国連「フィン・ユール・ホール」、
名作復刻と家具デザインコンペ
デザイン・ジャーナル 2011.08.30
1912年生まれ、1989年に他界。来年2012年にはフィン・ユール生誕100年を迎えるのですが、記念すべき100周年を機に、とても興味深いプロジェクトが進んでいます。
ニューヨークの国際連合本部ビルにある信託統治理事会会議場(Trusteeship Council Chamber)に関する内容ですが、まずはこの会議場のご紹介から......。
国連、信託統治理事会会議場。デンマークのデザイン変革期に重要な役割を果たしたフィン・ユールは、この会議場を手がけたことで、アメリカはもちろん、国際的な名声を得ます。Photo: UN Photo/YN. Courtesy of Royal Danish Embassy in Japan
1945年に活動を開始した国際連合信託統治理事会は1994年に本来の業務をほぼ終了。その後は国連の会議場として毎年400件ほどの会議に使用されています。Photos: Andreas Vingaard. Courtesy of Royal Danish Embassy in Japan
空間の至るところに宿るフィン・ユールの美意識が。Photos: Andreas Vingaard. Courtesy of Royal Danish Embassy in Japan
そのなかで進んでいるプロジェクトが、2つ。ひとつは会議場の完成当時に使われていたフィン・ユールの椅子、モデル「FJ51」を復刻し、会議場で用いるというもの。
「FJ51」の貴重なオリジナルスケッチ。Courtesy of Royal Danish Embassy in Japan
製作が進む「FJ51」。そのプロトタイプの写真をいち早く送ってもらいました。フィン・ユールらしい優雅な曲線。Photos: Courtesy of Royal Danish Embassy in Japan
もうひとつは、デンマーク政府による家具デザインコンペ。
「デンマークの現代デザインも、このホールにとりこもう!」と、招待デザイナー5名の案から机と椅子のデザインを選出、製作する計画です。
「会議場の空間に調和し、あるいは、それを高めること」
「現代のデンマーク家具デザインを代表する作品となること」
こうした歴史的なデザインコンペの結果が、この夏、デンマーク・アート・ファウンデーションより発表されたところ。
見ごと優勝に輝いたのは、Kasper Salto(キャスパー・サルト)。Thomas Sigsgaard(トマス・シグスゴー)との共同参加でした。
今回のコンペに優勝したキャスパー・サルト&トマス・シグスゴーの提案。Design by Salto and Sigsgaard, Photos: Courtesy of Royal Danish Embassy in Japan
かつてフィン・ユールがそうだったように、今回の快挙によってさらに注目を集めるにちがいありません。
ちなみにコンペ参加の他4名は、Christian Flindt(クリスチャン・フリント)、Mia Gammelgaard(ミア・ガメルゴー)、Hans Sandgren Jakobsen(ハンス・サンドグレン・ヤコブセン)、Søren Ulrik Peterson(ソーレン・ウルリック・ピーターセン)。
「FJ51」にあわせ、サルト&シグスゴーが提案する家具の試作も始まったところだと、先日、聞きました。2年後の完成を目標に進む会議場リノベーションの経緯については、ひき続き、このコラムでとりあげたいと思います。
キャスパー・サルト
http://www.kaspersalto.com/

Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami