北国のおせち 2015
おうちでパリの味 2015.01.13
遅ればせながら、皆さまに新年のご挨拶をさせていただきます。いつも、このコラムを見てくださって、本当にありがとうございます。どうぞ、本年もよろしくお願いいたします。
日本でお正月を過ごしてパリへ戻ると一転、おめでたい気持ちも吹き飛ぶような不穏な空気の漂う日々でしたが、街は落ち着きを取り戻しつつあります。普段、当たり前のように買い物をしたり食事をしてきたことを、いまとってもありがたく感じています。人は、いつなんどき......と思うと、日々の生活を大切に丁寧にしなければいけませんね。
さて、今年もまた北海道で、母と一緒におせち作りをしました。
いろいろ取り混ぜて、22品ほど。今年は彩りに、三浦の安田養鶏場から送ってもらった根菜を添えてみました。クラシックなものも作りながら、やっぱり少しずつ目新しいもの、ちょっとした驚きが欲しいと思う。
実は、作ったものが箱の中に、ぎゅーぎゅーと詰められたおせちは、窮屈そうで嫌い。お膳の枠も自由がない感じがして、嫌。みんなを居心地よく並べたい。最近作るおせちは、"好きなものを好きなだけ取り分けて頂くスタイル"です。
いつもの松風を、今年はカニと枝豆、地元の農家で作っているゆり根を入れて、テリーヌ風にしてみました。味付けは白味噌、上に添えたのは青大根とゆずです。
紅芯大根と塩茹でしたゆり根。
(左)小樽の紅白かまぼこ、紅白のうずらは、梅酢で染めて。(中)花れんこんを入れると、やっぱり華やぎますね。花びらに切ってから甘酢で染めたゆり根を飾りました。(右)なますにいくら、レディサラダという紅大根を敷いて。
(左)数の子と青大根、(中)母作の豆腐の伊達巻、あっさりと軽くておいしい。(右)これは、父作の黒豆を母が煮たもの。何十年も作っている熟練の味です。コントラストが面白い黒大根を置いてみました。
"海の幸"(左から)ホタテの燻製とアワビの酒蒸し、ホタテにウニと卵黄を塗って炙ったもの、バイ貝を煮たもの、北海縞海老。
"山の幸"(左から)にんじんとヤーコンの八幡巻、クマ笹茸入りの旨煮、去年の料理教室でも作った鶏のファルシー。今年はごぼうを巻いて、旨味の凝縮した煮こごりをかけました。にんじん、ごぼうとヤーコンのきんぴら。
デザート3人娘は......(左)今年は大成功! 祖母秘伝の牛乳羊羹。(中)紫いもで作った栗きんとん。(右)金柑の煮汁に、寒天を少しだけ入れてトロリとさせたジュレを注いで、金箔をあしらいました。
1年に1度、こうして健康で、家族とともにおせちを頂けるというのは、本当に幸せなことです。
今年、フランスで初めて作者として料理の本を出版できることになりました。
毎日、レシピ作りをしているところなのですが、日本に帰ってから精進料理について調べてみて、さまざまな知恵や教えを授けてもらいました。
なるほど、精進料理とは"自ら精進(修行)する料理"でもあるのだと。
最近のマイブームは、"再びスーザン・ボイル"! グラスゴーのオーディションを観ていると、涙と勇気が湧いてくる。「遅咲きでも、がんばれる!」。もうすぐ50歳にして、フランスの本の世界では、やっと1年生。
この1年、精一杯の"精進"をするつもりです。

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo