カラフルな運動会リレーのたすき?......などにも使えるかもしれませんが、長さ85cm、ループ状のこのストラップ、「座る」ための最新プロダクト。

ドイツの家具メーカー、vitra(ヴィトラ)から今年春、ミラノサローネの際に発表された「Chairless(チェアレス)」。チリの気鋭建築家、Alejandro Aravena(アレハンドロ・アラヴェナ)の提案から誕生したもの。日本でも、hhstyle.comで購入できます。

Cl1_kawa101027.jpgPhoto: Marc Eggimann, © Vitra (www.vitra.com)、Photo: Courtesy of hhstyle.com(他写真すべて)

Cl2_kawa101027.jpgチリの建築家、アレハンドロ・アラヴェナ。彼は現在、ヴィトラ本社のある「ヴィトラ・キャンバス」におけるワークショップビルの設計デザインを手がけています。Photo: Studio Alejandro Aravena

アレハンドロが着目したのは南米の遊牧民、アヨレオ族がずっと前から、それも日常的に用いてきたある道具でした。パラグアイとボリビアの境界地域に暮らすアヨレオ族。彼らは椅子ではなく、布地でつくった「座るための道具」を使って座る姿勢を保っています。

Cl3_kawa101027.jpg

Cl4_kawa101027.jpgチェアレス発表と同時にヴィトラが紹介していた使用例から。Photo: © Vitra (http://www.vitra.com) チェアレスは¥2,940。収益の一部はパラグアイの先住民地域のための非営利団体へ寄付されるしくみです。こうした活動も家具の世界での新たな試み。

それらアヨレオ族の道具の研究もふまえるなど文化人類学的な視点も含むプロジェクトとなったわけですが、家具メーカーが「チェアレス」(椅子いらず)とは何と大胆な......! 春の発表時に多くの人が驚いたメッセージ性の強い品でしたが、日本でもこの秋ついに発売スタート。それを機にhhstyle.comが募っているチェアレス写真の展覧会を、hhstyle.com青山本店にて目にできます。

屋外のイベント、コンサート会場にはまさにぴったり。ピクニックや公園での読書にも最適だし、山歩きの休憩時、大自然のもとで思索にふける際にも必需品。あぐらをかけなくたって大丈夫......思い思いにこの品を使っている姿は興味深い。実は私も写真を送ろうと考えているところです(私の手元にあるのはグリーンのベルト&赤いゴムのチェアレス)。

Cl5_kawa101027.jpg

Cl6_kawa101027.jpgチェアレス写真展は10月29日〜11月3日。その前にhhstyle.comプレスの石野田輝旭さん撮影の写真をお借りしました。Photos: Teruaki Ishinoda, hhstyel.com

Cl7_kawa101027.jpg石野田さんも愛用中。チェアレスでは大地が椅子の座面代わり。まさに発想の転換、大きな視野で座る行為をとらえる道具。私たちが忘れていた感覚を思い出させてもくれます。また、手で両足を抱える姿と違って両手を自由に使え、長くこの姿勢を保てます。

コンパクトにまとめられ、軽く、あちこちに持ち運んで使えるまさにモバイルなプロダクト。同時に、私たちの身体や生活の歴史と「座る」行為を改めて考えるきっかけを含んだ品でもあるわけです。チェアレスのデザイン背景をさらに考えてみたい読者は、「ポスト・フォッシル」展の際に書いたこちらのコラムもどうぞ......。

ところで、hhstle.comでは今週、他にも新製品の紹介も始まります。そのひとつが、今後が期待されるドイツ人デザイナー、Stefan Diez(ステファン・ディーツ)のデザイン。ドイツに本社のある家具メーカー「e15」から製造されているスツールやチェア類が揃います。ディーツのデザインに触れ、座ることができる待望の機会。


Cl8_kawa101027.jpgステファン・ディーツによるバースツール。「ST10 JEAN」¥77,700〜、e15。シート表面や曲線の造形には立ちあがりやすい配慮が。高さは2種類。

Cl9_kawa101027.jpg家具職人を経てデザイナーとしての活動を始めたステファン。1971年生まれ。冒頭で紹介したチリのアレハンドロといい、デザイナー本人の雰囲気がそのままプロダクトデザインに表われているような......? Photo: Robert Fischer

独自の円形シートを持つバースツールや、ペーパークラフトさながらに薄い造形と柔らかな曲線が心地よいオーク・プライウッドのサイドチェアやアームチェア。体をやさしく包む曲線と、なめらかな質感が特色のコンテンポラリーな木製家具。職人の技と最先端のプライウッド加工技術の双方があってこそ生まれた家具です。

何に座る? どう座る? これらディーツの椅子にも座りながら、日々の時間と家具との関係について、さらには「座る」ことそのものについて、あれこれ考えを巡らせてみるのはどうでしょう。今週・来週は都内のデザインショップで新作家具の発表が多数。それらの家具との出会いを楽しみながら、どうぞすてきな一週間を。

Cl10_kawa101027.jpg「CH04 HOUDINI」オークプライッド。サイドチェア ¥77,700〜、e15。

Cl11_kawa101027.jpg「CH04 HOUDINI」オークプライッド。アームチェア ¥93,450〜、e15。


hhstyle.com青山本店
http://www.hhstyle.com
上記URLからチェアレスの写真投稿ができます。

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

シティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
編集部員のWish List!
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories