酒井俊彦さん「sample」スタート。
デザイナー12組の「少しいいこと」

プロダクトデザイナーの酒井俊彦さんから、「自主企画プロジェクトの、プロダクト販売を始めます」との連絡がありました。オフィシャルサイトやさまざまな店頭での販売に先がけた、お披露目展。

プロジェクト名は「sample(サンプル)」。「少しいいこと + プロダクト」とも添えられています。

s1 kawakami0930.JPGRaum1F(表参道)での展示風景。「sample」にも参加しているデザイナー、尾原史和さんが運営するギャラリーです。Photo: Noriko Kawakami

「変わってほしい状況のために、風穴をあけていきたいと感じることのために」、少し手間をかけたものづくり。

「信頼できる工場に無理のない適正価格で製作を発注し、プロジェクトごとに複数のデザイナーと一緒に製品をつくりたいと考えました」。主宰するサカイデザインアソシエイツのプロジェクトとして始動したのは、今年春のことだったそう。

第一弾となる今回のアイテムは、iPhoneとiPadまわりの品々。酒井さんの他、11組のデザイナー、建築家、アーティストが参加しています。

s2 kawakami0930.JPG酒井俊彦さん。手にしているのは自身のデザイン。その細部は次の写真をご覧ください。Photo: Noriko Kawakami

今回のプロジェクトのきっかけとなったのは、酒井さんがあるプロジェクトで高知県を訪ね、四万十ヒノキの除伐(じょばつ)材を目にしたことでした。それらの除伐材が、プロジェクト第一弾となる今回の品々に活かされています。

森林では樹木の健全な成長のために立木をまびく間伐(かんばつ)がなされます。除伐材とは、それら一般的な間伐材よりも育った木のこと。sampleに関わる工場によると、「かたちが悪いことを理由に伐採された木、根もと近くの曲がった部分が、除伐材」。

柱などの建築資材に用いられることがなく、低価格で取り引されている除伐材。森から運搬する費用の方が高くなるという理由で、切り倒された状態で森に放置されていたりもします。放置された樹木はCO2を増やす要因に。大雨が降れば土石流の原因にも......。

s3 kawakami0930.jpgデザイン:酒井俊彦。「under_bar」¥3,950、イヤホンの収納場所がつくられ、イヤホンが小動物の目のような、耳のような......。どことなく愛らしいiPhoneスタンド。Photos: Masayuki Hayashi(製品写真全て)

s4 kawakami0930.jpg デザイン:五十嵐久枝。「bocchiri」iPadスタンド¥3,400。iPhoneスタンド¥4,200。写真はiPhone用。五十嵐さんのデザインらしく、空間にとけ込む自然な姿で。

s5 kawakami0930.jpgデザイン:トラフ建築設計事務所。「木のポケット」iPhoneスタンド¥4,400。箱のなかにiPhoneを。鍵などの小物も一緒に収納可能。身近なもののための四角い家。 「除伐材を一般的な落札価格より高く購入できる工場で製品をつくり、販売する。そのことで、森に放置されている木が少しでも減り、林業に関わる人々にこれまでより少し多くの利益をもたらすことができればと考えました」

無垢のヒノキ材を使ったiPhone、iPad周辺プロダクトは、やはり新鮮。素材が醸し出す温かな雰囲気も気になります。iPhoneのための「空間」(箱)だったり、椅子のようなスタンドだったり、関わったデザイナーや建築家の個性も伝わってくる。

s6 kawakami0930.jpg

s7 kawakami0930.jpgデザイン:トネリコ。「Calm trees L / Calm trees S」 iPadスタンド Lタイプ¥3,600、Sタイプ¥3,400。SタイプはiPhoneにも使用可能。iPhone、iPad用のタッチペンも(写真下)¥1,260。こちらは岡山産ヒノキ。

s8 kawakami0930.jpg デザイン:桐本隆士。「キノダイ」¥39,900。本体下に配線周りを収納できます。

s9 kawakami0930.jpgデザイン:南雲勝志。「i・isu」¥3,780。iPhoneが「きちんと座ったり、寝転がったり」なるほど「iPhoneの椅子」なのですね!

s10 kawakami0930.jpgデザイン:藤森泰司。「Ripple」¥3,150。iPhoneに居場所を。波紋(リップル)をイメージしたという美しい弧を描くスリット。充電ケーブルがさしこめます。

sample、今回のもうひとつの素材は、クルマのシートレザー(牛皮革)。

研究が重ねられたシートレザーは一般的な皮革素材に比べてキズがつきにくく、他の物への色移りもしません。優れた素材であるにもかかわらず、クルマのデザイン変更などで使われなくなってしまうと、ただ保管されていたり、破棄されていたりします。

そうした素材を使って、「少しいいこと」を考えた、今回のプロジェクト。

s11 kawakami0930.jpgデザイン:ひびのこづえ。パンチングの皮革を使用。iPadケース「クマ」¥8,700、iPhoneケース「ネズミ」¥2,800。

s12 kawakami0930.jpgデザイン:seto(セト)。setoは瀬戸けいた、なおよ夫妻のデザインレーベル。「Umiushi(ウミウシ)」。iPhoneケース¥3,200。余白部分を切りとってフリンジにしたり......。

s13 kawakami0930.jpgデザイン:黒河内真衣子(mame)。「embroidery iPad case」¥29,000。ケース背面(写真)にトライバル柄の立体刺繍。ケースに入れたままUSBケーブル接続も可能。

酒井さんが語ってくれました。

「今回のように廃棄されてしまう素材を使ってみることや、伝統的なものづくりの現場が今後安定して仕事ができるためのプロダクトを考えてみることなど、ものづくりの現場で起こっているさまざまなことがらを、今後も対象としていきます」

s14 kawakami0930.jpgデザイン:501 DESIGN STUDIO (竹中壮一+五十嵐広威)。「stitch」iPadケース¥9,200、iPhoneケース¥4,700。ステッチが施されることでクッション機能が生まれます。

s15 kawakami0930.jpgデザイン:尾原史和(SOUP DESIGN)。「Leather and Felt」iPadケース¥12,000、iPhoneケース¥3,900。iPadケース(左)表面はグレー。皮革とフェルト、紐でぐるぐる巻いて。

「素材だったり、手法だったり、このプロジェクトで用いたものを活かして、
"けっこういいこと"もしていくつもりです」。酒井さんの瞳、輝いていました。

ひとりのデザイナーが、「このままではいけない!」と奮起し、始めたプロジェクトと、結集したつくり手たち。それぞれに素材を活かしたデザイン......。sampleプロジェクトの今後が楽しみです。応援しています。


http://www.sakaidesign.com/sample
オフィシャルサイトでの販売は10月20日より


Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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