モリス壁紙に込めた内田繁さんのメッセージ。
THE GATE HOTEL 雷門のデザイン
デザイン・ジャーナル 2012.08.29
「THE GATE HOTEL 雷門 by HULIC」が今月オープンしました。日比野克彦さんがその場で描かれていた絵も完成。7月の記事ではご紹介できなかったゲストルームのデザインとあわせて、改めてご紹介します。
にぎわう雷門の前を過ぎるとすぐ、ホテルがあります。エレベーターで13階へ。東京スカイツリーが目の前に楽しめるロケーションであることは前回のコラムでも触れた通り。きょうは、ロビーのインテリアからご紹介しましょう。ホテルのデザインも多数手がけるデザイン界の重鎮、内田 繁さんによるものです。
「ロビー空間のデザインで大切だったことは、レストラン、バー、テラス、小ホールが連続されていることです。透明のガラスで仕切ることによって、すべての空間が連続し、一体化した空間になるようにしています」
「また全体に言えることですが、外の風景をとり入れることも大切にしています。そのために大きなガラス空間で構成し、室内と風景が一体となることを考えています」
ロビーに置かれたソファ、記憶に残る名前のソファなんです。このデザインも内田さんです。
「このソファは自由なかたちをしています。『SO IN LOVE(ソー・イン・ラブ)』の変形パターンで、今回のためにデザインしたものです。風景を見るための場と、数人が向かい合うための場を用意しました」
気になっていたウィリアム・モリスの壁紙のスイートが、上の写真のものです。景色を楽しめるビューバスも設けられた「THE GATE」。置かれていたひとり掛けの椅子は、デンマークの建築家、デザイナー、アルネ・ヤコブセンの「エッグチェア」でした。
この部屋には内田さんの大切なメッセージが込められていました。デザインの歴史も含む興味深いお話、デザインに関心のある読者も多いと思うので、ぜひお伝えしましょう。
「最近、私は、現代における装飾性について考えています。近代デザインにおいて『装飾は罪悪である』と、建築家のアドロフ・ロースもル・コルビジェやミース・ファン・デル・ローエも述べています。近代デザインは装飾を嫌い、白い空間が多く見られるようになりました」
「ですが、はたして装飾は無用なのかを、私はつねに考えていました。その手はじめにウィリアム・モリスの壁紙を採用し、『はたして装飾は、今日、必要ないだろうか......』を問いかけてみたのです」
19世紀、イギリスでアーツ・アンド・クラフツ運動を率いたモリス(1834年〜1896年)。生活と芸術とを一体になったものにしようと、家具や壁紙の製作で才能を発揮していきます。
内田さんが満を持して行なった、「装飾」についての問いかけ。
それぞれのゲストルームには、マリメッコのテキスタイルデザインも手がける鈴木マサルさんのデザインで、鈴木さんのブランド「OTTAIPNU」のファブリックシリーズを用いたパネルもありました。
内田 繁さんとスタッフが部屋ごとにイメージのあう生地を選び、パネルの形にあわせて巾105cm生地のレイアウトを決めていったそう。赤い横縞の生地「chiheisen」と青とグレーの生地「mizudori」からそれぞれつくられたパネルです。
THE GATE HOTEL 雷門 by HULIC
http://www.gate-hotel.jp/
内田デザイン研究所
http://www.uchida-design.jp/
OTTAPNU
http://ottaipnu.com/
にぎわう雷門の前を過ぎるとすぐ、ホテルがあります。エレベーターで13階へ。東京スカイツリーが目の前に楽しめるロケーションであることは前回のコラムでも触れた通り。きょうは、ロビーのインテリアからご紹介しましょう。ホテルのデザインも多数手がけるデザイン界の重鎮、内田 繁さんによるものです。
Photo courtesy of The Gate Hotel Kaminarimon by Hulic.
Photo © 淺川 敏/Satoshi Asakawa
「ロビー空間のデザインで大切だったことは、レストラン、バー、テラス、小ホールが連続されていることです。透明のガラスで仕切ることによって、すべての空間が連続し、一体化した空間になるようにしています」
「また全体に言えることですが、外の風景をとり入れることも大切にしています。そのために大きなガラス空間で構成し、室内と風景が一体となることを考えています」
ロビーに置かれたソファ、記憶に残る名前のソファなんです。このデザインも内田さんです。
「このソファは自由なかたちをしています。『SO IN LOVE(ソー・イン・ラブ)』の変形パターンで、今回のためにデザインしたものです。風景を見るための場と、数人が向かい合うための場を用意しました」
Photo © 淺川 敏/Satoshi Asakawa
気になっていたウィリアム・モリスの壁紙のスイートが、上の写真のものです。景色を楽しめるビューバスも設けられた「THE GATE」。置かれていたひとり掛けの椅子は、デンマークの建築家、デザイナー、アルネ・ヤコブセンの「エッグチェア」でした。
この部屋には内田さんの大切なメッセージが込められていました。デザインの歴史も含む興味深いお話、デザインに関心のある読者も多いと思うので、ぜひお伝えしましょう。
「最近、私は、現代における装飾性について考えています。近代デザインにおいて『装飾は罪悪である』と、建築家のアドロフ・ロースもル・コルビジェやミース・ファン・デル・ローエも述べています。近代デザインは装飾を嫌い、白い空間が多く見られるようになりました」
「ですが、はたして装飾は無用なのかを、私はつねに考えていました。その手はじめにウィリアム・モリスの壁紙を採用し、『はたして装飾は、今日、必要ないだろうか......』を問いかけてみたのです」
19世紀、イギリスでアーツ・アンド・クラフツ運動を率いたモリス(1834年〜1896年)。生活と芸術とを一体になったものにしようと、家具や壁紙の製作で才能を発揮していきます。
この部屋では、続くベッドルームにモリスの異なる柄が選ばれていました。あわせられたパネルはテキスタイルデザイナー、鈴木マサルさんのデザイン。Photo: Noriko Kawakami
内田さんが満を持して行なった、「装飾」についての問いかけ。
それぞれのゲストルームには、マリメッコのテキスタイルデザインも手がける鈴木マサルさんのデザインで、鈴木さんのブランド「OTTAIPNU」のファブリックシリーズを用いたパネルもありました。
内田 繁さんとスタッフが部屋ごとにイメージのあう生地を選び、パネルの形にあわせて巾105cm生地のレイアウトを決めていったそう。赤い横縞の生地「chiheisen」と青とグレーの生地「mizudori」からそれぞれつくられたパネルです。
「mizudori」を用いたパネル。「テキスタイルがそれぞれの客室に見ごとに調和していたことに、自分でも驚きました。内田さん、内田デザイン研究所の方のコーディネートの賜物だと思います」と鈴木マサルさん。Photo: Noriko Kawakami
Photo © 淺川 敏/Satoshi Asakawa
THE GATE HOTEL 雷門 by HULIC
http://www.gate-hotel.jp/
内田デザイン研究所
http://www.uchida-design.jp/
OTTAPNU
http://ottaipnu.com/

Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami
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